愛着とは特定の養育者との情緒的な絆のことをいいます。
愛着形成において大切な時期とは人生早期にあると言われています。
それでは、愛着形成で大切な時期とは具体的にいつ頃のことを指すのでしょうか?
そこで、今回は、愛着形成で大切な時期について、臨界期の視点も踏まえてお伝えしていきます。
今回参照する資料は「岡田尊司(2011)愛着障害:子ども時代を引きずる人々.光文社新書.」です。
愛着形成で大切な時期とは【臨界期からその重要性を考える】
それでは、そもそも臨界期とはなんでしょうか?
臨界期とは、人間の脳には物事を学習する最適な時期があり、その時期を逃すと学習できる可能性が激減するという時期のことをいいます。
例えば、言語に関しては、小学生頃まで(12歳頃)が臨界期だとされており、その後の学習で言語を習得することは難しいとされています。
それでは、愛着形成においても同様のことが言えるのでしょうか?
以下、著書を引用します。
生後六か月から一歳半くらいまでが、愛着形成にとって、もっとも重要な時期とされる。この「臨界期」と呼ばれる時期を過ぎると、愛着形成はスムーズにはいかなくなる。
著書の内容から、愛着形成において重要な時期(臨界期)は生後6ヶ月から1歳半頃ということになります。
様々な書籍でも、愛着形成で重要な時期は生後から3歳ないしは5歳頃までと書かれていることが多いです。
そして、この時期を過ぎると愛着形成がスムーズにいかなくります。
ここで注意したいのは、スムーズにいかなくなるということで、もう取り返しがつかないということではありません。
そのため、一度、安定した愛着が形成されないともう二度と安定した愛着が形成されないといった考えは間違いです。
しかし、安定した愛着を再度構築するには、個人差はありますが、時間がかかります。また、時間だけではなく、質(関わりの内容)も重要です。
著書の中では次のような例を挙げています(以下、引用)。
実際、二歳を過ぎて養子になった子が、養母になかなか懐こうとしないということはよくある。また、臨界期に母親から離されたり、養育者が交代したりすると、愛着が傷を受けやすいのである。
この例からも分かる通り、いかに人生早期に特定の養育者との関係性が重要であるかがわかります。
この場合の関係性とは、子どもの発信に養育者が気づき応答することで子どもが安心した状態になるという意味です。。
著書の中でも愛着形成がスムーズにいくためには、以下のことが大切だと述べています(以下、引用)。
愛着がスムーズに形成されるために大事なことは、十分なスキンシップとともに、母親が子どもの欲求を感じとる感受性をもち、それに速やかに応じる応答性を備えていることである。
以上、愛着形成で大切な時期とは【臨界期からその重要性を考える】についてお伝えしてきました。
今回は愛着形成に重要な臨界期から話を進めてきました。
一方で、こうした時期に安定した愛着を形成できなかった場合でも、安定した愛着を築くことは可能だと考えられています(愛着研究者をはじめ)。
その時に大切な考え方として、できるだけ早期に介入するということ、医療的治療も時には重要ですが最終的には心理的支援によってのみ改善効果が期待できるということです。
さらに、特定の人による関係づくりや、量よりも質が大切だということも重要な視点になります。
関連する記事を以下に載せていますので、興味があれば読んでいただければ幸いです。
関連記事:「愛着(愛着形成)で大切なこと【関わる時間よりも質が重要】」
関連記事:「愛着形成で大切なこと【愛着障害の支援に手遅れはない】」
私自身、昔、児童相談所で愛着に問題を抱えている子どもたちと関わることがあり、現在の療育現場でも同じように愛着に問題のある子どもたちと関わることもあります。
こうした経験を通して、愛着の持つ重要性を強く実感してきました。
今後も微力ながら少しでも愛着に問題を抱える人への支援を行い、また、愛着といった人間関係の基盤となる理論についても学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
岡田尊司(2011)愛着障害:子ども時代を引きずる人々.光文社新書.