ここ最近、〝非認知能力″が注目されるようになってきています。
〝非認知能力″とは、創造性・興味・関心・意欲・主体性・自制心・自信など、一般的な知能以外の能力を指します。
非認知能力の育ちは、人間の幸福度に影響するなど、とても重要な力だと考えられています。
そして、非認知能力は認知能力以上に、育てることが可能だと考えられています。
関連記事:「【非認知能力はなぜ注目されているのか?】療育経験を通して考える」
それでは、非認知能力を育てていくためには、どのような関わり方・支援方法があるのでしょうか?
そこで、今回は、非認知能力の支援・育て方について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「関西発達臨床研究所(編)高橋浩・山田史・天岸愛子・若江ひなた(著)(2024)非認知能力を育てる発達支援の進め方 「きんぎょモデル」を用いた実践の組み立て.学苑社.」です。
非認知能力の支援・育て方について
著書には、〝非認知能力″を支援していくための6つのポイントが記載されています(以下、著書引用))。
① 自発的、主体的な遊びでいっぱい遊ぶ
② 子どものやりたいことを優先で考える
③ 一緒に楽しみ盛り上がる(楽しさ共有)
④ 結果ではなく、プロセスや頑張りを褒める
⑤ 必要な時の必要な手助け(過剰にならない)
⑥ 遊びに関心をもち、温かく見守る
それでは、次に、以上の6つのポイントについて具体的に見ていきます。
① 自発的、主体的な遊びでいっぱい遊ぶ
自ら能動的に活動することは〝非認知能力″の力を高めることに繋がります。
そのためにも、〝遊び″はとても重要です。
〝遊び″とは、他者から強制されたものではなく、自発的・主体的に取り組むものだからです。
著者が見ている療育現場の子どもたちの中には、自分でやりたい遊びを見つけ、想像力を駆使して遊びを発展させようとする姿に驚かされることがよくあります。
そのため、著者にできる支援として、様々な遊びを考案すること、共に遊びを共有・共感することが大切だと感じています。
② 子どものやりたいことを優先で考える
〝非認知能力″を向上させるためには、自発性・主体性が大切でした(①より)。
そのためにも、子どもの興味関心を大切にして、大人にとっての優先度ではなく、子どもにとって何が好きか・楽しいか・大切か・やってみたいか、などの子どもの思いを優先して考えることが必要です。
著者は療育現場で様々な遊びを通して子どもたちと関わっていますが、まずは、子どもが、何がやりたいのかを大切にして関わることを心掛けています。
もちろん、なかなかやりたいことが見つからない、うまくやりたいことが発信できない子どももいますが、様々な遊びを経由することで、優先度が見えてくることがよくあります。
そのため、著者にできる支援として、子どもにとって何が好きか・楽しいのかをアセスメントしていきながら、下手に大人の価値観を押し付けないことに気をつけています。
③ 一緒に楽しみ盛り上がる(楽しさ共有)
活動や遊びにおける楽しさを共有することは、感情の発達や他者理解など〝非認知能力″の発達においてとても重要です。
また、楽しさを共有することで、〝人と楽しさを分かち合いたい!″〝また次も楽しい遊びをしたい!″といった内発的動機づけを高めることに繋がっていきます。
内発的動機づけを高めるためにも、著者は、子どもとの遊びの中で、リアクションやユーモアを大切にしています。
例えば、子どもからの発信に少し大げさに笑顔で応える、面白い・楽しい表現で伝えてみるなどです。
こうした遊びを盛り上げる・楽しむといった姿勢は、子どもの心に強く伝搬していくのだと実感しています。
つまり、著者にできる支援として、子どもの興味関心のある遊びに対して、少し大げさなくらいリアクションを取り、楽しい・面白い表現(ユーモア)を交えながら関わることが大切だと感じています。
④ 結果ではなく、プロセスや頑張りを褒める
子どもが何かを成し遂げたり、達成感を感じるためにも、取り組みの過程を褒めることがとても大切です。
このような取り組みもまた、自信や実行機能などの〝非認知能力″の向上に繋がっていきます。
著者の療育現場では、結果という部分にフォーカスして自己評価を行う子どもや、取り組み(注意力・集中力など)が持続しない子どもも多くいます。
こうした子どもたちに向けて、取り組みの過程を褒めることは、長期的にみて、自信や実行機能の高まりに貢献していくのだと感じさせられたケースは多くあると実感しています。
そのため、著者にできる支援として、子どもが活動で取り組んでいる姿をよく観察して、その子どもなりの頑張り(頑張っている過程や以前との比較など)を見つけて、フィードバックすることが大切だと感じています。
⑤ 必要な時の必要な手助け(過剰にならない)
過保護・過干渉といった言葉もありますが、過度に子どもの手助けをしてしまうと、自分で物事を考えようとしたり、何かを自発的にやろうといった意欲が低下するなど、〝非認知能力″の発達を妨げる場合もあります。
もちろん、逆に、何もサポートがない(必要なサポートが得られないなど)と困り感が積み重なってしまうのが、発達に躓きがある子どもたちに多く見られるため、注意が必要です。
著書にある通り、必要な時にしっかりとサポートすることが大切です。
そのため、著者にできる支援として、できるだけ子どもが独力でできる部分と、大人が手伝わないとできない部分とを見極めながら、関わり方を工夫するように心がけていくことが大切だと感じています。
⑥ 遊びに関心をもち、温かく見守る
子どもが行う遊びには、大人からするとあまり意味が感じられないものもあるかと思います。
一方で、子どもは遊びといった行為そのものに、固有の楽しさや意味を感じていることが多くあります。
そのため、子どもが行っている遊びに関心を寄せる姿勢や温かく見守る姿勢はとても大切です。
子どもから見ても、こうした姿勢で関わってくれる大人がいることで、安心して遊びに取り組むことができるのだと思います。
そのため、著者にできる支援として、子どもがやっている遊びに関心を寄せたり、温かく見守る中で、何が子どもの興味関心の中心になっているかを理解・把握していくことが大切だと感じています。
以上、【非認知能力の支援・育て方について】療育経験を通して考えるについて見てきました。
非認知能力は数値化できない分、成長や育ちが不透明なことも多くあるかと思います。
一方で、長く子どもたちと関わっていると、確実に非認知能力の高まりを感じ取れる経験が多くあります。
そのため、非認知能力の高まりの過程において、必要な支援や環境調整をどうやって行っていけばいいのかなど、非認知能力の育て方に関する内容を整理していくこともまた必要だと考えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちの非認知能力をじっくりと育んでいけるように、より良い発達支援を目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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関西発達臨床研究所(編)高橋浩・山田史・天岸愛子・若江ひなた(著)(2024)非認知能力を育てる発達支援の進め方 「きんぎょモデル」を用いた実践の組み立て.学苑社.