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【自閉症への合理的配慮について】こだわり行動を例に考える

投稿日:2023年6月6日 更新日:

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴とする発達障害です。

DSM-5(米国精神医学会の精神疾患の診断分類 改訂第5版)によれば、自閉症スペクトラム障害の主な特徴として、〝社会的コミュニケーションの障害″と〝限定された反復的な行動様式″の2つがあります。

前者が〝社会的なもの″、後者が〝こだわり的なもの″になります。

社会的なもの″が目に見えやすい特徴であるのに対して、〝こだわり的なもの″は目に見えにくい特徴があります。

そのため、〝こだわり的なもの″は、「合理的配慮」が得られにくいと言われています。

 

それでは、自閉症児者の〝こだわり行動″への合理的配慮にはどのような方法があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症への合理的配慮について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながらこだわり行動を例に理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.」です。

 

 

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自閉症への合理的配慮:こだわり行動を例に

以下、著書を引用しながら見ていきます。

DSM-5によるとASDの限定された反復的な行動様式には、組織化と計画の障害がある、とされています。つまり、情報を組織化し、計画的に組み立てる能力に問題があることを想定しています。つまり、そういう能力に障害があるなら、情報を構造化することが合理的配慮であると考えられます。

 

著書の内容から、自閉症の〝こだわり行動″への合理的配慮には、〝情報を構造化する″といった方法があると考えられています。

なぜなら、こだわり行動(限定された反復的な行動様式)の背景には、情報を組織化(まとめ上げ)して、計画的に情報を組み立てる力の問題があると考えられているからです。

 

 


それでは、情報を構造化する方法には具体的にはどのような方法があるのでしょうか?

構造化で代表的な方法として、〝空間の構造化″、〝時間の構造化″、〝手順の構造化″があります。

 

次に、上記の3つの構造化について著者の経験談も交えてお伝えします。

 

事例1:空間(部屋)の構造化

空間の構造化″とは、例えば、○○の部屋は○○する場所、といったように、その空間(部屋)は何を目的として使用するものなのかを見える化(わかりやすく)するなどがあります。

著者の療育現場では、パーテーションなどの仕切りを活用することで部屋の用途をわかりやすく構造化しています。

Aの部屋は体を使って遊ぶスペース、Bの部屋は一人で集中して作業をするスペース、Cの部屋はおやつを食べるスペース、といった感じです。

空間を構造化することで、徐々に子どもたちは部屋の用途に応じた過ごしをするようになっていきます。

 

事例2:時間(スケジュール)の構造化

時間の構造化″とは、例えば、一日のスケジュールを文字や写真で時系列に表示するなどがあります。

著者の療育現場では、ホワイトボードにその日の活動予定や送迎順などを表示するようにしています。

自閉症の子どもたちにとっては、先の予定がわからないと混乱することがあります。また、口頭よりも視覚情報の方が理解しやすい傾向があります。

こうした配慮を行うことで、子どもたちは、日々の活動に安心感を持って活動する様子が見られています。

 

事例3:手順(やり方)の構造化

手順の構造化″とは、例えば、事業所に到着した際にすること→①カバンをしまう→②手を洗う→予定の確認、などがあります。

上記の①~③も子どもの状態像に応じてさらに細かい手順で伝えていく場合もあります。

残念ながら、著者の療育現場では、〝手順の構造化″はまだ視覚的な情報での伝達(表示)が少なく、口頭での伝えが多いため課題があるといった状態にあります。

その中でも、口頭指示はできるだけ短い言葉で少ない情報量を提示するようにしています。

こうした配慮を日々繰り返すことで、子どもたちは様々な活動において〝習慣化″してくる部分が増えていくといった印象があります。

 

 


以上、【自閉症への合理的配慮について】こだわり行動を例に考えるについて見てきました。

私たちは、普段の生活の中でわからないことを自分で構造化することを自然と行ってきています。

例えば、スケジュールをメモしたり、部屋の配置を考えたり、やり方などのマニュアルを作成したりしている方も多いと思います。

自閉症の人たちは、情報を構造化することの苦手さがあるため、ある程度構造化された環境設定が必要となります。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症の特徴について理解を深めていきながら、どの点に配慮する必要があるのかを実践を通して学んでいきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【合理的配慮とは何か?】発達障害児・者支援の経験を通して考える

関連記事:「自閉症への支援-構造化と合意から考える-

 

下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.

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-合理的配慮, 自閉症

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