身体の運動を企画することを「運動企画」と言います。
人は体を動かす際に、目的に応じて計画を立てて動作を実行します。
例えば、床に転がっているボールを拾って目標となる相手まで投げる際に、運動を企画します。
「運動企画」と関連が深いものに「ボディイメージ」があります。
感覚統合の世界では、運動企画のベースにボディイメージがあると考えられているほど、両者を合わせて理解していくことが大切だとされています。
関連記事:「感覚統合で大切なボディイメージについて【療育経験を通して考える】」
それでは、そもそも運動企画にはどのような役割があるのでしょうか?
そして、ボディイメージとどのような関連があるのでしょうか?
そこで、今回は、感覚統合で大切な運動企画について説明していきながら、ボディイメージとの関連について考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「木村順(2006)子育てと健康シリーズ㉕:育てにくい子にはわけがある:感覚統合が教えてくれたもの.大月書店.」です。
感覚統合で大切な運動企画について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
「運動企画」という用語があります。これは、運動や動作を行っていくときに、
(1)その動きの「範囲」を調節し
(2)その動きの「力加減」を調節し
(3)その動きの「スピード」を調節し
(4)その動きの「タイミング」を調節し
(5)それらの動きの「手順」を組み立てる
といった能力のことをいいます。
「運動企画」は「ボディイメージ」を手がかりに発達させていく能力なのです。
例を上げて「運動企画」について考えてみたいと思います。
例えば、ある人が相手に向けてボールを投げようとしています。
ボールを投げ慣れた人にとってはあれこれ考えずに投げるという運動になります。
一方で、ボールを投げる動作が苦手な人、改善したい人などは、細かな動作に分けて考える必要があります。
それは、腕の動かし方であったり、ボールを投げるタイミングであったり、力加減であったり、スピードのコントロールであったり、相手との距離であったり、様々な要素に改善点を見出す必要があります。
こうした一連の動きを計画立てて実行することを「運動企画」と言います。
それでは、「運動企画」と「ボディイメージ」にはどのような関係があるのでしょうか?
運動企画とボディイメージとの関連について
著書にもあるように、「運動企画」は「ボディイメージ」を基盤として成長・発達していくものであるため、両者には密接な関連があります。
例を取って両者の関係を見ていきたいと思います。
著書の中には、車の運転を例に取っています。
「ボディイメージ」を車体感覚に例えると、「運動企画」は車を目的地まで運転すること(運転技術を含め)になります。
この際に、車体感覚がある程度つかめていると、細かな道でも車をぶつけずに運転することができます。
しかし、車体感覚が未熟であると、運転中に様々な場所にぶつけたり、ぶつけそうになることが多くなります。
また、車体感覚が未熟であると、慣れた道や慣れた駐車場以外の運転が難しくなります。
このような決まった道(駐車場)のみ走る(停める)ことを「パターン化」とも言います。
車体感覚が未熟であり、かつ、車体感覚を発達させる取り組みをせずにいると、「パターン化」が進み、運動企画にも影響が出てくるということになります。
こうした「パターン化」を修正しようと、無理に同じ動作を反復練習しても効果は薄いとされています。むしろ、より一層、「パターン化」が進む可能性もあります。
また、このような状態は、動作のぎこちなさや不器用さにも繋がっていきます。
つまり、様々な場所を安全に運転できるためには、車体感覚を発達させることが必要です。
このように、運転を例に取ると両者の関係がより一層関連づいて理解できるかと思います。
まとめると、「ボディイメージ」が発達することで「運動企画(目標に応じて運動を実行すること)」にも様々なプラスの影響がでるということになります。
それだけ、「運動企画」をよりスムーズに行うためには、「ボディイメージ」の発達が大切だということです。
以上、感覚統合で大切な運動企画について【ボディイメージとの関連から考える】について見てきました。
私たちの身体は、思いの他、様々な要素が関連し合っており、複雑だということが理解できます。
そのため、意識に上らない点(感覚)を深く理解していくためには、感覚統合理論などの知識を取り入れていくことがとても大切なのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場に感覚統合の視点を取り入れていけるように、知識への理解も進めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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木村順(2006)子育てと健康シリーズ㉕:育てにくい子にはわけがある:感覚統合が教えてくれたもの.大月書店.