自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわりを主な特徴とする発達障害です。
対人コミュニケーションの困難さは、生活の中で表面化されやすいことが多いため、周囲からも困り感として理解されやすい傾向があります。
一方で、〝こだわり″とはその背景要因を把握していないと理解されにくいことが多くあります。
それでは、自閉症の〝こだわり″は一体どこからくると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症の〝こだわり″はどこから来るのか?について、〝注意の特徴″と〝弱い中枢性統合″の視点から理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「千住淳(2014)自閉症スペクトラムとは何か-ひとの「関わり」の謎に挑む.ちくま新書.」です。
自閉症の〝こだわり″はどこから来るのか?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
「くっつきやすくはがれにくい」注意や、全体像でなく細部に向く注意は、環境の変化に合わせて柔軟に行動を変えたり、他の人と同じようなものに興味を持ったりすることを妨げるかもしれません。
著書には、こだわりの背景の可能性として、二つの要因を指摘しています。
それは、①〝注意の特徴″である〝くっつきやすくはがれにくい″注意、②〝弱い中枢性統合″である〝全体像でなく細部に向く注意、になります。
つまり、①と②が影響して、環境の変化に応じて柔軟に行動を修正する難しさが生じたり、周囲と比べて異なる(限定された)興味関心を持つことが〝こだわり″として映るということです。
もちろん、〝こだわり″の背景要因はまだまだ研究途上ではありますが、著者が関わる自閉症児・者の行動特徴を見ても、以上の①と②は〝こだわり″の背景要因として影響していると考えます。
例えば、時間へのこだわり、順番へのこだわりなどは放課後等デイサービスに通所してきている自閉症児によく見られるものです。
そして、こだわりの行動をよく観察していくと、毎回決まって同じところ(同じような事柄)に注意が向く、一度、注意が向くとそこからなかなか注意がそれない(解決するまで)といった特徴があります。
こうした特徴は、これまで見てきた①と②が強く影響しているように思います。
周囲から見ると〝なぜ、ここまでこだわるのか?″、〝少しわがままではないか?″と映ってしまうこともあります。
しかし、著者の経験上、〝こだわり″に対して適切な理解と配慮を示していかないと、さらに〝こだわり″はエスカレートしていき、最終的にはパニックやかんしゃく行動が増えていくことになりかねません。
そのため、〝こだわり″の背景要因を考えていくことはその子の発達特性を理解する上で必要不可欠であると著者は考えています。
〝こだわり″が持つポジティブな面について
一方で、こうした〝こだわり″が持つ特徴を肯定的と捉える見方もあります。
それでは、引き続き著書を引用しながら見ていきます。
時としては常同行動やこだわりとして日常生活を困難にする「障害」となり、時としては「独自の才能」として開花する、という可能性が考えられます。
逆に考えると、物事に対する注意がそらされやすく、物事の細部でなく全体像に注意が向いてしまう「定型発達者」にとって、このような「才能」を開花させることは容易ではないかもしれない、ということもできます。
著書の内容から、〝こだわり″は時として〝独自の才能″として開花することがあると記載されています。
確かに、定型発達児者と比べ、自閉症児・者が持つ細部に注意を向ける特徴や、一度向けた注意がなかなか離れることがないといった特徴は、勉強や仕事などによっては強みとなることがあります。
勉強において、一度、勉強の内容に興味を持ち、そのやり方が効果を発揮するものであれば周囲の人より抜きん出て力を発揮する可能性があります。
また、仕事においても同様に過剰に没頭する力により社会に対して成果を出せる可能性があります。
ポイントは、細部知覚の力を発揮できる(その人が興味のある対象)ものだということです。
以上、【自閉症の〝こだわり″はどこから来るのか?】〝注意の特徴″と〝弱い中枢性統合″の視点から考えるについて見てきました。
自閉症の人たちが〝こだわり″があることは徐々に社会の中で認識されるようになってきた感じがしています。
一方で、〝こだわり″の背景要因や〝こだわり″の肯定的な見方についてはまだまだ理解や実践が不足している印象があります。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症のこだわりへの理解を深めていきながら、その知見を実践に繋げていけるように日々の療育を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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千住淳(2014)自閉症スペクトラムとは何か-ひとの「関わり」の謎に挑む.ちくま新書.