私たちは普段の生活で概念という言葉を聞いたり使ったりすることがあるかと思いますが、そもそも概念をどのように獲得してきたのかを思い出すことは難しいかと思います。
心理学では概念の獲得(理解)を「概念形成」といいます。子どもは概念を獲得(理解)していくことで外の世界の理解をさらに広げていきます。
今回は、子どもが概念を理解する時期について太田ステージを参考に説明していきながら、著者が療育現場で概念形成の意味を感じた体験なども併せてお伝えしていきます。
今回参照する資料は「立松英子(2009)発達支援と教材教具 子どもに学ぶ学習の系統性.ジアース教育新社.」「立松英子(2011)発達支援と教材教具Ⅱ 子どもに学ぶ行動の理由.ジアース教育新社.」です。
概念形成とは
そもそも「概念形成」とは?
という所からですが、私たちは外の世界を理解するときに様々な基準をもって理解しています。
例えば、色、形、大きさなどその物の特徴を表す要素が複数ある場合、ある要素や基準に応じて分類分けを自然と行っています。
つまり、「概念形成」とは基準に合わせて仲間分けをすること、さらに、それに言葉をつけて仲間を作ることです。
例えば、「赤い傘」という仲間を作ることは概念形成がされた人にとっては仲間分けが可能ということです。
概念形成について太田ステージから考える
こうした「概念形成」の入り口でもある時期は、太田ステージでいう所のStageⅢ‐2(概念形成の芽生え)になります(太田ステージについて詳しくは「太田ステージから障害児の発達を考える」に記載しています
)。
ちなみに、StageⅢ‐2は、定型児の発達でいう3~4歳のはじめに相当します。
StageⅢ‐2(概念形成の芽生え)は、言葉とイメージの世界といわれており、言葉とイメージ(想像力)によって、環境に合わせて考えることが可能になってくる時期になります。
StageⅢ‐1は「見てわかる世界」でしたが、StageⅢ‐2以降では目の前になくてもわかる「言葉とイメージの世界」に移行します。
言葉とイメージを操作することで、基準を変えて思考や行動ができるようになります。ただ、この時期に入ったばかりだと、まだまだ以前の習慣による行動が多いため、柔軟に状況に応じて考えや行動を変えることはまだ難しいとされています。
著者のコメント
私の療育現場で概念形成について、その理解が進んだと感じるケースもあります。その気づきは思考が柔軟になったという印象からきました。
以前そのお子さんは、自分が想定していたことが起きると、ぐずり始め、場合によってはパニックになることもありました。ですが、徐々に、変更にも慣れ、想定外ことが起こっても大人が声をかけると理解できる様子が増えてきました。また、自分から“○○する”と状況に応じて考えや行動を自発的に変える様子も出てきました。
遊びにも変化がありました。イメージを形にする制作遊びのバリエーションが増え、以前と比べて大人が手伝う場面が減ったこと、自分で考えて作れるようになったなど、遊びの中でも認知の発達が進んだ様子をはっきりと感じることができました。
また、遊びの中で印象的だった事が、その子の言葉にも見られます。それは、“これは大きいやつ”、“これは赤いやつ”などカテゴリー分けする言葉が行為に伴って見られたことです。私はその時とっさいに「概念」のことを想起しました!
このように、言葉やイメージの世界が広がると、思考や行動が柔軟になり様々な環境や状況に合わせる力がついてくるのだと実感します。
私自身、今後も子どもたちの成長をじっくりと支えながら、その成長の意味を捉えられる目を養っていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
立松英子(2009)発達支援と教材教具 子どもに学ぶ学習の系統性.ジアース教育新社.
立松英子(2011)発達支援と教材教具Ⅱ 子どもに学ぶ行動の理由.ジアース教育新社.