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【自閉症の進路で大切なこと】〝自己選択″と〝自己決定″を通して考える

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自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。

自閉症児への支援で大切なことの一つに、〝将来を見据えた支援″があります。

多くの保護者を初めとした支援関係者にとって、自閉症児が将来どのような〝進路″を辿って行けばよいか難しい選択に迫られることがあります。

 

それでは、自閉症の進路で大切な視点としてどのようなものがあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症の進路で大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、〝自己選択″と〝自己決定″を通して理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.」です。

 

 

自閉症の進路で大切なこと:〝自己選択″と〝自己決定″を例に

以下、著書を引用しながら見ていきます。

ASDの生徒は「将来の仮定」としての話をすること、考えることを苦手にしている場合が多いです。これは一般的に「想像する力」が弱いからだと捉えられています。

 

ASDの生徒は、「確信をもって自分で決めること」にも弱点を見せます。それは、これまでの経験上、「自分で決めたことは大方、批判されるか否定されるか」のいずれかだったので、「決めることに自信がもてない」からでありましょう。

 

こうしたことにならぬように、自己選択や自己決定の機会を積極的に設けて、成功体験を積み重ねさせる必要性があります。

 

著書の内容から、自閉症の特徴には、〝将来を仮定すること″や〝自己決定″に苦手さがあると考えられています。

前者が、〝想像力の弱さ″、後者が、〝自己効力感の低さ″が影響していると言われています。

こうした特徴を踏まえて、自閉症の〝進路″で大切なことは、自分で自分の道を選び決めたといった〝自己選択″と〝自己決定″が重要になります。

そのためも、子供の頃から、〝自分で物事を選択し決めたという経験″の積み重ねが必要になります。

自己選択″と〝自己決定″は、何も〝大きな選択″からではなく、日頃から小さな出来事でも自らの意思を持って選び決めるということが大切です。

ここで、大切なことは、自閉症児にはある程度、周囲の大人が〝トップダウン的アプローチ″を活用して、その子にとって良い環境を整えておくことも必要だと言えます。。

想像力の弱さ″が影響して自ら〝自己選択″を取ることに苦手さのある自閉症児は、周囲の大人が〝自己選択″しやすい環境を調整する必要があります。

そして、その中で(選択肢のある中で)、自ら選び、その選択によって自信を得ることができたという経験が徐々に〝自己効力感″を高めることに繋がっていきます。

そして、思春期前には、できるだけ周囲の大人たちが失敗体験を生まない環境を調整していくことを心がけ、思春期以降には、自らの試行錯誤の意思を大切にしてあげることもまた必要な取り組みです。

 

 

著者の経験談

著者は療育現場及び、身近な発達障害児・者との関わりを通して〝進路″を決める上で大切にしていることがあります。

それは、〝自己選択″〝自己決定″に至るためには、〝意欲のエネルギー″が必要だということです。

人は人生の中で、自分で〝選び″、自分で〝決める″といった場面に多く出会います。

その際に、〝選びたい!″〝決めたい!″といった〝意欲″が経験の中で育まれていることがとても大切なことだと思います。

人から言われて仕方なくとった選択、無理強いされて行った選択、あるいは、自分で決めたが結果、周囲の否定で終わったなど、こうした結果から人の〝意欲″が育まれることは難しいと思います。

発達障害児・者は自分で物事を決める難しさがあることに加えて、失敗経験も配慮や支援が無い状態では多く起こる可能性があります。

そのため、自分が取った〝選択″と〝決定″が結果として、〝自信″に繋がるような関わり方・対応がその後の〝進路″を決定する力にも影響してくると感じています。

そのためにも、普段から〝意欲のエネルギー″をしっかりと充電していくことが取り組みとして大切だと言えます。

 

 


以上、【自閉症の進路で大切なこと】〝自己選択″と〝自己決定″を通して考えるについて見てきました。

自分で物事を選び決めることは簡単なようでそうでないことも多くあります。

ましてや、進路といった今後の人生に大きく影響することはなおさら難しさが出てくると思います。

繰り返しになりますが、大切なことは、幼少期から意欲のエネルギーを育むことだと思います。

人は何かに挑戦しその結果をどう受け止めるかで成長度合いが変化してくるからです。

そして、挑戦の基盤は、意欲のエネルギーがどれだけあるかにかかっています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちの自己選択と自己決定の力を育んでいけるように、意欲のエネルギーをしっかりと充電していけるような関わり方をしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「発達障害の進路選択について-自閉症を例に考える-

関連記事:「自閉症の療育-思春期前後で大切にしたいこと-

関連記事:「自閉症療育で大切な視点-トップダウンの支援について-

 

 

白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.


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