ADHD(注意欠如多動性障害)とは、不注意・多動性・衝動性を主な特徴とした神経発達障害の一つです。
ADHDへの理解は、ここ近年、目覚ましく進んでいます。
一方で、ADHDの発見が難しいケースや〝発見が遅れるケース″もまた多く存在しています。
それでは、何故、ADHDの発見が遅れるのでしょうか?
そこで、今回は、ADHDの発見が遅れる理由について、3つの要因から考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤俊徳(2020)ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”.大和出版.」です。
【ADHDの発見が遅れる理由】3つの要因から考える
著書の中では、ADHDの発見が遅れるということについて、〝隠れたADHD脳″という言葉を使っています。
ADHDの発見が遅れる理由は、次の3つの要因です(以下、著書引用)。
①不注意型ADHD(ADD)
②ADHDコンプレックス(併存疾患型ADHD)
③ADHDのグレーゾーンとみなされるケース
それでは、次に以上の3つについてそれぞれ見ていきます。
①不注意型ADHD(ADD)
ADHDには、多動性・衝動性優位型と不注意優位型があります。
ADDとは、不注意優位型のことを言います。
一般的に、ADHDというと、多動で落ち着きのないイメージを持たれがちですが、ADDのように不注意優位型であると、〝穏やか″〝おとなしい″人も多いため、周囲からすると気づきにくいこともあります。
また、次の点からの指摘もあります(以下、著書引用)。
特に女性は多動性がない場合が多く、見逃されやすい傾向があります。
このように、男女間でも特徴に違いがあり、女性の場合にはさらに特徴が目立ちにくい傾向があります。
②ADHDコンプレックス(併存疾患型ADHD)
以下、著書を引用して見ていきます。
現在では、ADHDは単独疾患である場合は少なく、約8割以上が精神疾患や依存症など、併存疾患を持っていると言われています。これらの併存疾患型ADHDを「ADHDコンプレックス」と呼んでいます。
著書にあるように、ADHDコンプレックスがあると、ADHD以外の他の症状が複雑に絡んでいるため、症状がわかりにくくなってしまいます。
例えば、ASDやSLD、DCDなどの他の神経発達障害や不安障害やうつ病、反抗挑戦性障害や素行障害、睡眠障害、依存症(ギャンブル依存、アルコール依存、ゲーム依存など)など様々な症状があります。
ADHDは、他の発達障害との併存率が高いことや、二次障害としても様々な症状が重なることがあるため、症状の特定が容易でない場合があるということです。
③ADHDのグレーゾーンとみなされるケース
〝グレーゾーン″という言葉もここ近年社会の中で浸透してきました。
一方で、〝グレーゾーン″という言葉の曖昧さが、人によっては逆に理解や支援を受けにくい状態になってしまう危険性があります。
例えば、ADHDの特性が顕著ではないが、傾向としては該当する部分が何点か見られるという状態においては診断をつけることができずに、理解や支援に繋がらないということも生じてしまうということです。
著書の中では、次のような指摘をしています(以下、著書引用)。
実は、グレーという概念自体が非常に不適切なのです。
脳の病気にグレーは存在しません。
〝グレーゾーン″というと社会の中に、発達障害の概念が広がっているというポジティブな理解もできますが、その曖昧さが本来の発達障害の気づきを遠ざける可能性もあるということです。
以上、【ADHDの発見が遅れる理由】3つの要因から考えるについて見てきました。
著者はこれまで様々な発達障害のある人たちと関わってきていますが、ADHDの人も含め皆、状態像は多様だと感じます。
その中で、ASDの特性が優位だと思って関わっていた人が、関わる頻度が増していくとADHDの特徴もあるのでは?という気づきもありました。
このように、様々な発達特性への理解や二次障害への理解を通して始めて特定の発達特性の持つ〝行動特徴″が見えてくるのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も様々な症状や状態像の理解を深めていけるように、実践からの学びや気づきを大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
加藤俊徳(2020)ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”.大和出版.