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【大人の発達障害の理解が難しい理由】臨床発達心理士である著者の見解

投稿日:2020年8月31日 更新日:

 

最近、大人の発達障害関連の書籍やニュースなどが増えています。

その中で、テレビやネットでの当事者出演、診断名の公表など、ここ10数年で大人の発達障害が話題になることは多くなっています。

私はこれまで福祉や教育関係の現場で多くの当事者との関わりがあり、その中で、大人の発達障害への理解がまだまだ難しいのという現状認識があります。

 

今回は、大人の発達障害の理解が難しい理由について、私の現場での経験や様々な書籍から考えられる要因についてお伝えしていこうと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

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【大人の発達障害の理解が難しい理由】臨床発達心理士である著者の見解

以下、5つの視点からお伝えします。

①前例が少ない

まだまだ途上という意味で、過去と比べると大人の発達障害が取り上げられることは増えており、様々な理解や支援も進んではきているものの、子どもに比べて理解や対応の面では遅れを取っているのが現状かと思います。

②子ども時代の情報が少なく状態像の把握が難しい

発達障害は、先天的な障害であるため、幼少期に様々な特性が目立ってきます。ですが、大人になってから、子ども時代の記憶を想起することは難しく、行動特性上、過去と現在においての繋がりや関連性などを見出すことが難しいのも要因としてあります。

③成長に伴い個人の適応方略や経験に違いがでる

大人になるまでに、様々な環境で自分なりの適応方略を学習しており、その結果、個人差が非常に大きくなると思います。ですので、例えば、同じASD特性のある方でも、社会経験の量や質などで状態像が異なるため、成長に伴い、状態像が多様化することが考えられます。

中には、自分の特性を社会の中で発揮することで、特性を力に変えている方もいます。

④障害の併存

発達障害は、他の障害と併存する割合が高いとされています。例えば、ASD+ADHDなどといった感じです。また、どちらか一方の特性が顕著で、もう片方の特性が若干見られるなど(例えば:ASD特性強い+ADHD特性弱い)、併存によりその人の状態像が変わってきます。

また、境界知能やグレーゾーンなど、知的な能力も加わると、さらに状態像が多様化してくると思います。

⑤二次障害がある

元々もっている発達特性に加えて、外部のストレス要因などが長期にわたって加わることで二次的な症状が出ているケースも多くあります。そうなると、発達特性+精神疾患という理解が必要になってきます。

また、最近話題に上がることが多くなっている愛着障害との見極めも障害理解を難しくさせている要因かと思います。

 

 


以上、大人の発達障害の理解が難しい要因について五つの視点から見てきました。

私の現場など周囲でも様々なケースが見られます。彼らと関わって感じることは、理解することの難しさと奥深さです。

理解を進めていくためには、既存の様々な基準や個人の価値観などを一度脇において、真摯に彼らの声に耳を傾ける必要があります。発達障害の専門家が少ない中、当事者の声に少しでも耳を傾けていく姿勢はとても大切だと思います。

今後、様々なケースをどのように理解すればいいかについて、上記にあげた視点などをさらに深堀りしていき、障害への理解を深めていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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