自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)の特徴の一つに〝こだわり″があります。
〝こだわり″とは、興味関心が限定されている、自分のやり方やペースの維持を優先するといった特徴があります。
それでは、〝こだわり″の評価にはどのようなものがあるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症の〝こだわり″の評価について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、〝MSPA″を例に考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「船曳康子(2018)MSPA(発達障害の要支援度評価尺度)の理解と活用.勁草書房.」です。
〝こだわり″の評価について:〝MSPA″を例に
以下、著書を引用しながら見ていきます。
こだわりの強さと奇異さ、もしくは柔軟性の乏しさが、自身および他者の日常生活をどれくらい阻害しているのかをこの項目で評定します。
こだわりの対象は何でもよく、多岐にわたります(もの、特定分野の知識、やり方、考え方、順番、ルール、感触、空想、回転物を眺めるなど)。
著書の内容では、〝MSPA″の評価項目の一つである〝こだわり″の評定についての記載があります。
その中の一部(引用文)を見ると、こだわりの対象は特に関係なく、こだわりの強さ・奇異さ・柔軟性の乏しさが、どの程度生活にマイナスな影響を及ぼしているかを評価するものになっています。
〝こだわり″の内容は、上記にあるように様々な対象があり、さらに、その対象の中身も人それぞれ様々です。
〝こだわり″は成長によりその対象が変化する場合もありますが、〝こだわり″といった特性そのものは一定量残り続けると考えられています。
そのため、〝こだわり″の対象、および、対象の変化よりも、どの程度の強度があるのか、そして、その〝こだわり″が生活に与えるマイナスの影響を考慮することが〝MSPA″の評価では求められています。
著者の経験談
著者はこれまでの療育経験を通して、様々な自閉症の〝こだわり″を見てきました。
例えば、スケジュール管理の厳しさ、急な予定の変更によるパニック、興味・関心が特定の対象に限定されていること、ルールを頑なに守ろうとすること、幾何学模様や車輪の回転への興味、道順や手順へのこだわり、物の配置、など上げればきりがないほどあったように思います。
こうした〝こだわり″に対して著者が関わりの中で対応に苦労してきたものとして、先に見た〝こだわり″の強さと、〝こだわり″が与えるマイナスな影響です。
例えば、ルールを頑なに守ろうとすることは、その〝こだわり″が強いと、他のお子さんに対してもルールを守ることを指摘しようとします。
また、ルールによって自分自身を拘束してしまうこともあります。それは、他者が他のルールの提案をしても受け入れることが容易ではありません。
その他、スケジュール管理の厳しさでは、その〝こだわり″が強いと、客観的に見て、もっと効率的な方法があってもそれを受け入れず、自分が当初立てた予定に固執する傾向があります。
さらに、自分のスケジュールが崩れることを拒み、周囲も巻き込んでしまうこともあります。
こうした例は、著者が療育現場で経験してきた一部ですが、難しいのは〝こだわりが自他にマイナスに働く″ことだと感じています。
そのため、〝こだわり″を評価する際には、著書にあったように、〝こだわり″の強度(奇異さ・柔軟性の乏しさ)と自他に与えるマイナスの影響度の2点から評価していくことが大切だと考えます。
一方で、〝こだわり″は環境・状況次第ではプラスに働くこともあります。
人によっては、特技や長所にもなり得ると思います。
そのため、〝こだわり″を強みに変えていく関わり・対応も同時に大切な視点となります。
以上、【自閉症の〝こだわり″の評価について】〝MSPA″を例に考えるについて見てきました。
〝こだわり″は自閉症を特徴づける大きな要素です。
そのため、〝こだわり″を理解していくことは、自閉症児・者を理解していくことに繋がります。
そして、〝こだわり″を評価する際には、プラスの面とマイナスの面の双方があるといった前提に立ち、マイナス面では、〝こだわり″の強度と、〝こだわり″が自他に与えるマイナスの影響度を評価していくことが大切になります。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症児・者の理解を深めていけるように、〝こだわり″といった特性についてさらに学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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船曳康子(2018)MSPA(発達障害の要支援度評価尺度)の理解と活用.勁草書房.