愛着とは、養育者と子どもとの間で交わされる情緒的な絆のことを指します。
世間一般では、愛着対象は親(父・母)であることが多いかと思います。
それでは、親でなくても愛着対象になるのでしょうか?
結論から言えば、愛着対象は親でなくても大丈夫です。
それでは、愛着対象となりえるにはどのような条件が必要なのでしょうか?
今回は、愛着関係で大切なこととして、愛着対象は親でなくても良いという内容について、愛着対象として必要な条件についてお伝えしていきます。
今回参照する資料は「米澤好史(2015)発達障害・愛着障害:現場で正しくこどもを理解し、こどもに合った支援をする:「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム.福村出版.」です。
愛着関係で大切なこと【愛着対象は親でなくても良い】
愛着機能というと、母親をイメージすることが多いかと思います。
母親の温かさは子どもにとって大きな安心感となります。
一方で、こうした安心感は全て母親が担う必要があるのでしょうか?他の人が担うことは可能なのでしょうか?
この点について著書を参考に見ていきます。
以下、著書を引用します。
母親機能は、必ずしも母親が担わなくてはいけないものではなく、「誰にでも」担えるものであり、しかし、「誰かが」担わなくてはいけないものなのである。
著書の内容から、母親機能は「誰にでも」担えるものであるが、「誰かが」担わなくてはいけないというところが重要です。
繰り返しますが、母親機能のかわりは他の人でも可能ですが、必ず誰かが担う必要があるということです。
それでは、母親機能とは一体どのようなものがあるのでしょうか?
以下、著書を引用して見ていきます。
母親機能とは、安全基地機能、安心基地機能、探索基地機能のことである。
この場合の母親機能とは、安定した愛着形成上必要となる条件のことを言います。
そして、愛着形成に必要な条件とは、安全基地機能、安心基地機能、探索基地機能の三つの条件が必要ということになります。
安全基地機能とは、生きていく上で子どもの安全が守られていると子ども自身が感じる機能のことを言います。
安全基地機能とは、その人といると安心感がある、ホッとするといった心理的な機能のことを言います。
探索基地機能とは、安全感・安心感を担う人がいることで、探索空間を広げる機能のことを言います。
例えば、学校であった出来事を母親に報告するなどが例としてあります。
人は、安心できる避難所(安全と安心を担う人)があるとことで、自分の行動範囲を拡張していくことが可能となります。
つまり、戻ってこれる避難所があることが大切ということになります。
関連記事:「愛着形成には何が必要か?:3つの基地機能から考える」
以上から、三つの母親機能(愛着形成において必要な機能)は、母親でいなくても担うことができます。
そして、母親や実親でなくても、この三つの機能を担う「誰かが」必要ということになります。
以上、愛着関係で大切なこと【愛着対象は親でなくても良い】について見てきました。
愛着関係を作る上ではもちろん親(父・母)が重要な役割を占めています。
しかし、愛着対象は必ずしも実親である必要はありません。
愛着関係で大切なことは、子どもが自分の気持ちをしっかりと受け止めてもらっているという実感です。
こうした気持ちの受け止め・気持ちの理解がしっかりと行われているということは、すなわち、安全基地機能、安心基地機能、探索基地機能といった愛着形成上必要不可欠な機能を担っている重要な「誰かが」いるということになります。
著者も昔は、愛着は母親を中心とした実親が担うことが必要不可欠だと思っていた時期がありました。
しかし、家庭状況は一人ひとり異なります。
様々な家庭状況がある中で、何が愛着関係を築く上で大切なのかを今回取り上げた文献では多く記載されています。
私自身、まだまだ未熟ですが、今後も療育(発達支援)の現場から愛着の大切さについて実践を通して感じたことを発信していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
米澤好史(2015)発達障害・愛着障害:現場で正しくこどもを理解し、こどもに合った支援をする:「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム.福村出版.