愛着に問題を抱えている人の割合が増加していると言われています。
愛着障害も発達障害と同様にスペクトラムであり、問題の程度も様々です。
関連記事:「愛着障害をスペクトラム障害とする見方について考える」
そんな中で、愛着障害への支援も進んできています。
様々な研究による支援の効果なども出てきており、発達障害など療育に関わる人たちにとっては学ぶ重要性が非常に高い領域になってきています。
それでは、愛着障害など愛着に問題を抱える人への関わりにおいて何をゴールに支援していけば良いのでしょうか?
そこで、今回は、愛着障害への支援のゴールについて、「探索基地」機能が持つ2つの重要性から考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「米澤好史(2022)愛着障害は何歳からでも必ず修復できる.合同出版.」です。
愛着障害への支援のゴールとは【「探索基地」機能が持つ2つの重要性から考える】
以下、著書を引用します。
探索基地の重要性は、次の2つです。
①こどもとかかわる方にとって「探索基地」を形成することが、「これができたら愛着形成ができた」「これができたら愛着障害を治せた」というわかりやすいゴールになるということです。
②(略)「探索基地」を形成するというゴールができれば、こどもが精神的に自立できたと言える状態を確認できるからなのです。
著書の内容にあるように、「探索基地」機能の持つ重要性とは、愛着障害への支援のゴールになるということです。そして、「探索基地」機能の形成は、精神的な自立の状態を示す一つの指標にもなります。
愛着に問題を抱える子どもへの支援は、関わる大人に取って非常にエネルギーを使います。
また、支援の経過は順調に進むわけではなく、愛情を試してくるなど愛情を確認する行動なども支援の過程で見られる場合が多いです。
そのため、自分が取り組んでいる支援が果たしてうまく行っているのか?何を目指せば良いのかを見極めるために、明確なゴールが必要です。
この愛着障害への支援のゴールの一つが「探索基地」の形成になるというわけです。
それでは、ここから少し具体的に「探索基地」機能について見ていきます。
「探索基地」機能とは、「安全基地」「安心基地」機能を持つ特定の人物(愛着対象となる人物)に対して、その人物から離れて探索活動を行うことです。
そして、探索活動を終え、その人物の所に戻ってきて探索内容を報告することです。
また、探索に行く際に、探索に行っても良いかその人物に確認を取る行動も見られます。
このように、ポイントとなることは、探索活動の過程において報告と確認を取る行動です。
例を挙げて見ていきましょう。
A君が初めて行く公園で砂場で遊びたいとい思った。
その時、母親の顔を見て(確認行動)、母親が笑顔で応える(“行っていいよ”)。
A君は母親から離れ砂場に向かって走り出して遊びはじめる(探索活動)。
砂場での遊びを終え、母親の所に戻り楽しかったことなど遊びの内容を話す(報告)。
以上が、短いですが「探索活動」の例です。
繰り返しますが、ここで大切なことは、愛着対象となる(なっている)人物に遊びに行っても良いかの確認を取る、そして、遊んできた内容を報告することです。
また、著書内では、こうした確認行動は、本人の中では、ほぼ大丈夫だという確信があるが、最後の一歩を踏み出す判断を確認するために行うことが多いとされています。
最後の一押しを重要な信頼できる人物にして欲しいということです。
このように「探索基地」機能がうまく働くためには、「安心基地」機能と「安心基地」機能も同じくうまく機能する必要があります。
「安全基地」と「安心基地」についての詳細は以下の記事に記載しています。
関連記事:「愛着形成には何が必要か?:3つの基地機能から考える」
関連記事:「愛着形成で重要な「安全基地」と「安心基地」の違いについて」
以上、愛着障害への支援のゴールとは【「探索基地」機能が持つ2つの重要性から考える】について見てきました。
ゴールのない支援は非常に険しく途方に暮れる場合が多くあります。
特に、愛着障害など精神的なエネルギーを多く使うケースは特に目標が重要です。
今回取り上げた「探索基地」といった概念の持つ意味合いを現場の子どもたちと照らし合わせていくことで、子どもとの間に良い関係ができているのかを判断する一つの指標ができると感じます。
私自身、まだまだ未熟ですが、今後も現場でより良い支援ができように、愛着に関する知見も多く吸収していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
米澤好史(2022)愛着障害は何歳からでも必ず修復できる.合同出版.