知能は正常であるにもかかわらず、読み書きが苦手な人たちがいます。
聞いたり話したりする上では特に問題がないため、学校の勉強などで怠けている、努力不足などと思われることもあります。
こうした読み書きといった部分に困難さがある障害のことを〝ディスレクシア(読み書き障害)“といいます。
著名人の中にも多く、トムクルーズやスピルバーグ監督なども〝ディスレクシア“と言われています。
それでは、ディスレクシアとは具体的に、どのような障害だと考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、ディスレクシアとは何かについて見て行きながら、読み書きに困難のある人たちについて理解を深めていきたいと思います。
今回参考にする資料は、「河野俊寛(2012)読み書き障害のある子どもへのサポートQ&A.読書工房.」「宮本信也(編)(2019)学習障害のある子どもを支援する.日本評論社.」を参照していきたいと思います。
ディスレクシアについて
冒頭で挙げた、知能は正常ではあるが、努力しても文字の習得が困難な障害を、発達性読み書き障害or発達性ディスレクシア(developmental dyslexia)と言います。
読み書き障害は、学習障害の中の「読む」「書く」という特定の能力の障害であり、学習障害の約8割を占めると考えられています。
発達性ディスレクシア(developmental dyslexia)は、先天性であると考えられており、特に就学児前後に明らかになる障害です。
発達性ディスレクシアは、「読み」の障害あれば「書き」の障害も見られるため、「発達性読み書き障害」と訳されることが多いです。
単に「ディスレクシア」と訳されることもあり、後天性の大脳損傷後に生じる成人や小児のディスレクシアと区別するために「発達性」という表記を加えることが望ましいとされています。
次に、発達性ディスレクシアの定義について、「発達性ディスレクシア研究会,2016」を引用したいと思います。
発達性ディスレクシアは、神経生物学的原因による障害である。
その基本的特徴は、文字(列)の音韻(列)化や音韻(列)に対応する文字(列)の想起における正確性や流暢性の困難さである。
こうした困難さは、音韻能力や視覚認知能力などの障害によるものであり、年齢や全般的知能の水準からは予測できないことがある。聴覚や視覚などの感覚器の障害や環境要因が直接の原因とはならない。
以上が、発達性ディスレクシアの定義になります。
次に、以上のディスレクシアの定義の補足説明をしていきます。
文字の音韻化とは、例えば、文章を見て声に出して読み上げる場合や、黙読する場合など、文字を音韻に変えることを言います。
こうした文字を音韻に変換することを「デコーディング(decoding)」と言います。
一方、音韻に対応する文字の想起とは、例えば、頭の中で、文字をイメージして文章に書き起こすなど、音韻を文字に変えることを言います。
こうした音韻を文字に変換することを「エンコーディング(encoding)」と言います。
こうした「デコーディング」や「エンコーディング」が正確にかつ流暢にできないことがディスレクシアの一つの判断基準になります。
その他、音韻能力とは、例えば、たいこ→た/い/こ、といった感じに、ことばを音の小さい単位に分解できるなど、ことばと音の関係を理解する能力のことを言います。
視覚認知能力とは、例えば、ある図形(〇)を見て、頭の中で「〇とはこういう形だ」とわかる能力のことを言います。
ディスレクシアの評価
ディスレクシアの有無を評価するためには、
知能検査に加え、読み、書きの習得度、および環境要因を排除するための文字習得に関連する要素的な認知検査などを組み合わせて評価を行う必要があるとされています。
一方で、日本ではまだ発達性ディスレクシアの評価方法が確立されていないのが現状です。
著者のコメント
評価方法に限らず、発達性ディスレクシアなど学習障害への理解そのものがまだまだ日本社会の中で認識されていないと感じます。
私がこれまで関わってきた発達支援の現場においても、自閉症スペクトラム障害やADHDなどの理解は進んできている印象がありますが(部分的にですが)、ディスレクシアなど学習障害に関しては、あまり話題に上がることはありません。
学習障害系の本を読むと思いのほか自分の身近でも読み書きに困難さを抱えている人たちがいるのではないかと感じることが少なくありません。
また、過去を振り返ってみても、クラスに数人はいたのではないかと感じ、当時の学校は彼らに適切な教育を行っていたのか疑問に感じることもよくあります。
今後、学習障害の中核とされている発達性ディスレクシアの理解が進むことで、一人ひとりにあった学習方法や学習環境などが整備されていくことを期待したいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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宮本信也(編)(2019)学習障害のある子どもを支援する.日本評論社.
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