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なぜ今愛着障害が増えているのか【愛着形成を阻害するものとは?】

投稿日:2022年10月20日 更新日:

愛着に問題を抱えている人の割合が増えていると言われています。

重篤な愛着障害の例と言えば、虐待ですが、愛着障害といっても様々なタイプや症状の強弱は人それぞれ多様です。

もちろん、愛着の問題が取り上げられるようになった背景には、愛着研究の増加、大人の愛着障害への理解、発達障害の背景に実は愛着障害あった、あるいは混在しているなど、様々な背景要因があるとかと思います。

 

それでは、現代社会においてなぜ今愛着障害が増えているのでしょうか?

 

そこで今回は、なぜ今愛着障害が増えているかについて、愛着形成を阻害する要因を踏まえて考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「米澤好史(2018)やさしくわかる!愛着障害:理解を深め、支援の基本を押さえる.ほんの森出版.」です。

 

 

なぜ今愛着障害が増えているのか【愛着形成を阻害するものとは?】

それでは、著書を引用しながら見ていきます。

今、愛着の問題が増えているのは、「親子の愛着形成を妨げる刺激が多すぎる」という、現代の家庭環境の問題でもあると筆者は考えています。

 

著書にあるように、現代社会はテレビや携帯、タブレットなどの刺激的(情報過多)な電子機器に溢れています。

つまり、物や情報に溢れているということです。

ゲームやネットのコンテンツも一昔よりはるかに充実してきています。

一昔前まで、こうした子どもたちの刺激欲しさを直ぐに満たしてくれるものは少なかったため、子どもは自分の欲求を満たすために自分から周囲に働きかけようとしていました。

つまり、昔は人に関わろうとする動機付けが高まる環境にいたということになります。

こうした社会環境の変化が、昔と現代との違いにあり、著書内ではこうした環境の変化が愛着形成を阻害する要因となり、愛着障害の増加に繋がっていると考えています。

 

この点について、さらに著書を引用します。

特に、今のような物があふれた時代に子育て中の親御さんにとってハンディなのは、(中略)こどもは、親に求めたい気持ちを他のことで紛らわせることができてしまうことなのです。以前は、こどもにとって親刺激に勝る刺激は家庭に少なく、子どもは親に構ってもらえなかったら待っているしかありませんでした。

 

以上、社会環境の変化から愛着障害の増加の要因を考えてきました。

 

 


ここからは、なぜこうした社会環境だと愛着形成が阻害されるのかについて深堀していきます。

 

愛着形成において大切なことは、「安全基地」、「安心基地」、「探索基地」といった三つの機能が特定の養育者との中でうまく働いていることです。

 

関連記事:「愛着形成には何が必要か?:3つの基地機能から考える

 

例えば、子どもが何か不安な気持ちになり、その不安を和らげようと特定の養育者を求めようとするも、その養育者がその子が好きなスマホ動画を見せて落ち着かせようとする。

例えば、子どもが特定の養育者から離れて、一人おもちゃで遊んでおり、その中で楽しかったことを養育者に共有しようと戻ってくるも、「テレビを見ていなさい」などと突き放されてしまい、その結果、その後、養育者を求める頻度が減り、テレビなど他の刺激でその気持ちを紛らわそうとする。

 

こうした内容は、多くのご家庭であるのではないでしょうか?

 

もちろん、子どもを見る親は子育て以外にも様々することがあります。

ですので、子どもからの発信すべてに応答することは難しいでしょう。

大切なことは、量ではなく質です。

子どもからの発信をしっかりと受け止めたという質の濃い時間が短くとも必要だということです。

こうした経験が短い時間でも日々の生活の中にあるとないかで愛着形成が安定か不安定かに影響していきます。

そして、現代社会は電子機器など子どもたちを夢中にさせる刺激に溢れています。

こうした刺激も時には必要かもしれませんが、愛着形成の根底は人とモノで形成されるわけではなく、人と人との情緒的な交流によってのみ形成されます。

そのため、著書にあるように、特定の養育者が子どもの「安全基地」、「安心基地」、「探索基地」機能を満たすような関わりが大切になっていきます。

 

関連記事:「愛着(愛着形成)で大切なこと【関わる時間よりも質が重要】

関連記事:「愛着障害への支援のゴールとは【「探索基地」機能が持つ2つの重要性から考える】

 

 


以上、なぜ今愛着障害が増えているのか【愛着形成を阻害するものとは?】について見てきました。

愛着障害は、生涯にわたりその人の人生に影響し続けるものです。

よって、関わる大人たちは、愛着障害の早期発見・早期対応が必要になります。

そのために、大切なことは、今回取り上げた三つの愛着形成で大切な機能を抑えた関わりになります。

そして、電子化・情報化が進み、様々な刺激が増加している現代社会において、人と密に関わる時間を日々の生活の中で作っていくことが重要だと感じます。

私自身、まだまだ未熟ですが、今後も療育現場で愛着の視点も取り入れながら、子どもたちにより良い支援ができるように日々の実践を大切にしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

米澤好史(2018)やさしくわかる!愛着障害:理解を深め、支援の基本を押さえる.ほんの森出版.

-増えている, 愛着障害

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