子どもたちは日々の〝遊び″の中で多くのことを学んでいきます。
著者の療育現場でも、日々行われている様々な〝遊び″を通して、子どもたちの成長・発達が短期・長期のスパンで見られています。
それでは、〝遊び″が持つパワーには具体的にどのようなポジティブな影響があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、遊び心は〝学び″や〝創造性″を高めるのか?といったテーマについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、遊び心を妨げることによる障害の視点から理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「ピーター・グレイ(著)吉田新一朗(訳)(2018)遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる.築地書館.」です。
〝遊び″の持つパワーとは?
著書の中では、これまでの多くの研究から、次の結論が導き出されるとしています(以下、著書引用)。
それらの結論は、「学び、問題解決、創造性は、遊び心を妨げることによって悪化し、遊び心を促進することによって改善する」ことを示している。
つまり、〝遊び心″を促進することで人は、〝学び″〝問題解決″〝創造性″が高まり、〝遊び心″を妨げることで逆の効果が生じるといった研究結果が出ているということです。
それでは、次に〝学び″と〝創造性″を妨げる要因について、〝遊び心″をキーワードに理解を深めていきたいと思います。
〝学び″を妨げる要因とは?
著書の内容では、〝学び″を妨げる要因として、〝いい結果を出すような圧力をかけられる″場合があると記載されています。
つまり、何かを学ぶ際(学びはじめる時)には、〝遊び心″を持って取り組んでいる人の方が、パフォーマンスが高いということです。
例外として、取り組んでいる課題に対して高いスキルを持っている場合は別であると記載されています。
著者の経験からも、最初に何かに取り組む際には、〝遊び心″を持って取り組む方が良い成果が出ると感じています。
例えば、著者は子どもの頃に空手道場に通っていましたが、習い始めた当初は周囲から課せられた練習を必死にこなすというよりも、○○の映画俳優のようになりたい!○○の映画俳優のように動きたい!といったある種の〝遊び心″を持って取り組んでいたように思います。
そして、このように取り組めた部分が多かったことが、技の習得のはやさに繋がったと感じています。
療育現場で見ている子どもたちにも同様のことが言えると思います。
子どもたちは、新しく取り組む〝遊び″、例えば、カードゲーム、ボードゲーム、ごっこ遊び、外遊びなどにおいて、自らのやってみたい!といった動機のもと、〝遊び心″を持って取り組むことで、カードゲームやボードゲームのルールの理解がスムーズに進んだり、ごっこ遊びや外遊びの楽しみ方を素早く吸収するなど、遊びの内容に関してはやく理解ができるようになるといった印象があります。
このことから、〝遊び心″を持って楽しく取り組んだものは、はやくその子の中に取り込まれていく(学習していく)のだと思います。
〝創造性″を妨げる要因とは?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
実験のもっとも重要な結果は、次のようなものでした。「創造性を高めようとして提供された操作ないし介入はすべて、創造性を下げる結果をもたらした」。どんなにたくさんの実験を繰り返しても、もっとも創造的な作品は、常に創造性の動機づけが一切なされなかったグループから生まれました。
著書の内容から、〝創造性″を妨げる要因として、〝創造的になることを強いられた″場合であると考えられています。
逆に、〝創造性″を発揮するためには、周囲からの制約が外れた動機づけのない状態であると言えます(外発的動機づけです)。
著者の経験でも、前述した空手の例で言えば、オリジナルな技を生み出すことを楽しんでいた時期もあります。
この時、オリジナルな技がうまく創造できたときは決まって〝遊び心″を持って自分から進んで生み出そうと考えている時だったと思います。
療育現場でも、子どもたちは、自分たちで独自に遊びの発展のさせ方や新しい遊びのルールを考案してくることがあります。
このような場合には、著者など大人が遊びの発展を促したり、ルールの考案を促したりという状況の中ではなかなか生じないように感じます。
仮に生じた場合には〝創造性″が低いと感じるものが多く、逆に、遊びの中で自然と生み出されたものの方がより〝創造性″の高さを感じるケースが多いといった印象があります。
このことから、〝遊び心″を持って取り組んだ方が、人は〝創造的″になれるのだと思います。
以上、【遊び心は〝学び″や〝創造性″を高めるのか?】遊び心を妨げることによる障害の視点から考えるについて見てきました。
人は何か周囲から圧力をかけられて物事を〝学び″〝創造″するよりも、〝遊び心″を持って取り組む方が、パフォーマンスが上がるということです。
もちろん、ある程度のスキルが高い人は特別な練習方法などが有効となる場合もあります。
このような例外を除いて、子どもたちは、〝遊び″を通して、〝遊び心″をもって取り組むことで多くのことを学んでいくのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちの育ちに貢献できるように、様々な事に対して〝遊び心″を持つ視点を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【自由遊びとは何か?育まれる力とは何か?】療育経験を通して考える」
ピーター・グレイ(著)吉田新一朗(訳)(2018)遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる.築地書館.