依存症(アディクション)という言葉を最近よく聞くようになりました。
例えば、ギャンブル依存、ゲーム依存、ネット依存、アルコール依存など、依存の対象は様々です。
著者は小学生を対象に放課後等デイサービスで療育をしています。
その中で、ゲーム依存といった言葉を職業柄よく聞くようになりました。
ゲーム依存を含め、依存症が生じる原因や理由は様々かと思います。
それでは、その中で、ゲーム依存の背景にはどのような要因が考えられるのでしょうか?
そこで、今回は、ゲーム依存について、臨床発達心理士である著者の身近でも多く話題に上がる愛着障害の関連についてお伝えしていきます。
今回参照する資料は「米澤好史(2022)愛着障害は何歳からでも必ず修復できる.合同出版.」です。
ゲーム依存と愛着障害の関係について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ネガティブな感情をどうしても処理できない場合は、何かに依存して紛らわそうとします。これが依存症(アディクション)を引き起こします。
ゲームから離れられないというゲーム依存の状態が生じていることは、探索基地が機能していない、すなわち愛着の問題があることを示しています。
著書の内容では、依存症(アディクション)は、ネガティブ感情の処理・調整がうまく行かないことで起こるとしてます。
そして、依存症の一つであるゲーム依存の背景には、愛着の問題(愛着障害)があるケースもあり、愛着機能の中で大切とされている「探索基地」機能がうまく機能していないからだとしています。
「探索基地」とは、子どもが母親など特定の愛着対象に何か行動を起こす際にやってもいいかを確認したり、行動後に行ったことを報告するなどの機能があります。
つまり、ゲーム依存とは、「探索基地」がうまく働いていないがために、重要な他者にゲームをやっていいか?の確認行動や、楽しかったゲーム内容を報告するといったことが見られない状態というわけです。
そのため、満たされない心の欠損をうめるために、ひたすらゲームに没頭するという状態が生まれるというわけです。
仮に、特定の他者との重要な愛着関係が形成されていれば、「探索基地」機能がうまく働くことで、ゲームをやっていいかの確認や、ゲーム後にゲームについての話をしようとします。
よく母親が子どもに「宿題が終わったら○○時までやっていいよ!」と言ったり、子どもが「今日は宿題がないからすぐにゲームやっていい?」、「今日のゲームは○○まで進んだよ!○○が楽しかった!」など、確認や報告が喧嘩にならずに自然な親子の会話の中で見られるなどが例としてあります。
「探索基地」機能は、上記の確認や報告といった行動により、愛情が満たされている(良好な関係ができている)のかをはかる一つの指標となるわけです。
このように、ゲーム依存はその背景となるところを抑えていくことがとても大切です。
ゲームしか生活の中で楽しみがなければ、これもまたゲーム依存に繋がる可能が高まります。
この場合には、生活の中で他の楽しみを見つけていくことがとても大切です。
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関連記事:「発達障害とSNSやゲーム依存について-療育経験を通して考える-」
以上、ゲーム依存と愛着障害の関係について見てきました。
著者も小学生の頃はゲームが大好きでした。
よく兄弟や友人とゲームを楽しんだことを覚えています。
その中で、一人でゲームに没頭していたというよりは、友人や兄弟と一緒にゲームの話しをしながら楽しんで遊んでいたように思います。
また、ゲームをする前に親にゲームをやっていいのかの確認をしたり、ゲームをやりすぎている場合には、親の指摘により直ぐにゲームを止めていたように思います。
また、ゲーム内容についても親によく話をしていたように思いますが、著者の両親はゲーム情報には疎かったため、おそらく情報よりも楽しいといった感覚を共有していたように思います(それが大切です!)。
こうして過去を振り返ってみると、重要な他者との関係が良好であることで、自分の行動がうまく調整されていたのだと感じます。
愛着が安定していることは、心のエネルギーの充電も早く、様々なことに意欲やモチベーションも湧くのだと思います。
ゲーム自体は決して悪いものではありませんが、依存レベルになるなど生活に支障がでないために、愛着からのアプローチや他の興味関心を見つける多くの経験が必要かと思います。
私自身、まだまだ未熟ですが、今後も療育の現場から、子どもたちのよい安全基地になれるように、そして、様々な体験を共有していけるように、日々の実践を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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米澤好史(2022)愛着障害は何歳からでも必ず修復できる.合同出版.