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時間感覚障害

【自閉症の時間感覚障害への対応】療育経験を通して考える

投稿日:2024年4月1日 更新日:

自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)″の人たちの中には、〝フラッシュバック″といった、突如、過去の嫌な体験が頭を過りパニックになることがあります。

今とは関係のない過去の嫌な出来事の記憶であるため、当の本人は当然のこと関わり手も困惑してしまうことがあります。

著者の療育現場には、自閉症児が多くいますが、中には〝フラッシュバック″によるパニック状態が見られるケースも時々あります。

こうした〝フラッシュバック″は、〝時間感覚障害″とも言われています。

 

それでは、自閉症に多く見られる時間感覚障害とは一体どのような障害であり、そして、どのような対応方法があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症の時間感覚障害への対応について、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、その概念と対応方法について理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「前田智行(2023)子どもの発達障害と二次障害の予防のコツがわかる本.ソシム.」です。

 

 

時間感覚障害とは何か?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

ASDの人は、負の記憶がのこりやすく、昨日の嫌な出来事と1か月前の嫌な出来事、あるいは何年も前の嫌な記憶などが、時間軸と関係なく思い出される現象が多いことが知られています。この記憶が時間に関係なく保持されている状態を指して、「時間感覚障害」と表現することもあります。

 

著書の内容から〝時間感覚障害″とは、〝マイナスの記憶が時間軸とは関係なく保持されている状態″を指します。

つまり、過去にあった出来事が、それがあたかも今目の前で生じているかのように思い出される状態などのことを指します。

ASDの人たちによく見られるもので、マイナスの記憶が保持されやすいASDの人たちにとって、過去のマイナスの記憶が時間軸に関係なく、突如想起する場合があります。

今の出来事とは関係がなく想起されることもあるため(今生じているかのような過去の体験)、本人は困惑し時にはパニックになることもあります。

通常、私たちは、ネガティブ感情の記憶は日を追うごとに忘れていく傾向があります。

仮に想起した場合も、今の出来事と何らかの関連から思い起こされる場合が多くあるかと思います。

そして、その記憶は過去の出来事だと認識できます。

一方で、ASDの人たちの中には、映像記憶が非常に優れている人たちも多くいます。

映像記憶が優れていると、目で見た情景がまるでカメラで撮ったかのように保存されているという人もいます。

また、私たちの多くは、様々な体験の記憶を体制化させて情報として保持する傾向があります。

つまり、様々な記憶は断片的に保持されているわけではなく、関連づけられてまとまった意味として保持されていると言えます。

一方で、ASDの人たちは、物事を関連づけることの弱さ(中枢性統合の弱さ)から様々な記憶が断片的に保持されている傾向があります。

このような情報処理の特異性もあり、ASDの人たちには、〝時間感覚障害″が見られるのではないかと著者は感じています。

 

 


それでは、ASDの人たちによく見られる〝時間感覚障害″にはどのような対応方法が効果的なのでしょうか?

以下、この点について見ていきます。

 

時間感覚障害への対応について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

日記を描いて、並べる(時間を視覚化して感覚を育てる)

 

著書には〝時間感覚障害″への対応として、情報を可視化(日記など)して時間軸で並べることで、時間の感覚を育てることができるとの記載があります。

視覚情報の整理を得意とするASDの人たちにとって(すべてのASDの人が該当するわけではありませんが)、様々な情報を視覚情報に残していく中で、それらの情報を時系列で残していくことが有効だと考えられています。

例えば、日記をつけることは、過去の記憶→より最近の記憶→今の記憶、といった記憶の整理を育てる力に繋がるというわけです。

まだまだエビデンスは不十分との記載がありますが、非常に面白い取り組みだと著者は感じます。

 

 


以上、【自閉症の時間感覚障害への対応】療育経験を通して考えるについて見てきました。

自閉症の人の〝フラッシュバック″は突如として起こるため対応に苦慮することがあります。

こうした状態を中・長期的に支援する方法として、今回見てきた対応方法には大きなヒントがあると考えています。

それは、即時的な対応ではなく、〝時間感覚を育てる″といったアプローチ方法が取り入れられているからです。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症児・者に見られる様々な困り事に対して、様々な解決方法を見出していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【自閉症の負の記憶への対応】3つの対応方法を通して考える

 

前田智行(2023)子どもの発達障害と二次障害の予防のコツがわかる本.ソシム.

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