愛着とは特定の養育者との情緒的な絆のことをいいます。
愛着で大切な概念に「安全基地」といったものがあります。
「安全基地」とは、特定の人物(養育者など)が相手(子どもなど)に対して安全感・安心感などを心理的に与える避難所の意味として使われます。
それでは、心の拠り所として機能する「安全基地」となる人には一体のどのような特徴があるのでしょうか?
今回は、愛着で大切なこととして、安全基地となる人の特徴について、著者の意見も交えながらお伝えしていきます。
今回参照する資料は「岡田尊司(2016)愛着障害の克服:「愛着アプローチ」で、人は変われる.光文社新書.」です。
愛着で大切なこと【安全基地となる人の特徴について】
以下、著書を参照しながら見ていきます。
愛着が安定した人を見分けるための特徴をいくつか記しておこう。
(1)接していて、怖さや危険な感じがなく、安心できる。
(2)穏やかで、気分や態度がいつも一定している。
(3)目線が対等で、見下したような態度やおもねりすぎる態度をとらない。
(4)優しく親切だが、必要なときには、言いづらいことも言う。
(5)相手の意思や気持ちを尊重し、決めつけや押し付けがない。
以上が、安全基地となる人の特徴になります。
それでは、次に(1)~(5)についてそれぞれ見ていきます。
(1)接していて、怖さや危険な感じがなく、安心できる。
恐怖感は安心感と相対するものです。
ですので、恐怖感を与えるような人には当然安心感を持つことはありません。
怖さや危険な感じのする人は、そうした態度が意識的・無意識的であれ、相手に伝わってしまうものです。
非常に厄介なのは、恐怖感を与えていることに自覚的でないことや、恐怖を与えることで相手をコントロールしようとすることです。
そのため、純粋に関わっていて安心できる人の存在はとても大切です。
(2)穏やかで、気分や態度がいつも一定している。
態度が安定していることは人に非常に安心感を与えます。
気分がコロコロ変わる、調子が良い時と悪い時の気分の波が顕著に態度にでると、それに関わる人の気分も少なからず影響します。
特に、愛着が不安定な人(不安定型の愛着スタイル)や、気質的に過敏な人は相手の気分に大きく影響を受けます。
そのため、態度がある程度一定であること、安定していることは大切です。
(3)目線が対等で、見下したような態度やおもねりすぎる態度をとらない。
人によって態度が変わる人は信頼を得ることは難しいです。
こうした態度は、言語だけではなく、非言語(表情や声のトーンなど)でもでることがあります(ダブルバインド)。
例えば、言葉では肯定的な声がけをしていても、顔が笑っていない、冷たい声のトーンなど、言葉と態度(非言語)が一致していないと相手に不信感を与えてしまいます。
また、上司など、気に入られたい相手にだけ媚びを売るなどの行為は周囲から直ぐに見抜かれます。
逆に、人に過度に気に入られようとせずに、誰に対しても対等に接してくれる人は安心感を与えてくれます。
(4)優しく親切だが、必要なときには、言いづらいことも言う。
時には、適切な指摘も必要です。
ただ優しいだけではなく、必要な時には、周囲が言いづらいことを言ってくれる人は信頼できます。
もちろん、こうした言動の背景には、相手のためを思って言っていることや、その内容に正当性があること、立場の有無は関係のない指摘など、伝わるためには様々な条件も必要かと思います。
優しさの裏にある心の強さを感じるといった印象がこうした人には該当します。
(5)相手の意思や気持ちを尊重し、決めつけや押し付けがない。
自分の考えを一方的に伝えたり、自分にとって都合のよい指摘をする行為は、相手からの信頼を得ることはできません。
相手の意思や気持ちを尊重することは、それだけ相手のことを理解しようと想像力を働かせることでもあります。
その思いが強ければ強いほど、相手に伝わる可能性は高まります。
そして、こうした想像力は、その人本人が過去に辛い体験をした、辛い体験を味わった人と関わってきたなどがベースになっていることもあります。
もちろん、こうした人は過度な決めつけや押し付けはなく、相手によって柔軟に考え方を変えることができます。
以上、「安全基地」を与える人の特徴について見てきました。
以上の5つの特徴が備わっている人が安定した愛着スタイルを持っている人と言えます。
著者もこれまで信頼できる人にはこうした特徴が備わっていたように感じます。
不安定な愛着の修復には、「安全基地」の特徴を持つ、安定した愛着スタイルを持つ人物との関わりが大切だと言われています。
私自身、まだまだ未熟ですが、これからも療育現場で、子どもたちの「安全基地」となれるように、今回取り上げた5つの特徴を見つめ直していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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岡田尊司(2016)愛着障害の克服:「愛着アプローチ」で、人は変われる.光文社新書.