〝自己効力感″とは、ある状況の中で必要とされる行動や課題に対して、自分にはできると思えるか、といった力のことを言います。
つまり、〝自己効力感″の高さとは、自分には〝できる″といった思いが強い状態だと言えます。
〝自己効力感″は、幼児期頃から急速に発達がはじまり、その後、児童期、青年期と各ライフステージを特徴づける様相を見せながら変化していくと考えられています。
それでは、自己効力感の発達段階は具体的にどのような変化を遂げていくのでしょうか?
そこで、今回は、自己効力感の発達段階について、臨床発達心理士である著者の経験談から、学童期を例に理解を深めていきたいと思います。
自己効力感の発達段階について
今回は、〝小学校低学年″と〝小学校高学年″の事例を参照しながら、〝自己効力感″の発達段階について見ていきたいと思います。
小学校低学年の事例
著者は小学生を対象に放課後等デイサービスで療育をしています。
小学校低学年の子どもの特徴として、〝自己効力感″が高いといった印象を受けます。
例えば、鬼ごっこをする際は〝自分は捕まらない!″、戦いごっこでは〝自分は強い!勝てる!″といった根拠なき自信がよく見られます。
制作遊びをする際にも、取り掛かる前に、〝自分はうまくできる!″〝すごいものを作ることができる!″といった思いを持って取り組もうとする姿勢を感じます。
そのため、様々な活動に積極的に参加する様子が多いように思います。
そして、活動内容がその子の興味・関心を引くものであれば自信を持って参加している印象があります。
もちろん、発達に躓きのある子どもたちですので、状態像も非常に多様です。
中には、〝自己効力感″に必要な〝自我″がしっかりと育っていない子どももいます。
一方で、後に見る高学年とは異なり、〝自己効力感″が全般的に高いといった印象を受けます。
そして、〝自己効力感″もある特定の対象にではなく、全般的な意味で高いといった感じがします。
小学校高学年の事例
小学校低学年と比べて、高学年になると〝自己効力感″の様相も変化してくるといった感じがあります。
例えば、〝サッカー遊びならうまくできる!″〝お絵描きはうまくできる!″〝追いかけっこなら勝てる!″といった自信がある一方で、〝野球遊びはうまくできない!″〝工作はうまく作れない!″〝自転車等乗り物はうまく乗れない!″といった自信のなさ、つまり、活動内容によって〝自己効力感″に変動が見られる感じがします。
小学校低学年の頃には、何でもがむしゃらに挑戦していた子どもも、高学年になると活動内容によっては、やる・やらないが分かれてくる傾向があると思います。
こうした変化は、経験を重ねていく中で、自分の得意・不得意を理解してくるからだと思います。
つまり、これまで全般的に自信があったことが、少しずつ、自分を客観視できるようになり、〝自己効力感″が特定の対象に絞られていくということです。
客観視できるためには、経験を積み重ねていく中で、周囲の中での自分を理解していく必要があります。
周囲よりもできることは得意に繋がり、その対象に取り組む際には、高い〝自己効力感″を持って臨むことができます。
そして、その結果、取り組む対象が好きになり、自分に自信が持てることに繋がってきます。
著者が関わってきた子どもたちの中にも、〝お絵描きが得意″〝足が速い″〝球技が得意″〝工作が得意″〝格闘技が得意″〝おしゃべりが得意″といった自分の得意を発見し伸ばしていくことで〝自己効力感″が高まっていったと感じる事例は多くあります。
小学校低学年の頃と比べて、より自己効力感が特定の対象や状況に絞られていくという感じがあります。
逆に、他者の得意を発見し理解する力もこの時期に伸びてくるといった印象があります。
以上、【自己効力感の発達段階について】療育経験を通して考えるについて見てきました。
これまで、小学校低学年と小学校高学年の〝自己効力感″の特徴について著者の療育現場での実感を取り上げて見てきました。
大切なことは、様々な経験をすること、その中で、自分が好きなこと・得意なことを発見し、その力を伸ばしていくことだと思います。
そのためには、関わる大人が日々の子どもの様子をよく観察し、挑戦した過程やできるようになった所を褒める関わりがとても大切だと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちの自己効力感を高めていけるように、様々な活動に挑戦できる環境作りに加え、挑戦の過程をよく観察し褒めていけるように子どもたちに接していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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