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愛着障害への対応[してはいけない対応5選]

投稿日:2022年9月9日 更新日:

愛着障害への対応に困る人たちは多くいるかと思います。

著者もその一人で、これまで多くの愛着に問題を抱えている子どもの対応でたくさん悩み試行錯誤してきました。

対応が難しいと感じるのは、一般的に良いと考えられている子どもへの対応や関わりが通用しないからです。

 

それでは、愛着障害への対応方法などは具体にあるのでしょうか?

 

今回は、愛着障害への対応として、してはいけない対応5選について説明していきます。

 

 

今回、参照する資料は「米澤好史(2019)愛着障害・愛着の問題を抱えるこどもをどう理解し、どう支援するか?アセスメントと具体的支援のポイント51.福村出版.」です。

 

 

愛着障害への対応[してはいけない対応5選]

以下に5選を引用します。

①感情に期待した対応

②叱る対応、追い詰める対応が引き起こす問題

③腫れ物にさわる対応、無視する対応、取り上げない対応

④要求に応えるだけの対応、主導権を握られた対応、受容、傾聴

⑤かかわる人の無連携な勝手な対応

 

 


それでは、それぞれについて具体的に見ていきます。

 

①感情に期待した対応

何か間違った行動をしてしまった際に、その理由を問うことは子どもとの関わりでよく見られます。

「どうして○○したの?」などと、理由を問うやり方は、相手の感情への問いかけであり、問いかける側はもちろん相手が自分の感情に気づくことを期待しています。

しかし、愛着に問題を抱えている子どもに感情に期待する問いかけはNGです。

その理由について、著著を引用して見ていきます。

自分で自分の気持ちがわからないのに、気持ちを聞かれたら、かえって嫌な気持ちになり混乱します。(中略)感情が充分発達していないので、自分の気持ち、相手の気持ちがわからないのが愛着障害である、との理解が必要です。

著書の内容から、愛着に問題を抱えている人は、感情の発達が未発達なため、感情に期待した対応はやっても効果は期待できないとされています。

 

②叱る対応、追い詰める対応が引き起こす問題

前述した①の対応と同様に、叱る対応、問い詰める対応も感情の理解が発達している人には効果がありますが(行動の変化を期待できるため)、愛着に問題のある人には効果が期待できません。

それは、自分の感情に気づき、振り返る力が必要になるからです。

感情発達が未成熟だと、叱る・問い詰めるなどの対応はNGです。

こうした対応をすると子どもは以下のような反応を見せます(以下、著書引用)。

愛着障害のこどもに真正面からそれが間違っていると指摘して、こどもを叱っても、感情が混乱するだけです。ネガティブな感情を抑えられず、どうしようもなく、攻撃するか、関係性を遮断するしかなくなるのです。

 

③腫れ物にさわる対応、無視する対応、取り上げない対応

愛着に問題がある子どもは攻撃的や支配的になることも多くあります。

それに関わるスタッフは、腫れ物に触る対応をしていまうことがありますが、こうした対応はNGです。

その理由とは、著書の引用から以下です。

いくら腫れ物に触るように命令や支配に服従しても、その命令・支配はどんどんエスカレートしていくだけです。

こうした状態を、著書の中では愛情欲求エスカレート現象としています。

こうした腫れ物にさわる対応は、根底にある安心感のある関係ではないため効果は期待できません。

 

また、愛着に問題を抱えている子どもの行動を無視したり、取り上げない対応はNG

です。

こうした対応に効果があるのは、安定した愛着関係が構築されている子どもに限っては効果があります。

 

④要求に応えるだけの対応、主導権を握られた対応、受容、傾聴

相手の要求に応える、主導権を握られる対応はNGです。

その理由は、愛着に問題を抱える子どもは、前述した通り、感情発達が未成熟ですので、自他の感情を理解したり、自分の感情のコントロールが困難です。

うまく対応するには、先導する人が自他の感情を理解しコントロールできる必要があります。

そのため、愛着に問題を抱える子どもが主導権を握るような状態を続けると、混乱や破綻に繋がることになります。

 

また、受容や傾聴の対応も愛着に問題を抱える子どもにはNGです。

以下、著書を引用してその理由を見ていきます。

受容・傾聴というカウンセリングマインドに則った支援がうまくいかないのも愛着障害の特徴です。要求を受容しても安心感には繋がりません。傾聴は、自分で話し、聞いてもらうことで、自分の気持ちに気づける人には有効です。

著書の内容から、受容や傾聴は愛情に問題を抱える子どもには効果は期待できず、それは、自分の気持ちを理解できる力があることが前提条件としてあるからだと考えられています。

 

⑤かかわる人の無連携な勝手な対応

愛着障害への対応は、チームで連携して行う必要があります。

そのため、無連携な対応はNGです。

かかわる人がそれぞれの思いだけで、それぞれ連携せずに勝手にかかわってしまうと、愛着障害の症状を増幅させます。

無連携な対応は、厳しい人の言うことは聞くが、優しい人の言うことは聞かず命令するなど、無連携なしわ寄せが優しい人の所にきてしまうこともなども特徴としてあります。

 


以上、愛着障害への対応[してはいけない対応5選]について見てきました。

愛着障害はとても手ごわい障害だと著者は感じます。

それは、長い時間をかけた心理的支援でないと改善が期待できないからです。

また、支援していく中で、子どもからの挑発行為や試し行動など多くの大変な対応に迫られます。

しかし、関係性の問題である以上、誰かが対応していかないといけません。

私自身、まだまだ未熟ですが、今度も愛着障害といった愛着に問題を抱える人への理解と支援を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「愛着障害への支援:「愛情の器」モデルを例に

 

米澤好史(2019)愛着障害・愛着の問題を抱えるこどもをどう理解し、どう支援するか?アセスメントと具体的支援のポイント51.福村出版.

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