療育現場で子どもたちと関わっていると、様々な思いを共有(共感)できたり、逆に共有(共感)が難しいことがあります。
療育現場には発達に躓きのある子どもたちが通所してきているので、障害に関する理解や知識が必要になります。
例えば、発達特性に関する理解や発達的視点の理解などを著者はとても大切にしています。
一方で、現場の中でリアルタイムに生じる子どもの様々な気持ちを理解していくこともとても大切です。
子どもたちの思いはとても複雑に感じることがあります。それは、アンビヴァレンスや両義性など様々な思いが同時に交差しているからだと思います。
そこで、今回は、著者の療育経験も交えながら、子どもの気持ちを理解する視点として、アンビヴァレンスと両義性をキーワードに考えていきたいと思います。
今回、参照する資料は「小林隆児(2015)あまのじゃくと精神療法:「甘え」理論と関係の病理.弘文堂.」です。
アンビヴァレンス(両価性)とは何か?
以下、著書を引用します。
同一の対象に対して、愛と憎しみ、友好的態度と敵対的態度のような、相反する心理的傾向、感情、態度が同時に存在する精神状態を指し、「両価性」とも訳されている
著者の内容から、アンビヴァレンス(両価性)とは、愛・憎、友好・敵対など相反する態度が同時に存在している心理状態と記載されています。
例えば、ある友人に対して、好意を寄せており仲良くしていきたいという感情を持ちながらも、一方である友人の嫌な面からある種の敵対的な態度も同時にもっている状態が例としてあるかと思います。
著者も、様々な人たちとの関わりの中で、この人の○○の部分は好きだが、○○の部分は苦手といったことから好きと嫌いが一人の人間の中に共存しているという心理状態はよく理解できます。
また、こうしたアンビヴァレンスは、自分の気持ちの状態と相手の気持ちの状態によって変化していくことが考えられます。
両義性とは何か?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
そもそも人間の心身機能自体には正反対の機能が備わり、それが相互に拮抗しながらバランスを取ることによって健全な状態を保っていること
前者のアンビヴァレンス(両価性)が・・・
相反する感情や概念が同居して同時的に機能している状態を指す
のに対して、両義性は、愛憎や善悪、好意と敵対など相反する心理機能がそもそも人間には備わっていると著書では記載されています。
そのため、著書の中では、アンビヴァレンス(両価性)と両義性を・・
両者は一見類似の概念に思われるかもしれないが、厳密にはまったく異なったもの
とされています。
著者のコメント
それでは、アンビヴァレンス(両価性)と両義性の視点は具体的には療育現場にどのように活かされるのでしょうか?
著者はこれこそタイトルにもある通り、子ども気持ちを理解する視点においてとても大切だと実感しています。
子どもの気持ちは白黒つけることができないような様々な状態や今回お伝えしてきた相反する気持ちをもっています。
両義性とは、そもそも人間には相反する心理機構を持っているものであり、アンビヴァレンス(両価性)とは、こうした相反する気持ちが同時に共存している心理状態のことを言いました。
例えば、保育者に甘えたいといった気持ちがある一方で、うまく甘えることができない(甘えたくない)といったアンビヴァレンスな気持ちを感じる場面が療育現場ではよくあります。
また、自分の気持ちを伝えたい・わかってもらいたいが、その一方で、話したくない・教えたくないなどのアンビヴァレンスな気持ちを感じる場面に出会うこともよくあります。
こうした心理状態は療育者や保育者との関係性によっても変化してきます。
つまり、子どもの気持ちの受け手との関係性や受け手の感性なども大きく影響してきます。
受け手がこうした子どもたちのアンビヴァレンスな心理状態を理解していくことは、子どもたちの気持ちを丁寧に受け止めていくことでもあり、こうした関わりは子どもたちのその後の心の成長においてとても大切なことだと思います。
実際に、著者の経験を振り返って見ても、こうしたアンビヴァレンス(両価性)を理解し(しようとする姿勢を持ちながら)、丁寧に子どもたちの気持ちの寄り添っていくことで、行動や認知面での成長だけではなく、心の成長を感じた経験も多くあったように思います。
私自身、まだまだ未熟であり、今回お伝えしてきた、アンビヴァレンス(両価性)や両義性の概念がまだはっきりと理解しているわけではありませんが、今後も現場での実践を中心に多くの学びをしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
小林隆児(2015)あまのじゃくと精神療法:「甘え」理論と関係の病理.弘文堂.