自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。
自閉症児への支援で大切なことの一つに〝人間関係″の力を高めるものがあります。
もともと、社会性・コミュニケーションの障害といった〝人間関係″の育ちに躓きのある自閉症の人ですので、早期から〝人間関係″の力の育ちを視野に入れた関わり方はとても大切です。
それでは、自閉症児の人間関係の力を育てていくためにはどのような方法があるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症児の人間関係の力を高める方法について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、おもちゃ教材を例に理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.」です。
自閉症児への支援:おもちゃ教材を例に
以下、著書を引用しながら見ていきます。
放置や放任しているだけでは、対人関係は成立しないし、親や先生との人間関係も深まらない
だから、成長・発達が望めない
そこで、!ASDの子どもが大切にしているこだわりの物を媒介にして
または ASDの子どもがハマっているおもちゃよりも魅力的なおもちゃを提示して
やりとりをして、コミュニケーションを図り、楽しく、達成感がもてる課題遂行に導いて、ASDの子どもに自信と人への信頼関係を得させる
自閉症児の〝人間関係″の力を高めていくためには、〝おもちゃ教材″が重要であると著書には記載があります。
自閉症児は、定型発達児とは異なり、自ら他者に働きかけ共有経験を持つことに苦手さがあります。
そのため、〝放置″〝放任″の状態だと、自閉症児の〝人間関係″の力を高めることは難しいと考えられています。
著書には、自閉症児の〝人間関係″の力を高めるためには、その子の〝こだわり″や〝ハマっているおもちゃ‟を超えた魅力的な〝おもちゃ教材″の提示が重要だと言われています。
そして、〝おもちゃ教材″を介して、課題を達成したときの喜び、〝おもちゃ教材″を媒介に他者との関わりを学習していくことが大切になります。
著者の経験談
著者も自閉症児と関わる際に、そこの〝こだわり″や〝ハマっている遊び″を基点に、コミュニケーションを広げるきっかけにすることがよくあります。
例えば、ミニカー並びにハマっている子どもがいる場合には、同じように傍でミニカー並びをしてみる、それも、その子よりも、長く並べて見る、などの工夫をしたことがあります(この場合にはミニカーが教材になります)。
すると、その子は、最初はチラチラ著者の遊びを見ているだけでしたが、徐々に著者が並べているミニカーを自ら繋げようと、著者の遊びに入ってくることがあります。
また、他の例では、車大好き、バス大好きなど乗り物好きな子どもに、車・バス博士!車・バス先生!と命名して、乗り物に関する知識・情報を教えてもらう方法を取ることがあります。
具体的には、車の本や工作遊び(車やバス作り)を通して(これらが教材となる)、関わりの接点を作っていくという視点が大切だと思います。
接点ができると、子どもは、得意げに自分が持っている知識・情報を伝えてくる様子が見られます。
こうした様子が増えていくと、子どもは著者との関わりをより深く求めてくるようになります。
そうなると、コミュニケーションがさらに取りやすくなりますし、こちらの遊びの提示にも興味を持って取り組む様子も見られていきます。
〝おもちゃ教材″は、大人と子どもとを結ぶ接点だとも言えます。
以上、【自閉症児の人間関係の力を高める方法】おもちゃ教材を例に考えるについて見てきました。
おもちゃ教材は何も高価なものである必要はありません。
安価であり、使いやすいものであっても大丈夫だと思います。
大切なことは、子どものこだわりやハマって遊びに関するアセスメントをしていくことで、それに関連したおもちゃ教材を工夫していくことだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちが人間関係の力を高めていけるように、おもちゃ教材への工夫についても創意工夫していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【自閉症児が好むおもちゃ教材とは何か?】療育経験を通して考える」
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白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.