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学童期 愛着

学童期(児童期)における愛着の特徴について

投稿日:2022年9月28日 更新日:

愛着とは特定の養育者との情緒的な絆のことをいいます。

乳幼児期に結んだ絆は、その後、愛着スタイルといった対人様式の基盤になります。

そして、愛着は生涯にわたり影響する大切なものとなります。

 

それでは、学童期(児童期)において、愛着にはどのような特徴があるのでしょうか?

 

学童期(児童期)とは小学校の時期(1年生~6年生:6・7歳~12歳)にあたります。

この時期は、ある程度、特定の養育者との絆が完成され、学校環境といった養育者から離れる頻度も増し、学校の友人関係など対人関係も拡大する時期です。

 

著者は現在、放課後等デイサービスで療育をしており、まさに、この学童期(児童期)の子どもたちと関わっています。

 

そこで、今回は、学童期(児童期)における愛着の特徴についてどのようなものがあるのかをお伝えしていきます。

 

 

今回参照する資料は「遠藤和彦(編)(2021)入門アタッチメント理論:臨床・実践への架け橋.日本評論社.」です。

 

 

学童期(児童期)における愛着の特徴について

著書の中では4つの特徴を取り上げています(著者が要約)。

 

1.物理的近接性よりも利用可能性の重視

2.愛着対象はあくまでも親

3.安全・安心の基地として親の存在

4.親と子どもの関係はスーパービジョン・パートナーシップ

 

 


以下、それぞれについて見ていきます。

 

1.物理的近接性よりも利用可能性の重視

以下、著書を引用しながら見ていきます。

1つ目は、児童期は、感情の崩れを立て直し安心感を得るうえで、物理的近接性(proximity)よりも利用可能性(availability)が重視される

乳幼児期の愛着(アタッチメント)関係は、乳児が何か不安なことがあった際に、養育者にくっつく(アタッチメント)することで、不安感が軽減・回復されます。

これが、物理的近接性です。

それが、発達に伴い、3歳前後になると、内的作業モデルの発達により、短い時間であれば養育者と離れて過ごすことが可能となります。

これは、頭の中でイメージとして安心できる養育者がいるという認識がでてくるためだと言われています。

まさに、「心の中に安心できる人がいる」といった感じです。

 

関連記事:「愛着で重要な内的作業モデルについて【心の中に大切な人がいることの重要性】

 

学童期(児童期)には、物理的近接性ではなく、必要な時に養育者を求めようとする利用可能性としての関係が目立ってきます。

例えば、何か学校で困ったことがあれば、アドバイスを求めに養育者に相談するなどがあります。

 

2.愛着対象はあくまでも親

以下、著書を引用しながら見ていきます。

2つ目は、児童期の主たるアタッチメント対象は、仲間(友だち)ではなく、あくまでも親(あるいは親代わりの人)である。

学童期(児童期)には、友だち関係が拡大していきます。

そのため、日々の生活の中で、友だちと過ごす時間(勉強や遊びを中心として)は非常に増えていきます。

しかし、この時期の愛着対象はあくまでも親です。

これは、何か困ったこと、不安なこと(例えば友人関係など)があった際に、安心できる・自分を守ってくれるという愛着対象として親が中心という意味です。

また、この時期は、二次的愛着対象として、親以外の教師や祖父母などとの関わりもあります。

 

3.安全・安心の基地として親の存在

以下、著書を引用しながら見ていきます。

3つ目は、児童期におけるアタッチメントを考えるうえで鍵となる概念は、安全な避難所や安心の基地である、ということです。(両者をまとめて「安心の基地現象」と呼びます)。

愛着で大切な機能に、安全基地機能・安心基地機能、といったものがあります。

 

関連記事:「愛着形成には何が必要か?:3つの基地機能から考える

 

安全・安心が満たされることで、何かに挑戦したり、活動範囲を拡張させるなど、探索機能が活性化します。

学校といった家庭以外の場で、子どもが伸び伸びと過ごすこと、新しい友人関係を築いたり、学業やスポーツに挑戦・集中するには、こうした探索活動から帰ってきたときに安全・安心して過ごせる場所が必要です。

養育者(両親など)は、こうした安全・安心の避難所の機能を学童期には強く発揮します。

 

4.親と子どもの関係はスーパービジョン・パートナーシップ

以下、著書を引用しながら見ていきます。

4つ目は、児童期においては、安心の基地現象の形態は共同制御(coregulation)となり、アタッチメント関係はスーパービジョン・パートナーシップ(supervison partnership)になる

著書の中では、スーパービジョン・パートナーシップの考えをスポーツに例えています。

子どもがプレイヤーであり、親が監督・指導者などといったスーパーバイザーといったイメージです。

学童期(児童期)には、子どもが自発的にやりたいことを決め、その中で、自分で責任を取る場面もでてきます。

親は、こうした子どもに対して、監督責任を持ちながら、あくまでも親の監督下で子どもが行動する(共同制御)する関係が求められます。

 

 


以上、学童期(児童期)における愛着の特徴について見てきました。

学童期(児童期)にも、親との愛着が中心となり変わらず大切になりますが、愛着関係の質が変わってくると言えます。

愛着は生涯において大切な概念です。

そのため、今回見てきたように様々なライフステージによっても特徴が異なります。

私自身、非常に奥の深い愛着について、今後も学び続けていきながら、現場での実践に活かしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

遠藤和彦(編)(2021)入門アタッチメント理論:臨床・実践への架け橋.日本評論社.

-学童期, 愛着

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