特別支援教育が進む中、発達障害への教育も進歩しています。
発達障害への教育は特別なニーズのある子どもへの個別の理解と支援という観点から非常に大切です。
学校教育というと、どうしても成績といった評価を気にする方も多くいるかと思います。
良い成績を取ることが、その後の進路に影響し、よい社会人生活を送る上でとても重要だといった考え方です。
しかし、学校教育において良い成績を取る以上に大切なことがあります。
それでは、学校現場ではどのような教育の視点が大切となるのでしょうか?
そこで、今回は、学校教育で大切な2つのことを、発達障害児支援に携わる著者の経験談も交えながらお伝えします。
今回参照する資料は「本田秀夫(2022)学校の中の発達障害:「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち.SB新書.」です。
学校教育で大切な2つのこと【発達障害児支援の現場から考える】
以下、著書を引用します。
その時期に重要なことは、成績などの個別の目標にこだわるよりも、学校生活の全体を見ることではないでしょうか。子どもが学校生活の中で、「何かが学べた」と思えているかどうか、そして「何かが楽しい」と感じているかどうか。親御さんや学校の先生には、その2つのポイントを見てほしいと思っています。
授業を含めたさまざまな体験から、子どもが主体的に何かを学びとっているかどうかを見ることが大事です。
著書の内容では、学校教育で大切な視点として、1.「何かが学べた」という感覚、2.「何かが楽しい」といった感覚、の2つを挙げています。
そして、子どもの自ら学びたいといった気持ち・意欲的に学ぼうとする主体性を教師が観察することで、どのような体験に興味を示しているのかを見極めていくこともまた重要です。
次に、1.「何かが学べた」という感覚、2.「何かが楽しい」といった感覚、それぞれについて著者の経験談からお伝えします。
1.「何かが学べた」という感覚
「何かが学べた」という感覚は、例えば、これまでできなかったことができるようになる、今後の人生において意義のあることを知ったなどがあるかと思います。
そのため、学校の成績といった視点に捉われることなく、その子自身の学びを対象に考えていくことが大切です。
著者の身近な方の体験談で言えば、好きなスポーツに取り組むことで体の使い方がわかるようになった、紙ではうまく文章を書くことができなかったがタイピングによりうまく表現できるようになった、絵のうまい人との出会いにより絵を描くことに没頭するようになったなど、他にも色々とあります。
こうした体験談は、学習の仕方を工夫した、他の方法でトライした、人からの影響を受けたなど、学び方も様々であることがわかります。
そして、どれも、周囲との比較や成績評価といった軸ではなく、自らの体験を通して、これまでと違う自分に出会うことができたケースだと思います。
こうした経験談から言えることは、100人いれば100通りの学び・学び方があるのだと思います。
2.「何かが楽しい」といった感覚
興味があることは人生を豊かにします。
学校の中で楽しいことがあるとそれを中心に活動意欲が高まります。
著者が関わっている放課後等デイサービスの子どもたちも、学校の様子を話してくれることが多くあります。
その中で、好きな科目や得意科目を活き活きと話してくれる子もいれば、休み時間で楽しかったこと、興味のある学校行事、仲の良い友人とのエピソードなど、楽しかった内容は人それぞれ様々です。
そして、楽しいことがたくさんある子は、活き活きと学校生活を送っているといった印象があります。
また、放課後等デイサービスへのお迎えの際にも、学校が楽しいと、その気持ちが放課後等デイサービスでも持続している印象があります。
何かが楽しいといった感覚は将来的に、熱中できるものに繋がったり、将来の仕事や趣味に繋がるケースも多くあるかと思います。
著者の周りにも、楽しい趣味があることで仕事を頑張れている人も多くいます。
こうした経験談から言えることは、何かが楽しいことは、学校を楽しく通うためにとても大切なことであり、人生を豊かにするものだということです。
以上、学校教育で大切な2つのこと【発達障害児支援の現場から考える】について見てきました。
学校教育というと、人によっては成績などの評価を気にしたり、周囲の基準に合わせることをとても重視する方もいるかもしれません。
しかし、今回取り上げた、「何かが学べた」という感覚や「何かが楽しい」といった感覚は、学校教育を行う上で、多様性を重視した教育を考える際にとても大切な見方だと感じます。
人それぞれの学び・学び方、そして、それと連動して生じる楽しさには多様性があると思います。
私自身としては正直なところ、学校で学べた・楽しかったという思いは少ないのですが、間接的にも学校教育に関わる立場として、今、目の前の子どもたちにできる限り、良い体験を重ねていけるような関わりをしていきたいと思います。
まだまだ未熟ではありますが、今後もより良い発達理解と発達支援を目指して日々前進していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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