愛着とは特定の養育者との情緒的な絆のことを言います。
安定した愛着形成には、「安全基地」、「安心基地」、「探索基地」といった三つの機能が大切です。
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子どもは特定の人物への安全・安心感を基盤に活動空間を広げていきます。こうした活動空間を広げ、その活動内容を報告することは「探索基地」機能の重要な役割です。
愛着・愛着形成は、子どもの発達の様々なものに影響を与えると言われています。
それでは、例えば学力との関連などはあるのでしょうか?
そこで今回は、愛着形成と学力の関係について、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、「認められ感」をキーワードに考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「米澤好史(2022)愛着障害は何歳からでも必ず修復できる.合同出版.」です。
愛着形成と学力の関係について【「認められ感」から考える】
参照資料の米澤好史さんは、著書の中で愛着形成と学力には関連があると考えています。
以下、著書を引用しながら見ていきます。
「学力向上を図るなら、まず愛着形成、愛着修復から」と私は提唱しています。
と結論づけその理由として重要なのは「認められ感」だとしています。
以下、再び著書を引用します。
どの年齢グループでも、こどもの意欲を高める、ポジティブな感情の形成に大きな影響を与えていたのは、「認められ感」でした。自分のことを誰かに認められたと受け止めたことが、意欲を一番高める要因です。
こどもに、意欲というこころのしくみが形成されていなければ、学力が上がらないのです。
著書の内容から、学力向上には、意欲といった心の仕組みが作用しており、その中でも、他者からの「認められ感」が重要だとしています。
「認められ感」は、愛着形成で重要な「探索基地」機能に多く見られます。
例えば、子どもが、学校のテストで良い点数が取れたことを家に帰って母親に報告し、母親が子どもを褒めるといった光景はよくあるかと思います。
こうした光景の中には(関わりの中には)、重要な愛着対象である母親からの「認められ感」が子どもに作用しているというわけです。
この「認められ感」が子どもの次への行動意欲をさらに引き起こし、さらに勉強などに必死に取り組むというわけです。
それでは、次に、以上を踏まえての著者の意見を述べていきます。
著者のコメント
著者も確かに勉強を例に考えると、子どもの頃に勉強へのモチベーションには親や先生などに認められたいといった思いが強く働いていたように感じます。
点数が良いと喜び、悪いとがっかりする親の顔を思い浮かべていたように感じます。
その後、大人になり、自分の好奇心を基盤とした興味関心や、社会的な命題などにより学びが促進した記憶があります。
しかし、子どもが最初に何かを一生懸命に学ぼうとする大きな要因は、重要な他者からの「認められ感」が強いのかもしれません。
もちろん、学力はそもそもの知能や学習環境など様々な要因が影響しているため、一概に愛着対象からの「認められ感」のみが寄与しているわけではありません。
一方で、愛着形成といった他者との関係性が学力にも影響しているといった視点は、人間が物事を学習するためには意欲・モチベーションといった根本的な欲動が作用しているといったことを踏まえると非常に重要な視点だと思います。
以上、愛着形成と学力の関係について【「認められ感」から考える】について見てきました。
愛着形成は、人との関係のあり方、情緒のあり方以外にも様々なものに影響していることが考えられます。
私自身、現在、療育現場で発達支援を行っていますが、子どもたちから日々「○○先生、見て!聞いて!」など、学校で合ったことや放デイでの出来事を報告しに来てくれます。
こうした姿の中には、自分の思いや出来事を報告しそれを共有したり、認めてもらいたいといった思いがあるのだと感じます。
そして、この報告するという行為が、意欲やモチベーションと関連しているのだと感じます。
このように、愛着といった概念を深掘りしていくと子どもの関わりで大切な様々なことが見えてくるように思います。
私自身、まだまだ未熟ですが、今後も現場での実践に加え、知識からの学びも大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
米澤好史(2022)愛着障害は何歳からでも必ず修復できる.合同出版.