自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。
自閉症の子どもたちは、上記の特徴が背景となって、〝集団遊び″に難しさを抱えているケースが多く見られます。
そのため、集団遊びへの参加の工夫、そして、集団遊びをうまく行えるための工夫が必要になります。
それでは、そもそも、集団遊びを通してどのような力が得られると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症児の集団遊びで身に付く力とは何かについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.」です。
集団遊びで身に付く力について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
集団活動で得られる「他者からの評価」や「協調性」、「自己発見」、「達成感」、そして「人と共にある喜び」と「安心感」さらには、「信頼関係の獲得」はとても貴重です。
集団に適応するために、自分の考えや意見を調整する「自己調整力」や自分の感情を整えたり制御したりする「感情調整力」の能力向上が期待されます。
著書の内容から、〝集団遊び″によって身に付く力(得られるもの)には様々な内容のものがあることが分かります。
〝集団遊び″とは、他者との触れ合い・関わりですので、当然、〝社会性″に関連する能力(例えば、協調性や人と共にある喜びなど)の育ちに加えて、信頼関係の形成や信頼関係の中で育まれる安心感、さらに、活動の中で新しい自分を発見すること、そして、他者と活動をやり遂げたといった達成感などは〝集団遊び″を通して獲得する部分が多くあると言えます。
また、集団への適応能力(自己調整力や感情調整力など)もまた〝集団遊び″を通して育まれる力だと言われています。
著者の経験談
著者は療育現場で発達障害など発達に躓きのある子どもたちと長年、関わってきています。
療育の中では、様々な〝集団遊び″が日々行われています。
子どもたちは〝集団遊び″を通して、先に見たような様々な力を獲得していくのだと実感しています。
今回は、〝集団遊び″による力の獲得について、〝2事例″を通して見ていきます。
小学校高学年のA君
A君は自分がうまくいかないことがあるとすぐにカッとなる!イライラするなど、行動調整・感情調整に難しさを抱えている子どもでした。
A君は〝集団遊び″を通して、ここ数年で見違えるような変化が出てきました。
A君は、〝集団遊び(戦いごっこ、かくれんぼなど)″を通して、集団の中で自己評価を高めたこと、そして、他児と関わることでうまくいった成功体験、さらには、他児と関わる楽しさをより実感できたことがA君の自信に繋がっていったのだと思います。
その結果、A君は些細なことでカッとなる!様子は少なくなり、落ち着いて〝集団遊び″をする様子が増えていきました。
これは、A君が〝集団遊び″を通して、〝感情調整力″が育っていった事が大きな要因だったと考えられます。
小学校中学年のBちゃん
Bちゃんは小学校低学年頃までは、非常に寡黙で自分からの発信が少ない子どもでした。
〝集団遊び″自体、自分から入ってくることは少なく、大人がうまく遊びをリードしないと、思うように遊びにハマることができない様子が続いていました。
そんなBちゃんでしたが、Bちゃんの事が大好きな高学年のお兄さん・お姉さんたちの中で、様々な〝集団遊び(先生ごっこ、お店屋さんごっこなど)″をしていく中で、Bちゃんにも様々な変化が出てきました。
例えば、自ら集団に入っていく姿勢が増えたこと、そして、遊びの中での成功体験、そして、最も大きなことは他児と関わることの楽しさ・喜びであったと思います。
Bちゃんから〝帰りたくない!″〝楽しい!″といった〝集団遊び″の中で楽しさ・喜びを表現する様子が増えてきたことからも〝人と共にある喜び″を実感することが増えていったのだと思います。
以上、【自閉症児の集団遊びで身に付く力とは?】療育経験を通して考えるについて見てきました。
今回は、2事例について非常に短く見てきましたが、〝集団遊び″の中で様々な力が身に付いたと感じる事例は数多くあります。
そのため、著者は〝集団遊び″が持つ力の大きさについて、療育経験を通して強く実感しています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちと日々、集団遊びをしていく中で、子どもたちの成長・発達を促す関わり方を工夫していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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