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ワーキングメモリ 低い 特徴

ワーキングメモリが低い人の特徴について考える

投稿日:2022年12月30日 更新日:

ワーキングメモリとは、作業記憶(作動記憶)とも言われ、情報を一時的に記憶に保持し操作するといった、いわゆる〝脳のメモ帳“のことを言います。

 

関連記事:「ワーキングメモリについて

 

ワーキングメモリが苦手だと、生活や仕事、学習場面など様々な所に影響がでます。

 

それでは、ワーキングメモリが低い人(苦手な人)にはどのような特徴があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、ワーキングメモリが低い人の特徴について、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岡田尊司(2017)子どものための発達トレーニング.PHP新書.」です。

 

 

ワーキングメモリが低い人の特徴

以下、著書を引用しながら見ていきいます。

ワーキングメモリーが弱いと、目の前の一つか二つの情報だけから判断して、短絡的な反応をし、まんまとワナにひっかかってしまいます。

 


以下、2つの例から見ていきましょう。

 

例1:学校の授業

学校の国語の授業で物語を全員で黙読して話の内容をくみ取るという取り組みをしていたといます。

ワーキングメモリが強い人は、物語の内容を読み進めても、ある程度、記憶に物語の筋が残り続けるかと思います。

つまり、読んだ文章をある程度記憶に保持し、その後の内容理解に付け加え全体像をイメージしていくことができます。

ワーキングメモリは、一時的に情報を保持しそれを操作する力のため、物語など文章理解において非常に大切な能力となります。

ワーキングメモリが弱いと、読んだ内容が次から次へと抜け落ちてしまい、最終的には全体理解とはかけ離れた部分的・断片的理解となってしまう可能性がでることが考えられます。

 

例2:仕事

仕事では様々な情報が下りてきて、それらを整理して次へのアクションを考えていくことが要求されます。

例えば、Aさんがデスクに座って今日の予定を立てていたとしましょう。

そこに、相談先からメールでの連絡が数件あった、次に、職場の人から口頭での相談があった、という状況において、これらの情報を記憶に保持しながら整理すべき内容が多く発生します。

つまり、メールの内容を見て(理解し)いつまで・どのように返答するのか、職場の人からの相談内容を理解し記憶に保持し整理していくこと、など多くのワーキングメモリを活用する状況がでてきます。

さらに、相談前に考えていた予定の計画を思い出し整理し直すという作業も発生します。

この中で、メールの内容などは、視覚情報として残ります。

視覚情報の理解(視覚的ワーキングメモリ)が得意な人は、こうした目で見た情報整理・理解ははやく進みますが、苦手であると、メール内容の理解や整理などに時間を要します。

また、口頭での相談は、録音やメモをとるなどしていないと情報として残りません。

聴覚情報の理解(聴覚的ワーキングメモリ)が苦手であると、記憶として抜け落ちてしまう点が非常に多くなってしまします。

そのため、ワーキングメモリが低いと、業務の一部にフォーカスしてしまい、抜け漏れや作業の遅さなどが目立ってくることが考えられます。

 

 

ワーキングメモリの低さは学習障害と関連する

引き続き著書を引用しながら見ていきます。

ワーキングメモリー全般が弱い場合には、知識を獲得することが困難になりやすく、応用問題などは特に苦手です。学習障害の子では、ワーキングメモリーの低下を伴うことが多いと言えます。

 

著書の内容から、ワーキングメモリの低さと学習障害との関連性は強いとされ、ワーキングメモリが弱いと、知識を学ぶことが困難になってくるという記載があります。

学習障害は、文字を音に変換する作業の困難さ、そして、意味理解の難しさなどが特徴としてあります。

また、読みが苦手であると書きにも影響が出ます。

読んだ内容が頭に残りにくいと、例えば、板書をする際にも、一文字一文字を書き写す、単語という単位を書き写すなど、非常に時間を要します。

こうした学習の難しさにもまた、ワーキングメモリの低さ(苦手さ)が関連(ワーキングメモリの低さ⇔学習困難)しているということになります。

 

 

ワーキングメモリは鍛えることができる!

かつての著者はワーキングメモリが非常に低かったため、文書理解や音声理解に非常に苦しんでいた時期があります。

しかし、ワーキングメモリは鍛えることができます!それはもちろん大人になってからもです!

 

関連する記事を以下にいくつか記載致します。

 

関連記事:「ワーキングメモリを鍛えるためには【発達障害児支援の現場から考える】

関連記事:「ワーキングメモリを鍛えるための実践方法について振り返る

 

 


以上、ワーキングメモリが低い人の特徴にいて考えるについて見てきました。

ワーキングメモリは、学習全般を支えるという意味でここ最近注目を集めています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後の療育現場で関わるワーキングメモリに苦手さを持つ子どもたちに、〝記憶“といく視点からどのようなサポートができるのかを考えていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

岡田尊司(2017)子どものための発達トレーニング.PHP新書.

 


-ワーキングメモリ, 低い, 特徴

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