発達障害児・者への支援の過程で難しい課題に〝障害告知″があります。
当事者に対して、いつ・どのタイミングで〝障害告知″をすべきか苦慮している支援者及び家族の方も多いのではないでしょうか。
それでは、障害告知はどのようなタイミングですべきなのでしょうか?
そこで、今回は、障害告知のタイミングについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.」です。
障害告知のタイミングについて
著書には、障害告知について〝親が気を付けたい3つのポイント″が記載されています(以下、著書引用)。
① 告知のタイミングに正解はない
② 告知するべきではないタイミングはある
③ 告知の覚悟や話す内容は決めておきたい
著書の内容から、まずは、〝障害告知″のタイミングには関しては、正解はないということです。
一方で、告知すべきではないタイミングはあります。
それは、著書によれば、本人の状態が非常に悪化している場合、および、本人の世界が強すぎる場合などです。
例えば、本人の状態が悪化している場合に、障害告知をしてしまうと、本人は障害による影響をさらに悪いものとして捉えてしまうことがあるからです。
そうなると、かえって障害に対する躓きを受け止め、前に進もうと言った意欲が低減してしまいます。
また、本人の世界観が強い(自分の興味関心の世界に没頭しがちなど)状態において障害告知をしても、本人に伝わらないことが多いと言えます。
〝障害告知″において、大切なことは、早急に告知することを優先せずに、じっくりと伝えるべき内容とタイミングを考えておく必要があると言えます。
そして、診断名を伝えること以上に、困りごとを伝えることを大切にすべきだと言えます。
例えば、自閉スペクトラム症の場合において、対人・コミュニケーションの困難さがあると伝えることよりも、具体的に生活場面で困っている点(他者の言っていることがうまく理解できない、集団行動がうまくとれないなど)と、それに発達特性が影響しているといった視点から伝えていくことの方がより具体的だと言えます。
著者の経験談
著者もこれまで、発達障害児・者支援の経験から〝障害告知″に関与したことがありました。
当時、高校生のAさんの事例です。
Aさんには、自閉スペクトラム症の特性がありましたが、当時は、発達障害への理解も不足していたことから、困り感の背景が分かることがなく、年を重ねるごとに、生活における困り感が蓄積されていきました。
特に、Aさんが小学校高学年頃になると、周囲とのギャップが顕著になっていきました。
それは、他者とうまくコミュニケーションがとれない、相手の話している内容がよく分からないといったものでした。
中学校以降になると、その状態はさらに悪化していきました。
Aさんの困り感は、対人・コミュニケーションの困難さ以外においても、学習面・運動面など様々な所で出てきました。
Aさんに診断名が付いたのは高校生の頃でした。
当時は、あまりよく知られていなかった自閉スペクトラム症(当時は、広汎性発達障害と呼ばれていた)に関して、対人・コミュニケーションの困難さやこだわり行動などが影響して生活場面に困り感が出ているといったことを、Aさんの保護者の方は伝えていました。
それを聞いたAさんは、ショックを受けるどころか安心した様子を見せていました。
おそらく、これまで苦しみ続けていた困り感には、生まれながらのなんらかの原因があったとが(本人の努力不足と関係がない点において)、本人を安堵させたのだと思います。
本来であれば、もっと早いタイミングでの〝障害告知″が必要だったのだと思います。
著者の印象としては、できれば困難さが蓄積される前の、小学校高学年頃には、〝障害告知″が必要だと思います(告知以前に、生活の困り感を解消する方法の実施が必要)。
もちろん、今と昔とで、発達障害への理解は非常に変化しているため、当時においては、〝障害告知″を早めることは難しかったのだと言えます。
一方で、著者のこれまでの経験から、まずは、障害への〝早期発見″〝早期支援″に繋げていくこと、そして、次の段階において、〝障害告知″のタイミングをどのように設定していくかが必要だと感じています。
以上、【障害告知のタイミングについて】発達障害児・者支援の経験を通して考えるについて見てきました。
障害告知は周囲の誰かが行わなくても、本人が自分で調べて気がつく場合もあると言えます。
大切なことは、困り感が持続することで、二次障害になってしまうことを予防することだと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害児・者支援に携わっていく中で、障害告知といった内容に関しても理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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