子どもが言葉を獲得していくためには様々な要素が必要です。
例えば、発声器官の発達、音を聞き分ける能力、他者と視線を共有する能力、表象機能や象徴機能の発達、など様々あります。
その中で、他者との関係性もとても大切な要素の一つです。
それでは、言語の発達において他者との関係性はどのような意味で大切となるのでしょうか?
そこで、今回は、言語の発達で大切な基本的信頼感について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「小椋たみ子・小山正・水野久美(2015)乳幼児期のことばの発達とその遅れ-保育・発達を学ぶ人のための基礎知識-.ミネルヴァ書房.」です。
言語の発達で大切な基本的信頼感について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
他者を理解していくことの根本のところは「基本的信頼感の形成」です。
子どもの成長過程の中で、非常に可愛がられる体験、非常に大事にされる体験というものが、意味を持ってきます。身近な人に対する基本的信頼感が育ってきて、それが「核」になっていろいろな人との関係性に広がって、知的好奇心やさまざまな学習につながっていくと言えます。
著書の内容から、子どもが外の世界に興味を持ち、外の世界をより広げ・深めていこうとする知的好奇心が様々な学習をしていく上でとても大切だと言えます。
そして、知的好奇心の育ちの根底を支えているものが「基本的信頼感」です。
つまり、自分が愛され、大事にされたという経験が、「基本的信頼感」の育ちに寄与し、信頼のおける他者の存在を〝安全・安心基地″として、探索空間を広げていくことができます。
そして、知的好奇心を持って探索空間を広げていくことは、認知機能を高め、言語の育ちにも貢献していきます。
それでは、「基本的信頼感」を育むためには、どのような関わり方が大切となるのでしょうか?
以下、引き続き著書を引用しながら見ていきます。
子どもの側に大人に対する「基本的な信頼感」が生じてくるには、まず、かかわる大人の応答性が当然大切になってきます。
そして、そういう人との関係の中で、言語発達の基盤となる子どもの認知発達が成されていきます。
著書の内容から、「基本的信頼感」を育むためには、関わる大人の〝応答性″が大切だと言えます。
〝応答性″とは、子どもが泣いたり、微笑んだり、視線をおくったり、言葉を発信した際に、子どもの〝意図″や〝思い″を汲みとって反応することです。
関わる大人による高い〝応答性″は、子どもとの「基本的信頼感」の育ちに貢献するだけでなく、言語発達の基盤となる認知発達の育ちにも繋がっていくと考えられています。
著者の経験談
著者は療育現場で発達に躓きのある子どもたちと多く関わってきています。
その経験の中で、言葉をよく話すようになった子ども、言葉でのやり取りが活発になった子ども、言葉での理解や発信が進んだなど〝言葉″の育ちが様々な子どもたちに見られます。
子どもたちの言語発達に共通する特徴として、大人との信頼関係を中心として活き活きと活動に取り組んでいるという特徴があります。
例えば、他児との活動をとても楽しみにしている、やりたい活動を心待ちにしている、活動に熱中している、などがあります。
こうした特徴の例も、困ったら助けてくれる大人がいる、自分のことを分かってくれる大人がいるといった、困り感にすぐに〝応答″してくれるといった〝安全・安心感″がベースとなっている印象があります。
そして、活き活きと活動していく中で、言葉もスキルとしての言葉ではなく、体験や経験から獲得した〝生きたことば″として使用されていくように思います。
もちろん、「基本的信頼感」の形成が認知発達や言語発達にポジティブな影響を与えているといった実感が持てるようになるまでは、様々な失敗や紆余曲折が著者なりにありました。
だからこそ、上記の内容は実感として信憑性があるのだとも思います。
以上、【言語の発達で大切な基本的信頼感について】療育経験を通して考えるについて見てきました。
言語を獲得するためには、様々な要素が必要です。
その中で、今回取り上げた「基本的信頼感」はとても重要なものだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も言葉の発達という側面からも子どもたちの理解を深めていきながら、より良い実践を行っていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
小椋たみ子・小山正・水野久美(2015)乳幼児期のことばの発達とその遅れ-保育・発達を学ぶ人のための基礎知識-.ミネルヴァ書房.