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【自閉症の共感性の特徴】認知的共感・情動的共感・自閉的共感性の仮説をキーワードに考える

投稿日:2024年2月13日 更新日:

 

自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、対人・コミュニケーションの困難さやこだわり行動を主な特徴とする発達障害です。

自閉症児・者は相手の心の状態を読み取ることを苦手としているため〝共感性″にも特徴があると考えられています。

 

それでは、自閉症の共感性にはどのような特徴があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症の共感性の特徴について、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら認知的共感・情動的共感・自閉的共感性の仮説をキーワードに理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「藤野博(2023)自閉症のある子どもへの言語・コミュニケーションの指導と支援.明治図書.」です。

 

 

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共感性とは何か?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

共感とは、相手の気持ちがわかること、相手の身になって感じることができることで、人と人をつなぐとても重要な心の働きです。

 

共感は感情の理解にも関係します。

 

最も信頼できる情報源は表情です。

 

著書の内容から、〝共感″性とは、人の気持ちがわかること、人の立場になって感じることができる心の働きのことを指します。

また、著書にあるように、共感は感情とも関連があります。

人には、喜怒哀楽といった様々な感情がありますが、様々な感情を状況も含めて理解することが共感性には必要です。

そして、感情理解の際に非常に重要な要素が人の〝表情″です。

人の心は表情にあらわれるとも言いますが、自閉症児・者にとって表情理解は定型発達の人たちよりも苦手としています。

それは、本来の脳の特性上、人の視線や表情に注意が向きにくい傾向があるからです。

 

 

自閉症の共感性の特徴:認知的共感・情動的共感をキーワードに

〝共感″には、2つの側面があると著書には記載があります(以下、著書引用)。

認知的共感とは相手の心情が理解できること

クールな共感

 

情動的共感とは相手の身になって感じることができること

ホットな共感

 

著書には、〝共感″性の二つの側面として、〝認知的共感″と〝情動的共感″があるとしています。

前者の〝認知的共感″が、相手の心情の理解後者の〝情動的共感″が、相手の身になって感じることです。

簡単に言えば、〝頭でわかること”〝体でわかること”、といっても良いかと思います。

 


それでは、自閉症の共感性にはどのような特徴があるのでしょうか?

引き続き著書を引用しながら見ていきます。

自閉症のある子は認知的共感には問題がみられるのに対し、情動的共感には定型発達の子と比べて著しい違いはないという知見もあります。つまり、相手の気持ちを理解することは困難を抱えているものの、感じることはできるということです。

 

著書の内容から、自閉症児は定型発達児よりも共感性は苦手としているものの、その詳細を見ると、認知的共感に苦手さがある一方で、情動的共感はそれほど問題がないということが言えます。

著者もこれまで多くの自閉症児との関わりがありましたが、他児が泣いたりイライラしている様子を見て、慰めたり励ますなど、共感的行動(利他的行動)が見られる事例は多くありました。

一方で、他児が泣いたりイライラしている気持ちを言葉にすることはなかなか難しいといった実感もあります。

困っていることは感覚的に分かるけれども、その意図や理由がうまく分からないという印象です。

つまり、体では分かるが、頭ではよく分からない、といった状態なのだと思います。

これが著書でいう情動的共感には問題がなく、認知的共感を苦手としている例だと思います。

 


自閉症児・者には、お互いの特性が似ている場合、共感性が高く見られるという知見もあります。

以下、この点について見ていきます。

 

自閉的共感性の仮説について

自閉症の人は他の自閉症の人に共感するといったことを〝自閉的共感性の仮説″と言います。

これはまだ仮説の段階ですが、詳細について見ていきます(以下、著書引用)。

自閉症のある人同士の共感的な交流の可能性です。つまり、同じ特徴をもつ者同士なら、無理に相手に合わせる努力をせずとも、その人自身のままで他の人と自然な共感に基づく関係が築けるのではないかということです。

 

自閉症には、興味関心の偏りや自分のやり方を優先する特徴があります。

また、他者に合わせることも苦手としています。

そのため、本来の自分を発揮してより自然体でいるためには、同じような特徴のある人の方がお互いに気をつかわずにいることもできます。

また、興味関心の偏りへの共感性が高いと繋がりを強く意識することもできます。

著者も自閉症児・者同士の関わりを見て、相手に気をつかわずに、自然体かつ自分のペースでうまく過ごしている様子もこれまでの経験から見ることが多くありました。

こうした経験と知識とを踏まえると、自閉症児・者は共感性に問題があるというよりも、特徴的な共感性を示すと言った方が適切なようにも思います。

 

 


以上、【自閉症の共感性の特徴】認知的共感・情動的共感・自閉的共感性の仮説をキーワードに考えるについて見てきました。

自閉症の共感性に関する研究はまだまだ途上であると思います。

一方で、今回見てきた内容から自閉症には特徴的な共感性の様相がある言うこともできます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で多くの自閉症の子どもたちとの関わりの中で、共感的態度を持って接していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「自閉症と共感性について:最近の研究動向から両者の関連性を考える

 

藤野博(2023)自閉症のある子どもへの言語・コミュニケーションの指導と支援.明治図書.

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