私たちの多くは学校に通うことを前提として過ごしています。
学校生活がとても楽しい人もいれば、そうでない人まで様々かと思います。
近年、教育を中心に発達障害について取り上げられる機会が多くなりました。
特別支援教育が進んだことにより、発達障害といった特別なニーズのある児童の教育・支援も充実してきています。
一方で、発達障害といった特性故の辛さがある子どもたちも多くおります。
それでは、そもそも、こうした児童も含め、すべての子どもたちにとって学校に行く目的とは一体何でしょうか?
そこで、今回は、学校に行く目的は何かについて、発達障害児支援の現場から考えていきたいと思います。
今回参照する資料は「本田秀夫(2022)学校の中の発達障害:「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち.SB新書.」です。
学校に行く目的は何か【発達障害児支援の現場から考える】
以下、著書を引用します。
では、学校に行く目的とはなんなのか。私は、学校というのは「社会に出ていくための土台をつくる場所」だと考えています。子どもたちがなんのために学校に行くのかというと、社会で生きていくうえでの基礎を学ぶためです。子どもは一人の社会人になるために、そのプロセスの一部として、学校に通うのです。
著書の内容では、学校の行く目的は、「社会で生きていくうえでの基礎を学ぶため」としています。
社会中で生きていくためには、様々な力が必要です。
それは、他者とのコミュニケーション能力、集団の中で過ごす力(ルールを守る力など)、読み書き計算能力、生活に必要な動作の学習、規則正しい生活習慣(食事・運動・睡眠)、何かをやってみよう・やってみたいと思う力、集中力や継続力など、様々なものがあります。
上記の内容を見てもわかるように、学校での学びは何も勉強だけではありません。
様々な能力が関連しながら発達・成長していくことが大切であり、それが、その後を生きる上での基礎的な能力を育むものになります。
もちろん、発達障害があると、集団活動など苦手な面も多くあります。
そうした子どもにとって大切なことは、自分のペースで周囲に合わせる力を身につけていくことだと思います。
この場合の、周囲に合わせるとは、できるようにすることだけではなく、できないことを他者と相談する力なども含まれます。
そして、得意なこと、好きなことを同時に見つけていくことも大切です。
関連記事:「自閉症療育で大切な視点-社会参加に必要な能力:「自律スキル」と「ソーシャルスキル」-」
関連記事:「発達障害の特性を「選好性」という視点から考える」
さらに、著書では次の点も指摘しています(以下、著書引用)。
登校や成績など、学校生活だけに目標をしぼるのは危険。
学校生活で良い成績を取ることが非常に重要だと思っている人や、毎日登校することを前提と考えている人も思いのほか多いのではないかと想定されます。
著書では、このような登校や成績に重きを置いた学校生活はとても危険であると指摘しています。
発達障害児の例で考えると、知的障害や境界知能、学習障害といった学校の成績に直接影響するケース以外にも、ADH特性により授業になかなか集中できない、AS特性により興味関心が限定しているなど、成績にマイナスな影響を及ぼす子どもたちは多く存在します。
一方で、成績で必ずしも高得点は取れないが地道にやっていくことは強い、得意不得意が顕著、興味のあることへの集中力は高いなど、学習においてポジティブな影響を及ぼすケースもまた同時に見られます。
また、登校を前提と考え場合には、仮に、学校生活が辛い・合っていない場合などマイナスな状態で通い続けることは、その後の人生においてデメリットとして働くことが多くあります。
発達障害児の中には、一度、学校は必ず登校するものだと思い込むと、無理にでも(精神の状態を大きく崩しても)行こうとする子がいます。
また、学校での嫌な出来事を詳細に記憶し、何かの拍子に思い出すなど、高い記憶力が裏目にでる子もいます。
こうした状況が続くと、長期のスパンで見ると、学校に対して(社会や学びに対してなど)マイナスなイメージが残ってしまうだけではなく、その後の、社会を生きていくためのエネルギーが枯渇してしまいます。
そのため、少し休みをはさむといった休息や、その子に合った登校方法なども考えていく必要があります。
以上、学校に行く目的は何か【発達障害児支援の現場から考える】について見てきました。
発達障害児にとって、学校生活は多くの困難さがあります。
それは、周囲の大人や定型児にはわかりにくい辛さです。
特別支援教育が進む中、発達障害児といったより個別の理解と配慮が必要な子どもたちが過ごしやすい学校、楽しんで通える学校になっていけることを期待します。
著者も放課後等デイサービスなどで、間接的に学校と関わる機会が多くあります。
学校との情報共有をしていきながら、子どもたちにとって、学校後の過ごしの充実といった側面から、今後もより良い支援をしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「発達障害への支援-コミュニティ支援・ネスティングの視点から考える-」
本田秀夫(2022)学校の中の発達障害:「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち.SB新書.