愛着とは特定の養育者との情緒的な絆のことをいいます。
愛着の概念を最初の考えたのはBowlbyです。
それでは、Bowlbyは愛着をどのように考えていたのでしょうか?
今回は、Bowlbyの愛着理論をもとにそもそも愛着(アタッチメント)とは何かについてお伝えしていきます。
今回、参照する資料は「数井みゆき・遠藤和彦(編著)(2007)アタッチメントと臨床領域.ミネルヴァ書房.」です。
愛着(アタッチメント)とは何か【Bowlbyの愛着理論から考える】
以下、著書を引用ながら見ていきます。
その原義は、文字通り、生物個体が他の個体にくっつこうとする(アタッチメントしようとする)ことに他ならない。
このように著書から、愛着(アタッチメント)の原義は、生物が他の個体にくっつく(アタッチメント)という所にあります。
もともと、愛着研究は動物実験(ハーローの実験など)からヒントを得ており、個体が不安な状態にあると、安心できる他の個体にくっつき不安感を軽減し身を守るという特徴があります。
この時に、身体からのぬくもり(皮膚接触)から安心感を得ようとするのまた特徴として見られます。
引き続き著書を引用します。
彼は、個体がある危機的状況に接し、あるいはまた、そうした危機を予知し、恐れや不安の情動が強く喚起された時に、特定の他個体への近接を通して、主観的な安全の感覚(felt security)を回復・維持しようとする傾性をアタッチメントと呼んだのである
このように、愛着とは、個体が生存するために、危機となる状況に対して、他の個体にくっつくことで、不安な情動を制御・調整・回復・維持することをアタッチメント(愛着)とBowlbyは考えました。
非常に生物学的な視点が根底の意味としてあったことが理解できます。
そして、生存をかけて、ネガティブな感情を他者の力をかりて回復するものであり、生存・生きるため、といった意味がここから深く読み取れます。
また、Bowlbyは愛着を以下にように考えていました(以下、著書引用)。
Bowlbyは、基本的にアタッチメントを、その主要な対象を少しずつ変えつつも、揺りかごから墓場まで生涯、存続し、機能し続けるものであると把捉していた。
著書の内容から、Bowlbyは、アタッチメント対象を少しずつ変化させながら、子どもだけではなく、生涯にわたって影響するものだと考えていたことがわかります。
このアタッチメント対象の変化とは、例えば、世話される側だった子どもが後の大人になり世話する側(愛着対象になる)になるなどがあります。
また、内的作業モデルといった概念の導入により、愛着研究は子どもだけではなく、大人も含め、生涯発達の視点に位置付けられるようになりました。
関連記事:「愛着で重要な内的作業モデルについて【心の中に大切な人がいることの重要性】」
以上、愛着(アタッチメント)とは何か【Bowlbyの愛着理論から考える】について見てきました。
愛着と聞くと、○○に愛着がある、○○に愛着が湧くなどポジティブな意味合いで使われることが多くあります。
しかし、Bowlbyが提唱した愛着理論の本来の意味合いは、非常に生物学的であり、ネガティブな感情を回復し維持するといった生存するために必要な機能という意味が強いことがわかります。
私自身、以前、大学院で愛着の研究をしていました。
愛着研究を通して、Bowlbyの愛着理論を学び、そこからいかにして成人期といった大人にまで愛着研究が発展したかという経緯を学ぶことで、愛着理論の奥深さや大切さを深く認識できるようになったと感じます。
そして、現在、療育現場で発達に躓きのある子どもたちと関わっている中でも、愛着理論の重要性が必要になるときがあります。
そこで感じるのは、私たちは、これまで積み上げてきた過去の研究知見の膨大さを、今目の前の相手に対してどのように応用できるかといった考え方だと思います。
私自身、まだまだ未熟ですが、これからも愛着理論をはじめ様々な療育に必要な理論や知識を学びながら、日々の現場に真摯に向き合っていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
数井みゆき・遠藤和彦(編著)(2007)アタッチメントと臨床領域.ミネルヴァ書房.