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協調運動 成人期

成人期の協調運動の問題について

投稿日:2022年11月6日 更新日:

人間が運動するには様々な身体部位や筋肉を連動・協応させる必要があります。

こうした連動・協応した動作は「協調運動」とも言われています。

そして、協調運動における障害を「発達性協調運動障害(DCD)」と言い、最近では、自閉症やADHD、そして学習障害に次いで注目を集めるようになってきています。

また、協調運動の問題も発達段階に応じて異なる特徴が見られます。

 

それでは、成人期といった大人には、どのような協調運動の問題が見られるのでしょうか?

 

そこで、今回は、成人期の協調運動の問題について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながらお伝えしていきます。

 

 

今回参照する資料は「中井昭夫(編著)若林秀昭・春田大志(著)(2022)イラストでわかる DCD(発達性協調運動障害)の子どものサポートガイド 不器用さのある子の「できた!」が増える134のヒントと45の知識.合同出版.」です。

 

 

成人期の協調運動の問題について

発達性協調運動障害(DCD)は、青年期・成人期以降にも高い割合(5~7割)で残存すると言われています。

つまり、大人になっても協調運動の問題は持続する傾向が高いとされています。

 

それでは、成人期にはどのような協調運動の問題があるのかを以下、著書を引用しながら見ていきます。

成人期のDCDによる困難さとしては、ひげ剃りや化粧などの整容(身だしなみ)、料理や自動車運転、タイピングや細かい作業などそのライフステージ特有の協調の課題が存在します。これらが困難な状況が続くと、社会参加、職業選択、自尊感情の低下などにも影響します。

 

著書の内容から、成人期といった大人においても、ライフステージ特有の協調運動の問題が様々な場面において見られるとの記載があります。

また、協調運動の問題は、社会参加や職業選択にも影響し、社会の中での困難さが続くと自尊感情の低下など二次障害へと繋がるリスクも高まります。

中でも作業系の職業においては、手先の運動が非常に求められたり、肉体労働など体を使う職業では、全身運動の協調が必要になります。

このように、手先の運動や全身運動などに特化した職業でなくても、様々な場面において協調運動は必要になります。

こうした職業以外でも、例えば、全身運動に苦手さがあるとスポーツなど余暇活動や健康などにもマイナスな影響を及ぼすことがあります。

つまり、体を使う活動への意欲の低下や自信の無さなどから、社会参加が困難になったり、体を使う活動の楽しさや充実感などを感じられないことから、健康にマイナスな影響がでることが考えられます。

 

 


それでは、次に著者の経験談から成人期の協調運動の問題について見ていきます。

 

 

著者の経験談

著者はこれまで、運動に困難さのある発達障害(ASDやADHDなど)の人たちと多く関わってきました。

その中でよく聞くものは、大人になっても仕事や生活において運動の困難さがあるということです。

その内容も人それぞれですが、中でも多いと感じるのが、仕事のパフォーマンスが協調運動の問題があることでなかなか向上しないというものです。

仕事は、生活や余暇と比べて、限られた時間内で決まった業務をこなすことが求められます。

そのため、自分のペースでできないことが多くあります。

中には、作業の速さを必要とされる業務においては、不器用さといった協調運動に問題があるとどうしても周囲から遅れをとったり、周囲の期待に応えることが難しくなります。

 

仕事以外でも、例えば、やりたいスポーツはある、体を使って他の人と関わりたいなどの希望を持っている人の中には、これまでの運動での失敗経験が足かせになって、スポーツなどに挑戦できない人もいます。

こうした人たちの中には、本来なら体を動かして他の人と一緒に活動してみたいと思っている人が意外にも多いといった印象があります。

 

こうした成人期の協調運動の問題について大切な対応は周囲の配慮だと感じます。

もちろん、仕事では配慮に限界もあるかもしれませんが、できるだけ協調運動を必要としない業務に割り当てる、業務に必要な仕事の時間を多く確保するなどの対応がどうしても必要になるのだと思います。

著者の周囲でも、こうした協調運動の問題の理解を周りから受けている人たちは、安心して日々を楽しく活動している印象があります。

 

 


以上、成人期の協調運動の問題について見てきました。

不器用さなどの協調運動の問題は、大人になっても持続すると言われています。

そのため、二次障害に繋がらないための予防的な対応がとても大切になります。

また、個人が好きなことがあれば、スポーツや楽器演奏などに挑戦されてみるものいいかと思います。

著者の身近にも、こうした挑戦を通して、生きがいを見つけたり、運動機能を高めた人たちもおります。

私自身、これからも協調運動への理解を深めていきながら、現在の療育現場において、成人期を見据えた関わりができように日々の実践を大切にしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「運動の困難さはなくなるのか【発達性協調運動障害を例に考える】

関連記事:「学童期の協調運動の問題について【療育経験を通して考える】

 

中井昭夫(編著)若林秀昭・春田大志(著)(2022)イラストでわかる DCD(発達性協調運動障害)の子どものサポートガイド 不器用さのある子の「できた!」が増える134のヒントと45の知識.合同出版.

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