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愛着(アタッチメント)の経験が与える4つの心理学的特質の発達について

投稿日:2024年10月28日 更新日:

愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。

子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。

そして、どのような愛着経験を積み重ねてきたかによって、愛着パターンや愛着スタイルに違いが生じると考えられています。

 

それでは、愛着(アタッチメント)経験は、一般的にどのような発達に影響すると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、愛着(アタッチメント)の経験が与える4つの心理学的特質の発達について理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「遠藤和彦(編)(2021)入門アタッチメント理論:臨床・実践への架け橋.日本評論社.」です。

 

 

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愛着が与える4つの心理学的特質の発達について

著書には、愛着が与える4つの心理学的特質の発達が記載されています(以下、著書引用)。

自他に対する基本的信頼

 

自律性および自分の能力に対する根源的自信

 

心の理解能力および共感性

 

脳や身体生理的メカニズムへの影響

 

 


それでは、次に、以上の4つについて具体的に見ていきます。

 

1.自他に対する基本的信頼

以下、著書を引用しながら見ていきます。

アタッチメントが自分や他者に対する基本的な信頼感に通じるということです。

 

養育者を主とした幼少期からの愛着関係は、その後の基本的な対人様式(自他への信頼感)を作ると考えられています。

基本的な対人様式とは、内的作業モデル(IWM)とも言われ、自他に対してどのような信頼感を持っているかで構成されています

例えば、自分は他者から信頼されるに値する存在なのか?(→自己モデル)、他者は自分が困ったときに助けてくれる存在なのか?(→他者モデル)といった、自他の表象(イメージ)から構成されています。

 

関連記事:「愛着で重要な内的作業モデルについて【心の中に大切な人がいることの重要性】

 

 

2.自律性および自分の能力に対する根源的自信

以下、著書を引用しながら見ていきます。

アタッチメントは、依存性ではなく、むしろその対極にある自律性を育むものであると考えられています。

 

「一人でいられる能力」は、自分のもっている力に対する根源的な自信、換言すれば「自己効力感(self-efficacy)」の形成をおのずと伴っています。

 

愛着(アタッチメント)と聞けば、漠然と相手に頼る・依存するといったイメージを持たれる方もいるかもしれません。

一方で、愛着の本質的な機能は、子ども(人)が不安な時に信頼できる大人(人)にくっつくことで、安心感が得られ(情動が調整され)ることで、再度、外の世界への探索・挑戦意欲が高まるといった意味を持っています。

つまり、愛着対象の存在(安全基地となる存在)があることで、外の世界に向けて自律的に振る舞う様子が高まるといった意味があります。

さらに、自律的に振る舞う様子が増えることは、自分に対する自信、自己効力感の形成にも影響していくと考えられています。

 

関連記事:「愛着形成には何が必要か?:3つの基地機能から考える

 

 

3.心の理解能力および共感性

以下、著書を引用しながら見ていきます。

アタッチメントがメンタライゼーション(mentalization:心の理解能力)や共感性の発達に寄与するということです。

 

安定した愛着関係とは、養育者が子どもの様々な思いに意識を向け、共感的態度を持って接することによって育まれていきます。

子どもが他者の様々な心情を理解できるようになるには、子ども自身の様々な心情に対して、鏡となって応えてくれる人の存在が必要です。

養育者がそのような存在になるためにも、敏感性洞察性など、子どもの気持ちに気づき、その気持ちを読み取ろうとする関わり方が大切です。

そして、敏感性や洞察性が高い大人と関わることができた子どもは(安定した愛着関係があるケース)、心の理解能力共感性がポジティブに発達していく可能性が高いと言えます。

 

関連記事:「【愛着で大切な〝敏感性″について】4つのプロセスを通して考える

関連記事:「【愛着で大切な〝洞察性″について】療育経験を通して考える

 

 

4.脳や身体生理的メカニズムへの影響

以下、著書を引用しながら見ていきます。

アタッチメントが脳や身体の発達にもかなり大きな影響力を有していることが実証的に明らかにされつつあるようです。

 

アタッチメントは、恐れや不安などの情動によって崩れた心の状態を立て直すだけではなく、その情動に伴う緊急反応によって崩れた身体の状態を元通りする働きも担っているということになります。

 

著書にあるように、愛着(アタッチメント)は、恐れや不安などネガティブな情動を回復する機能があります。

仮に、恐れや不安などネガティブな情動がいつまでも回復されない、逆に悪化をし続けた場合には、様々な精神疾患になるリスクが高くなります。

このように、不安定な愛着経験が積み重なることは、脳や身体の発達にマイナスな影響を及ぼすと考えられています。

 

関連記事:「【マルトリートメントとは何か?】発達障害児支援の現場を通して考える

 

 


以上、愛着(アタッチメント)の経験が与える4つの心理学的特質の発達について見てきました。

今回見てきたように、愛着経験は人の発達の様々な側面に影響することが分かります。

そのため、愛着の持つ意味や機能を深く理解していくことはとても大切です。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も愛着研究に目を向け続けていく中で、療育現場に活用できる視点を取り入れていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

遠藤和彦(編)(2021)入門アタッチメント理論:臨床・実践への架け橋.日本評論社.

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