自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。
自閉症児に関する愛着研究によれば、自閉症児も愛着を形成することは可能であるが、定型発達児とは異なる愛着形成をすることが分かっています。
それでは、自閉症児にはどのような愛着の発達が見られるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症児の愛情の発達について、〝愛着4段階説″を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.」です。
〝愛着4段階説″について
著書の〝白石雅一″さんは、〝髙橋脩氏(2022)発達障害児と家族への支援.日本評論社.″を参考にして〝愛着4段階説″について説明しています。
それでは、4つの段階についてそれぞれ見ていきます。
第一段階(出生~3ヶ月):混沌段階
著書を参考にすると、この時期には、親に対して不安や探索行動など〝愛着行動″を見せることがないと言われています。
そのため、親からすると子どもが〝愛着行動″を見せないため、悲しみの感情が生じるなど混乱が生じる時期だと言えます。
一般的に、子どもはこの時期には、母親の表情を見ると笑う、母親が傍から離れると泣くなど〝愛着行動″を見せます。
そのため、こうした〝愛着行動″を見せることが無いと、両者の関係が非常い〝混沌″とした状態になるのだと言えます。
第二段階(3ヶ月~6ヶ月):道具段階
著書を参考にすると、この時期には、呼名をしても反応がまだ乏しいのですが、親や大人の手を取って物を操作する〝クレーン現象″が見られると言われています。
自閉症児の〝愛着行動″に特徴的な行動として〝道具的安全基地″があります。
一般的に、子どもは〝心理的安全基地″として親(養育者)が機能することで良い愛着関係を築いていくと言われています。
つまり、〝心理的安全基地″が基盤になっているということです。
一方で、自閉症児にとっては自分の欲求が満たされることが優先されるため(道具的安全基地の先行)、定型発達児とは異なる愛着の発達を遂げると考えられています。
第三段階(6ヶ月~3歳):快適段階
著書を参考にすると、この時期には、特定の相手(親や養育者など)の身体部位(顔や耳たぶなど)の臭いを嗅ぐ、触るなどの行動が出てくると言われています。
こうした行動は、〝自閉症児に特徴的な愛情行動″だと言えます。
少しずつ特定の大人(親や養育者など)に注意・関心が向くようになる時期だと言えます。
上記の内容を見ても分かる通り、この時期の自閉症児の〝愛着行動″は特定の人の細部に注意が向くなど(細部によって人を知覚し安心感を得るなど)、特徴的な関わり方を見せると考えられています。
第四段階(3歳~):依存段階
著書を参考にすると、この時期には、養育者と視線を共有するなど表情や視線への反応が高まってくると言われています。
さらに、分離不安や養育者との再会を喜ぶなど顕著な〝愛着行動″が見られるようになります。
この時期になってようやく、周囲から見てもよく分かる〝愛着行動″が見られます。
一方で、よくわかる〝愛着行動″であり、なおかつ、遅れての出現であるため、〝退行現象″といった誤解を招くこともあると考えられています。
〝愛着4段階説″から見えてくる自閉症児の特徴
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ASDの子どもの「愛着」は定型発達の子どもに比べてだいぶ遅れて始動することや、母親の身体への「こだわり行動」から、「分かりにくい」と言うことができます。したがって、親の不安は増長されていきます。
著書の内容から、自閉症児の〝愛着″の発達は、定型発達児と比べると遅れて成長することや、周囲から見ても〝分かりにくい″ことが特徴だと言われています。
そのため、親(養育者)にとっては、発達の遅れや特徴的な発達の様相を見せることから、親の不安が増長されることが多いと考えられています。
そのため、今回見てきたように、自閉症児の〝愛着″の〝発達″を理解することは子どもの状態像や発達段階を理解することに留まらず、親の心情への理解にも繋がっていくと言えます。
以上、【自閉症児の愛着の発達について】〝愛着4段階説″を通して考えるについて見てきました。
自閉症児は対人・コミュニケーションといった社会性に躓きを見せますが、愛着の観点から言えば、愛着形成は遅れながらも培われていくこと、そして、特徴的な愛情形成をしていくことが上記の内容から分かります。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる自閉症児とより良い関係を築いていけるように、愛着の視点も現場に取り入れながら日々の実践に活かしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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