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【CHC理論とは?】知能検査・認知検査と関連性の強い知能理論の重要性について

投稿日:2023年1月16日 更新日:

知能検査・認知検査には、知能理論からの強い影響を受けています。

知能検査で代表的なものには、ウェクスラー式知能検査があります。

ウェクスラー式知能検査において、関連性の強い知能理論に〝CHC理論″があります。

知能検査・認知検査と関連性の強い知能理論への知識を抑えておくことは、その検査は何を測定しているのか?その検査の限界は何か?という検査への深い理解へと繋がります。

 

それでは、知能検査・認知検査と関連性の強い知能理論となる〝CHC理論″とは一体どのような特徴があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、CHC理論の特徴について説明していきながら、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら知能検査・認知検査と関連性の強い知能理論の重要性について考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「上野一彦・松田修・小林玄・木下智子(2015)日本版 WISC-Ⅳによる発達障害のアセスメント 代表的な指標パターンの解釈と事例紹介.日本文化科学社.」「小野純平・小林玄・原伸生・東原文子・星井純子(編)(2017)日本版K-ABC-Ⅱによる解釈の進め方と実践事例.丸善出版.」です。


 

 

CHC理論とは?

以下、著書を引用(上野ら,(2015))しながら見ていきます。

今日の知能理論として最も注目を集め、また、ウェクスラー検査にとっても重要な関係にあるのは、キャッテル(Cattell,R,B.)とホーン(Horn,J.L.)、そしてキャロル(Carroll,J.B.)の3人の名前の頭文字を冠したCHC(Cattell-Horn-Carroll)理論であろう。

 

CHC理論は、今日、知能理論界においては一つのスタンダードとしての位置を占めているといってもよく、CHC理論を背景とする検査類の開発も盛んである。

 

著書の内容から、ウェクスラー式知能検査といった知能検査を中心に、CHC理論と関連性の強い、そして、CHC理論が背景となっている知能検査・認知検査は多くあることがわかります。

そして、CHC理論は、知能理論界においては、スタンダードな位置づけにあるということも記載されています。

 

著書には、CHC理論の特徴として、3層構造から成り立っているとの記載があります。

最も上層部に位置するのは、第3層:一般知能、中部には、第2層:広範能力、最下層には、第3層:限定能力、があります。

第3層の一般知能g因子は、スピアマンが提唱したものとほぼ同義(知的な課題に影響する全ての因子)とされており、第2層は、8つの広範的能力から構成されており、第1層は、約70の特定の領域に関する能力で構成されています。

 

 

知能検査・認知検査と関連性の強い知能理論の重要性

著者は、臨床発達心理士であるため、これまで知能検査や認知検査の講義や研修を受けてきました。

その中には、知能検査や認知検査といった検査実施の方法や解釈の学びだけではなく、背景となる知能理論の学びもありました。

知能検査で代表的なものには、前述した〝ウェクスラー式知能検査″があります。

ウェクスラー式知能検査には様々な検査内容がありますが、様々な検査内容が多様な知能とどのような対応関係にあるのかが、〝CHC理論″との関係から記載さています。

また、認知検査で代表的なものには、〝K-ABC″があります。

K-ABCには、2つの理論がもとになっており、一つは〝カウフマンモデル″、もう一つが〝CHCモデル″となっています。

ここでも、〝CHC理論″が活用されています。

さらに、K-ABCでは、〝PASS理論″といった情報処理過程の理論も活用されています。

 

関連記事:「【PASS理論とは?】継次処理と同時処理の認知処理スタイルについて考える

 

このように、日本でも有名でよく活用されるウェクスラー式知能検査(WISC)とK-ABCの両方にCHC理論が活用されているということになります。

 

ここで重要になるのが、CHC理論にはどのような構成要素が含まれているのか?という理解です。

例えば、CHC理論には、PASS理論に含まれている情報処理過程(継次処理・同時処理など)や実行機能などは含まれていません。また、社会性に関連する対人的知能もまた含まれていません(多重知能理論に含まれる)。

このように、様々な知能に関連する理論の中には、どのような構成要素があるのかを知ることで、検査で測ることができるものとそうでないものへの理解を深めることができるのだと思います。

少し専門的な内容にもなりますが、誤った解釈や理解に繋がらないために、背景となる理論を知っておくこともまた重要だと思います。

 

 


以上、【CHC理論とは?】知能検査・認知検査と関連性の強い知能理論の重要性について見てきました。

知能の定義やその内容は非常に多義にわたり難しくもあります。

一方で、様々な検査を通じて検査から得られることを知能理論も含めて理解していくことで知能検査・認知検査への理解がさらに深まるのだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も理論を抑えていきながら、検査についても学びを深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

上野一彦・松田修・小林玄・木下智子(2015)日本版 WISC-Ⅳによる発達障害のアセスメント 代表的な指標パターンの解釈と事例紹介.日本文化科学社.

小野純平・小林玄・原伸生・東原文子・星井純子(編)(2017)日本版K-ABC-Ⅱによる解釈の進め方と実践事例.丸善出版.


-CHC理論, 知能検査

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