自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴とする発達障害です。
著者が自閉症についての書籍を最初に読んだ頃は(15年以上も前になります)自閉症の特徴として〝三つ組″といった用語をよく見る(聞く)ことがありました。
しかし、気がつくと〝三つ組″といった用語は別の内容(これがいわゆる2因子モデルです)へと変更していました。
それでは、自閉症の特徴としてよく使用されていた〝三つ組″とは一体の何を意味していたのでしょうか?
そして、〝三つ組″から〝2因子モデル″への変更内容にはどのような違いがあるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症スペクトラム障害の特徴について、三つ組についての説明に加え、2因子モデルへの変更内容について考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.」です。
自閉症の〝三つ組″とは何か?
現在は自閉症の診断として、DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)などが使用されています。
現在は、DSM-5が使用されていますが、その前には、DSM-Ⅳが使用されていました。
そして、DSM-Ⅳに記載されている自閉症の診断基準が〝三つ組″と言われる3因子モデルが使用されていました。
〝三つ組″の内容が以下です。
1.対人相互反応の障害
2.コミュニケーションの障害
3.常同的で限定された興味
〝三つ組″は精神科医のウィングという人が考えたものになります。
〝3因子モデル″から〝2因子モデル″へ
以上が〝三つ組″と言われるものですが、その後、DSM-5により以下の変更点が出てきました(以下、著書引用)。
ただ、対人相互反応の障害とコミュニケーションの障害とが分かれていますが、全部社会性の問題と言ってもおかしくはありません。また、コミュニケーションの障害の中にある「常同反復的な言語使用(C3)」は、「常同的で限定された興味」に分類されてもおかしくありません。
結局のところ、ASDの症状は「社会的なもの」と「こだわり的なもの」の2つに分類できないかと考えられたのです。
著書の内容から、〝三つ組″の中の、「1.対人相互反応の障害」と「2.コミュニケーションの障害」は、「社会的コミュニケーションの障害」といった〝社会的なもの″に統合され、それ以外が「限定された反復的な行動様式」といった〝こだわり的なもの″へと集約される〝2因子モデル“へと変更になったとの記載があります。
つまり、DSM-Ⅳの〝三つ組″といった〝3因子モデル″はDSM-5では〝2因子モデル″へと修正されたということになります。
そして、〝社会的なもの″といった「社会的コミュニケーションの障害」の構成要素は、社会的相互反応、非言語的コミュニケーション、対人関係の3つになっています。
また、〝こだわり的なもの″といった「限定された反復的な行動様式」の構成要素は、常同反復性、儀式的行動・思考、興味の限定、感覚の異常の4つになっています。
上記の内容の中で大きな変更点が〝感覚の異常″が新たに加わったことです。
〝感覚の異常″は、ASDの人たちの困り感として非常に多く上がってくるものですが、DSM-Ⅳまでは構成要素として記載されていなく、DSM-5から新たに導入されました。
以上、【自閉症スペクトラム障害の特徴について】三つ組とは何か?2因子モデルとは何か?について見てきました。
著者がかつて自閉症について学びはじめた頃には、〝三つ組″がよく自閉症の特徴として説明されていました。
その後、医学が進歩する中で、自閉症やアスペルガー症候群などは自閉症スペクトラム障害へと統合され、また、他の発達障害との併存診断も可能となりました。
感覚過敏・鈍麻など感覚の問題も取り上げられる機会が増えてきました。
医学の進歩と共に、私たちの身の周りには発達障害への認知が高まってきました。
発達障害への認知が高まったことは療育に携わる人間として嬉しいことですが、正しい知識や理解をしていかなければ差別や偏見などに繋がる危険性もあります。
医学の知識は非常に膨大で難しいと感じる内容も多くありますが、正しい知識を得るためにはとても大切なことだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も医学の領域からも発達障害への知識を収集していきながら、正しい知識を学び続けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「神経発達症/神経発達障害とは何か?」
下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.