著者はこれまで約8年間にわたり放課後等デイサービスで療育をしてきています。
療育対象は、小学生を中心に、発達障害(ASD,ADHD,IDなど)など発達に躓きのある子どもたちと関わってきています。
毎年、子どもたちは様々な成長・発達する姿を見せてくれるため、支援者としての著者も、年々、療育に対する学びが深まっていると感じています。
そして、療育経験を積み重ねていく中で、支援の質の向上に必要な要素が、少しずつではありますが、肌感覚と知識を含めてわかるようになってきているといった実感があります。
それでは、放課後等デイサービスにおける支援の質の向上に繋がる要素にはどのようなものがあるのでしょうか?
そこで、今回は、放課後等デイサービスにおける支援の質の向上に必要な6つの要素について、臨床発達心理士である著者の経験談を踏まえて理解を深めていきたいと思います。
放課後等デイサービスの支援の質向上に必要な6つの要素とは
以下、著者が考える6つの要素を紹介しています。
1.安心して過ごせる環境調整
2.意欲を引き出す関わり方
3.個別の理解・支援の視点
4.保護者支援
5.チーム支援
6.学び続ける姿勢
以上が、6つの要素になります。
6つの要素は互いに関連付きながら子どもの育ちに影響していくと思います。
そのため、どれか一つでも欠けてしまうと、支援の質の低下に繋がると言えます。
それでは、次に、それぞれ具体的に見ていきます。
1.安心して過ごせる環境調整
まずは、子どもたちが安心して過ごせる〝環境調整″が必須だと言えます。
〝環境調整″には、〝物的環境″と〝人的環境″があります。
発達障害児には感覚の問題が多く見られるため、例えば、刺激量を調整する工夫(聴覚過敏に配慮した環境調整)、視覚支援(ホワイトボードにスケジュールを書く、表示にイラストや写真を活用するなど)の活用等が有効です。
こうした〝物的環境″の調整以外にも、〝人的環境″もまたとても重要です。
子どもたちは関わる大人(支援者)の関わり方に安心感を持つことで、放課後等デイサービスといった環境に安心感を持てるようになります。
〝安心感″とは、〝愛情のエネルギー″の充足にも繋がっていきます。
〝物的環境″と〝人的環境″が整うことで、子どもたちの〝安心感″は高まり、次に見る〝意欲を引き出す関わり方″に繋げていくことができます。
2.意欲を引き出す関わり方
子どもたちが放課後等デイサービスに何を求めてきているのかを見つけること・引き出すことが大切です。
そのためにも、子どもたちの〝興味関心″を把握していく視点が必要です。
そして、〝興味関心″を引き出すためにも、支援者からの働きかけもまた重要になっています。
特に、発達障害児は、興味関心が狭いことが特徴としてあるため、特定の興味関心にチャンネルを合わせて広げていくことが必要です。
興味関心が特定の大人(あるいは子ども)と深まっていくことで、様々なイメージを他者と共有・共感する楽しさ・喜びが出てきます。
それが、社会性の育ちに寄与し、他者と社会の中で生きていこうとする動機に繋がっていくように思います。
先に見た、〝安心して過ごせる環境調整″により、〝愛情のエネルギー″が充足されることで、〝意欲のエネルギー″もまた高まり、〝意欲を引き出す関わり方″がより効果が発揮されていくのだと思います。
3.個別の理解・支援の視点
発達障害児といっても、成長・発達する姿は非常に多様です。
そのため、個別の理解・支援の視点(〝オーダーメイドの支援″の視点)がとても大切です。
例えば、一般的な発達に関する知識、発達特性による理解と配慮に関する知識、二次障害に関する知識などはとても必要だと言えます。
大切なことは、個別性・違いを理解していく視点を少しずつ見つけ・深めていく学びを継続していけるかだと思います。
2024年度から、個別支援計画では5領域を踏まえた支援が義務付けられるようになりました。
そのため、今後ますます、それぞれの放課後等デイサービスが何を大切に、何に重きをおいて支援をしているのかが問われるようになってくると言えます。
〝個別の理解・支援の視点″を深めていくことは、簡単ではありませんが、日々の実践と知識の収集を織り交ぜながらアップデートを繰り返すことが大切です。
4.保護者支援
保護者と子どもの関係は、車の両輪のように互いに強く関連付いています。
そのため、子どもへの直接支援だけではなく、保護者への支援もまたとても重要だと言えます。
著者の実感としては、保護者の方と、子どもの困り感や子どもの良さ・頑張りなどの共有が深まり、次に何を目指していけばいいかなど目標が共有できたときなどが、支援がうまく進んでいくといった印象があります。
そのためにも、保護者の声にしっかりと耳を傾け、日々の子どもとの関わりをしっかりと共有していく継続性が大切だと感じています。
5.チーム支援
放課後等デイサービスは、様々な支援者間による連携、他機関(学校など)との連携が必要になってきます。
この際に、一人の支援者が独断で支援を進めていかないように、しっかりと他の支援者や他機関と連携をはかりながら(協議・コミュニケーションをとりながら)支援にあたっていくこと、つまり、〝チーム支援″がとても重要です。
また、特定の支援者に支援の負荷が偏り過ぎないこともまたとても大切です。
感情労働の面が多大にある療育現場において、支援者の業務負担は目にはなかなか見えにくいところがあります。
そのため、支援者同士がお互いを労う姿勢もまた良きチームを形成する上で大切だと思います。
6.学び続ける姿勢
子どもたちが成長・発達するのと同時に、関わる大人たちもまた変化し続けることが大切です。
そのためにも、〝学び続ける姿勢″が重要です。
例えば、支援内容を工夫して実践してみる、研修会などに参加する、書籍から新しい知識を獲得するなど学びの方法は様々あると思います。
発達障害に関する領域はここ10数年で格段に進歩しています。
それだけ、社会に認知されるようになってきており、支援に対するニーズも増してきているのだと言えます。
そのため、発達障害児に関わる人たちは、様々な知識を学びながら、常に、自分の支援内容を見直し、改良していく姿勢が大切だと言えます。
以上、放課後等デイサービスにおける支援の質の向上に必要な6要素について見てきました。
最後に補足しておきたい点があるとすれば、それは〝楽しんで支援を行う″ことだと思います。
支援者自身が楽しんで子どもたちと関わる姿は、子どもたちにも良い影響を与えるのだと思います。
そのためにも、日々、月々、少しでも自分が成長していると実感できることが大切です。
今回見てきた6つの要素を、日々、継続し続けることで、成長の実感を得ることができると思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も放課後等デイサービスの支援の質向上に繋げていけるように、著者自身も学び続け・変化し続けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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