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【自閉症から見た心の理論の困難さの要因について】療育経験を通して考える

投稿日:2023年4月15日 更新日:

「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。

心の理論の困難さは自閉症の人に見られることがわかっています。

著者の療育現場でも自閉症児が多くいますが、こうした子どもたちの行動を見ていると心の理論の理解に難しさを感じることがよくあります。

 

それでは、心の理論の困難さにはどのような要因があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症から見た心の理論の困難さの要因について、臨床発達心理士である著者の療育経験も交えながら考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.」です。

 

 

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自閉症から見た心の理論の困難さの要因について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

ガーンズバッカーらは、自閉症児が「心の理論」の理解に困難があること、他者と視線が合わなかったり他者の表情の理解に困難があることのそれぞれの原因について、多くの先行研究を引きながら詳しく検討した。

 

著書の内容から、自閉症の心の理論の困難さに関する研究として、これまで視線の共有の難しさや表情理解の困難さから検討が行われてきています。

 

そして、先行研究の結果、以下のことが分かってきました(以下、著書引用)。

ガーンズバッカーらは、自閉症児において他者と視線が合わなかったり他者の表情の理解に困難があったりするのは、彼らがアイ・コンタクトを脅威刺激と感じやすいからだと考えると説明がつきやすいと結論している。

 

著書の内容から、視線の共有の難しさや表情理解の困難さの要因として、自閉症の人たちにとって他者のアイ・コンタクトは脅威刺激になるためと記載されています。

定型発達児にとって、他者の視線は、他者の行動意図などを知る重要な手がかりになります。

例えば、天気の悪い日に窓の外を見て雨が降っているという他者の視線をモニターすることで、その後に傘を取るという行為と結びつくことで、他者の視線の背後にある行動の意図を感じ取れるようになるなどがあります。

さらに、他者と視線を共有することで、状況理解や相手の感情を理解する力が育まれていきます。

また、人が様々な場面で見せる表情を見ることで、人の背後にある感情を理解することができるようになります。

こうした、視線を通して相手の意図や状況を推論すること、表情から相手の感情を理解することが、自閉症の人たちにとっては、他者の視線が脅威刺激となるため困難だと考えられています。

 

 

著者の経験談

著者が見ている自閉症児においても、視線の共有や表情理解の難しさがあることは実感しています。

大きな特徴としは、〝視線が合いにくい″ことがあります。

また、近くに大人がいて視線を送っていても〝視線に気づきにくい″こともあります。

こうした〝視線が合いにくい″〝視線に気づきにくい″ことの背景に、〝他者の視線が脅威刺激″となっているかまでは著者の感覚ではよくわかりませんが、一つ実感としてあるのは、〝人の視線より興味のある物″に注意が向きやすい傾向があるように思います。

それは、近くに人がいても自分の興味のあることに没頭している様子から実感できます。

また、人によりますが、会話の中で、著者の目に注意を向け続けるお子さんもおります。

そのお子さんは人の視線が脅威刺激というよりも、目を見続けることで人の心を真剣に読み取ろうとしているように見えます。

 

一方で、他者の視線が脅威刺激だと感じた経験も過去にあります。

自閉症のお子さんで、そのお子さんと偶然目がしっかりと合う場面がありました(普段はほとんど合いません)。

その後、その子は少し混乱しているかのような表情と声を上げる様子が見られました。

その時に、著者は直感的に視線による脅威をその子が感じており、それは、著者が送っているまなざしの意味がよくわからないものに映っているのではないかと感じました。

 

このように、著者の療育経験を通しても、自閉症の人たちには、〝視線が合いにくい″〝視線に気づきにくい″ことを感じます。

そして、視線が合いにくいということは、他者の表情を見るということが相対的に少ないとも言えます。

そのため、著者が関わりの中で見せる様々な感情に対して、表情を手掛かりに理解しているというよりも、声の感じや言葉による表現・説明などが重要な情報源となっていると感じることもあります。

 

 


以上、【自閉症から見た心の理論の困難さの要因について】療育経験を通して考えるについて見てきました。

心の理論の困難さの背景には、視線や表情などが影響しているということは、これまでの研究知見だけではなく、著者の療育経験からも納得できる事実だと思います。

そして、心の理論の困難さの背景要因を理解していくことは、自閉症の人たちの理解と支援に近づいていくために必要なことだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も心の理論について学びを深めていきながら、療育現場に応用できる視点を獲得していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【心の理論とは何か?】療育経験を通して考える

 

子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.

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-心の理論, 自閉症

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