読んだり、書いたり、計算することが苦手な人たちの中には〝学習障害“の人たちがいます。
学習障害かどうか見極める上でのポイントは、①一般的な知能は正常の範囲内、②学習環境が整っている、③知的障害・情緒障害・視覚障害・聴覚障害などが原因ではないにも関わらず、読んだり、書いたり、計算が特異的に苦手ということが重要になります。
学習障害は発達障害というカテゴリー内に位置づけられています。例えば、自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性、発達性協調運動障害などが他にあります。
現状では自閉症スペクトラム障害や注意欠如・多動性などと比べると社会的な認知は低く、研究途上の分野でもあります。
それでは、学習障害とは一体どのような障害であるのでしょうか?
そこで、今回は、学習障害の文科省と医学の定義を通して理解を深めていきたいと思います。
学習障害について(文科省の定義より)
さっそくですが、以下に文部科学省の定義(文部省,1999)について見ていきたいと思います。
学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。
学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らからの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。
以上が文科省の定義になります。
つまり、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」という6領域のどこかの学習に著しい困難がある状態と定義しています。
文科省といった教育領域では、学習障害(LD)の英語表記を、Learning Disabilitiesを採用しています。
一方、医学領域では、学習障害(LD)の英語表記を、Learning Disordersを採用しています。
学習障害について(医学の定義より)
次に、医学領域として、アメリカ精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引き(DSM-5 )」から学習障害の診断基準について見ていきたいと思います。
DSM-5 では、以下の4つの診断基準を挙げています。
基準A:正規の学校教育期間中に明らかとなる、基本的な学業的技能を学習することの持続的困難さであり、従来どおり読字の障害、書字表出の障害、算数の障害が区別される。
基準B:障害のある学業的技能においては、成績がその年齢の平均より有意に低いことで、これは個別の標準化された到達尺度(学力検査)および総合的な臨床評価で確認される。
基準C:大多数においては、学習困難は低学年のうちに明らかになる(ただし、一部では学習的要求が増大してその人の限られた能力を超えてしまう高学年になるまで、明らかにならないこともある)。
基準D:鑑別診断であり、知的能力障害や感覚器の異常、他の精神または神経疾患、環境要因等によっては説明ができないものに限定される。
さらに、これら4つの診断基準は、発達歴、病歴、家族歴、教育歴、成績表、心理教育的評価などの臨床的総括に基づいて満たされるべきであることが強調されている。
以上が、学習障害の医学的定義になります。
文科省との定義と大きな違いは、「聞く」「話す」という内容がなく、「読字の障害」「書字表出の障害」「算数の障害」の3領域となっている点です。
ここで、補足として、DSM-5 では学習障害(LD)を、「神経発達症群」の一つとして、「限局性学習症(Specific Learning Disorder)」と呼ばれるようになりました。
ここでいう「specific」という表現は、「特異的」という訳が当てられており、その意味するところは、「知的能力障害」による全般的な学習困難と区別する目的で使用されています。
以上、教育領域や医学領域から学習障害の定義や診断項目を見てきました。
学習障害は、他の発達障害と併存していることもあります。
そのため、上述した単独のケースよりも、状態像として複雑になる場合もあります。よくテレビなどで当事者の方のプロフィールに、ASD、ADHD、LDなどと書かれている場合もあります。
今後は、単独の疾患だけではなく、障害の併存という観点から発達障害を考えていくことがより重要になってくると思います。
その中で、学習障害への理解は非常に重要になります。
今後も、発達支援の現場から学習障害への理解を深め、支援内容についても学びを深めていこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。