〝自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)″とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわりを主な特徴とした発達障害です。
著者が療育現場で関わる子どもたちの中には、自閉的な特徴を持った子どもたちが多くいます。
自閉症児と遊びを中心とした活動を共にすることで、彼らには特徴的な遊びの様子があると感じています。
それでは、自閉症児の遊びの特徴にはどのようなものがあるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症児の遊びの特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談をもとに理解を深めていきたいと思います。
自閉症児の遊びの特徴について
著者の療育経験の中で、自閉症児の遊びの特徴には以下の内容がよく見受けられます。
1.特定の活動に興味が集中しやすい
2.ルーティンがよく見られる
3.一度興味のある活動を取り入れるとその活動が継続されやすい
それでは、以上の3つについて具体的に見ていきます。
1.特定の活動に興味が集中しやすい
自閉症の特徴として、〝興味関心の幅の狭さ″があります。
これは、特定の活動・遊びに興味関心がフォーカスしやすいといった特徴を指します。
例えば、電車や車に関する遊びをする、虫を調べたり虫取り遊びをする、折り紙など特定の制作遊びに没頭する、など○○博士とも言われるように特定の領域に興味が集中しやすいといった傾向があります。
特定の遊びに注意が向く傾向は、裏を返すと〝遊びの幅が広がりにくい″こを意味します。
こうした遊びの特徴の背景には、〝中枢性統合の弱さ″があると感じています。
つまり、〝木を見て森を見ず″といったように、物事の全体像よりも細部に注意がフォーカスしやすい特徴が影響していると言えます。
過度な集中を〝過集中″とも言いますが、自閉症児は、一度、特定の遊びに没頭しはじめると、周囲の声が耳に入らないほど遊びに没頭することがあります。
著者が話しかけても、振り向くまでに時間がかかったり、遊びの終わりの切り替えが難しい子どもも多くいます。
こうした行動特徴は、特定の領域に関して、高い知識の吸収ができるといった強みがある一方で、周囲のペースやリズムに合わせることが難しい弱み(時には強みとなる場合もあります)もあると感じています。
2.ルーティンがよく見られる
自閉症の人たちは、一度、活動の流れが決まるとその〝ルーティンにこだわる″子もいます。
例えば、午前中は○○遊び、午後は○○遊びを必ずする、といったように遊びの内容が決まっており、それを絶対にやり通そうとするケースもよく見られます。
こうした遊びの特徴の背景には、〝同一性保持″があると感じています。
つまり、一度自分で決めたルールを保持しようとする特徴が影響していると言えます。
〝同一性保持″が働くことで、事前に決めた予定を実行することである種の安心感を得ることができるのだと思います。
しかし、私たちの日々の生活は予定調和にことが進まないことも多くあります。
そのため、予定外のことが起こりそうな場合には、事前に〝見通し″を伝える必要があります。
つまり、〝実行機能″を書き換えるといった作業が重要になります。
3.一度興味のある活動を取り入れるとその活動が継続されやすい
特定の遊びに興味関心がフォーカスしており、その遊びがメインとなってその日の活動のルーティンが個々によって決まっていくことが、療育現場で関わる自閉症児にはよく見られます。
一方で、新奇なプログラムを導入したり、以前ハマっていた遊びを再度行うことで、現在よくやっていた遊びやルーティンが切り替わることがよくあります。
例えば、ごっこ遊びに夢中だった子どもが、以前好きだった工作遊びを一度導入することで、興味関心がごっこ遊びから工作遊びへと切り替わるなどです。
こうした遊びの変更の背景には、〝注意の転導性の弱さ″が影響しているのだと思います。
つまり、特定の活動にフォーカスすると、他のことに気持ちや注意を向けることが難しいことが影響しているのだと言えます。
そのため、他の遊びの導入(興味関心を使った)を大人が意識的にすることは、注意が向いている対象を他の対象へと切り替えることに繋がっていくのだと思います。
以上、【自閉症児の遊びの特徴について】療育経験を通して考えるについて見てきました。
自閉症の特性を抑えていくことで、自閉症の遊びの特徴にはどのようなものがあるのかを背景も含めて理解していくことができるのだと実感しています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちの遊びがより豊かになっていけるように、自閉症児の遊びの特徴について、さらに理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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