発達障害児・者には様々な感覚の問題が見られると言われています。
そのため、発達障害児・者支援に携わる人たちにとって、感覚の問題への理解と対応に関する知識は必須であると言えます。
中でも、〝触覚過敏″の問題は様々な文献や著者の療育経験を通しても多く見られます。
それでは、触覚過敏を抱える人にはどのような特徴があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、触覚過敏を抱える人の特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、療育で大切にしたい点について見ていきます。
今回参照する資料は「前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.」です。
触覚過敏を抱える人の特徴について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
触覚過敏を抱える人は、この触覚の原始感覚(痛覚・温冷感覚)が発動しやすい状態だといわれています。
著書には、〝触覚過敏″を抱える人には、痛覚(痛みを感じ取る感覚)や温冷感覚(暑さ・冷たさを感じる感覚)が生じやすいと記載されています。
そして、著書には、痛覚や温冷感覚が優位な状態であると、大人との間でうまくスキンシップを取ることが難しくなるなど、〝愛着形成″に支障が生じやすいと考えられています。
定型発達児にとっては、大人との皮膚接触に安心感を覚えるなど、スキンシップが取りやすいと言われていますが、発達障害児などによく見られる〝触覚過敏″があると、うまくスキンシップを取ることが難しくなる場合があります。
そのため、〝触覚過敏″を抱える子どもには、次の視点が大切だと言えます(以下、著書引用)。
触覚に過敏性をもつ子には、幼少期より適切な触覚経験を積むことが大切になるのです。
基本的に〝触覚″など様々な感覚は育つものだと考えられています。
そのため、仮に〝触覚過敏″があったとしても、その特徴を考慮した対応方法・関わり方を考えていくことが必要になります。
それでは、次に、著者の療育経験から〝触覚過敏″を持つ子どもへの関わりでうまくいった事例を紹介していきたいと思います。
著者の経験談
著者が療育施設で未就学児を担当していた頃の話になります。
当時、5~6歳にあたる自閉症児のA君は、様々な〝触覚過敏″を抱えていました。
好きなものにはどん欲に触れることができる一方で、特に、人から触られることを過度に嫌がる傾向がありました。
そのため、なかなかA君と、スキンシップを通した信頼関係を築いていくことが難しい状況でした。
著者はまずA君に対して、スキンシップの量・質を調整することを心がけていきました。
スキンシップの量が多く取れなくても、一日の間で少しの時間、それも、非常に優しく触れるということを大切にしていきました。
A君は少しずつではありますが、著者とスキンシップ遊び、体を使った遊びに心地よさを見せるようになっていきました。
そして、そこから数か月経つと、登園してきたA君は、著者に自分から抱き着いてきて喜びを見せてきたり、自分からスキンシップ遊びに誘ってくる様子が増えていきました。
この頃から、著者はA君と関係が取りやすくなり、どこか、心の底で通じ合っているという感覚が芽生えてきました。
スキンシップ以外にも、著者は優しい声のトーンで話しかける、急に近づくなど侵入的にならない、A君の興味関心を把握していくことを大切にしてきました。
こうした取り組みが相乗効果となり、スキンシップといった皮膚接触がうまく取れるようになったことも十分に考えられます。
発達障害、中でも、自閉症には様々な〝触覚過敏″が見られることがあります。
〝触覚過敏″への理解を深めていくことは、様々な人が抱える感覚の問題への理解と支援に繋がっていくのだと、この事例を通して深く学ぶことができたと感じています。
以上、【触覚過敏を抱える人の特徴について】療育で大切にしたいことについて見てきました。
人は触覚を通して世界を拡張したり、他者との間に安心感を抱くことができます。
大人になるにつれて、視覚や聴覚といった識別機能が優位になっていく中で、療育に携わる人は触覚など原始感覚が持つ重要性について改めて理解を深めていくことが大切だと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も様々な感覚の問題を通して、感覚への理解を深めていきながら、その知見を療育での実践に役立てていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.