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実行機能

【2つの実行機能‐思考と感情‐】発達障害児支援の現場を通して考える

投稿日:2023年11月23日 更新日:

 

実行機能″とは、〝遂行能力″や〝やり遂げる力″とも言われています。

実行機能は、〝抑制″〝更新″〝シフト″といった3つの機能から構成されています。

 

関連記事:「ワーキングメモリは実行機能(3つの構成要素)の中にどう位置づけられるのか?

 

一方で、実行機能には、思考と感情の2つの側面があると考えられています。

そして、実行機能を思考面と感情面の2つに分けて考えた方が理解しやすいとも言われています。

 

それでは、思考の実行機能と感情の実行機能とは、それぞれどのような機能だと考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、2つの実行機能-思考と感情-について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「森口佑介(2021)子どもの発達格差 将来を左右する要因は何か.PHP新書.」です。

 

 

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思考の実行機能とは何か?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

思考の実行機能とは、日常的についついやってしまう行動を制御するものです。

 

著書の内容を踏まえてた具体例について考えていきます。

例えば、やりたくないことの先延ばしのコントロールがあるかと思います。

運動嫌いな人がダイエットをしようとしたとします。

この時に、やりたくないといった思いから、ついついダイエットを先延ばしにしてしまうことを回避するために、目標を立てそれに向けて計画を立てて取り組むこと、つまり、行動を制御する方法を考え実行することがあります。

つまり、思考の実行機能とは、目標にむけて遂行中な(遂行しようとしている)ことに対して、ついつい目がそれてしまう習慣を制御する機能だと言えます。

 


また、著書には思考の実行機能は様々な能力に影響すると記載されています(以下、著書引用)。

幼児期に思考の実行機能が高い子どもは、国語や算数といった学力に関する就学準備性が高いようです。

 

学力のみならず、思考の実行機能は、相手の気持ちの理解など、社会的な意味での準備性にかかわるようです。

 

著書の内容から、思考の実行機能は、国語や算数といった学力や他者の心情の理解などにポジティブに影響すると考えられています。

算数では、頭の中で四則演算を記憶を含めて操作しながら答えを導き出す必要があります。

また、国語も文章読解では、文章に書かれた内容を記憶に保持しながら自分なりの解釈や内容の理解を導き出す必要があります。

他者の心情の理解においても、自分の気持ちを制御しながら、相手の気持ちを読み取る必要があります。

こうした力は、思考の実行機能と高い関連性があると考えられています。

 

 

感情の実行機能とは何か?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

感情の実行機能とは、本能的な欲求や感情をコントロールして、目標を遂行する力です。

 

著書の内容を踏まえた具体例について考えていきます。

例えば、先ほど見たダイエットを例に考えてみたいと思います。

ダイエットをしている人の目の前にその人の大好物である美味しいお菓子がたくさん置いてあったとします。

この際に、〝食べたい!″といった本能に根差した衝動を抑え込み、ダイエットといった目的を遂行するために、一時的に沸き起こった感情をコントロールするなどがあります。

つまり、感情の実行機能とは、非常に本能的な衝動を制御する機能だと言えます。

 


また、著書には感情の実行機能はあることに強く影響すると記載されています(以下、著書引用)。

感情の実行機能は、問題行動とのかかわりが強いようです。

 

著書の内容から、感情の実行機能は、問題行動と強い関連性があると考えられています。

つまり、感情の実行機能がうまく働かないと、衝動的な行動を取ることが多く、自己を抑えることや他者の心情を汲みとることが難しくなるため、それがトラブルに繋がってしまうということです。

 

 

著者の経験談

著者の療育現場には、実行機能に苦手さを抱えている子どもたちが多くいます。

 


思考の実行機能の弱さの例で言えば、一度、目標を立てて計画し実行しようとするも、他に気になることや興味のあることがあると、直ぐに気がそれてしまうケースが多くあります。

こうした背景には、以下の要因があると思います。

頭で計画を立てるも、気になる刺激を目にすると抑制が困難になることがあります(抑制の問題)。

その他、本来実行しようとしていることに気持ちを切り替えるのに時間がかかるケースも多く見られます(シフトの問題)。

また、集中して取り組むも情報のアップデートが難しいケースも多くあります(更新の問題)。

 


感情の実行機能の弱さの例で言えば、活動の目標や計画を事前に立てたとしても、お腹がすいた、喉が渇いた、やりたいゲームやおもちゃがある、などが誘因となって突如湧いた衝動を抑えることが難しいケースが多くあります。

目標や計画を立てるも、本能的な衝動が影響して抑制が困難になってしまうというものです。

そのため、自分を制御できずにわがままを押し通したり、他者の気持ちを考えることが難しくなることから、他者との間でトラブルに発展しまうことも多くあります。

 

このように、実行機能を思考面と感情面に分けて見ることで、確かに現場の子どもたちの理解が進んでいくのだと思います。

 

 


以上、【2つの実行機能‐思考と感情‐】発達障害児支援の現場を通して考えるについて見てきました。

実行機能は療育現場においてとても重要なキーワードです。

そのため、実行機能を理解することは、療育現場の子どもたちを知るために多くの手がかりを与えてくれるものだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も実行機能への理解を深めていきながら、そこで得た知見を実践に役立てていけるようにしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「【実行機能の発達】思考と感情の発達について考える

 

 

森口佑介(2021)子どもの発達格差 将来を左右する要因は何か.PHP新書.

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