〝臨床発達心理士″とは、〝発達的視点″を持ちながら現場のニーズを解決していく実践者のことを言います。
そして、実践の根拠となる学問領域の中心が〝臨床発達心理学″になります。
このように、実践と根拠(理論)は相互に行き来しながら発展していきます。
それでは、実践を形にしていく・根拠を求めていく方法としてどのようなことが大切となるのでしょうか?
そこで、今回は、臨床発達心理学に学術的根拠を求める方法について、臨床発達心理士の著者の療育経験を踏まえて考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「本郷一夫・金谷京子(編)(2011)シリーズ 臨床発達心理学・理論と実践① 臨床発達心理学の基礎.ミネルヴァ書房.」です。
臨床発達心理学に学術的根拠を求める方法について
著書の中では、実践に根拠を求める(作る)方法として5つのポイントを上げています。
以下、5つのポイントを引用し、それぞれについて著者の経験をお伝えしていきます。
第1に、個別の実践者や研究者の思いや主張を体系化することである。
現場に関わる実践者や研究者が実践を記録し、それを体系化させていくことはとても大切な方法です。
著者は療育での実践で気づいたこと、子どもたちの変化を記録に残すことを積み上げる機会があります。
こうした日々の気づきを記録していくことで、それが長いスパンの中で意味を持って形となることがあります。
そして、ある程度形にしていくためには、学術的領域との関連づけを行う必要もあります。
第2に、実践者のことばに出されたものだけではなく、暗黙に実践されていることを取り出す。
実践者の中には、実践で取り組まれている内容(言葉にできるもの)と、暗黙に実践されていることとの間にズレが生じていることもあります。
著者も、自分の実践を振り返って見ても、実際の取り組み内容を自分の言葉に置き換えた際に、その時には、その取り組みの根拠をうまく説明できていたと思っていても、実際のところそうではなかったという経験が多くあります。
このように、暗黙で実践していることを取りだすためには、根拠となる視点を考え直す・捉え直す作業が大切になってくると感じています。
第3に、実践について第三者・研究者の立場からの分析を加えていく。
実践者の思い込みで良い実践を行っていると錯覚してしまうことも現場では起こりうることだと思います。
そのため、客観的な視点を加えるために、第三者・研究者の立場から分析を加えていくことも大切です。
著者は自分の実践を定期的に振り返る機会を作るようにしています。
それは、他者からのフィードバックを受けたり、様々な理論を学ぶ中で自分の実践を見直すという作業です。
第4に、逆に基礎的な研究や客観的な研究を実践に翻訳し、臨床的な場面での手立てへと移していく。
様々な研究知見には、現場に応用できそうな優れたものが多くあります。
こうした自分のフィールドに基礎的研究や客観的研究を応用(翻訳)していくことも大切です。
著者も自分の実践を振り返るために、学術的根拠を求める方法もとりますが、逆に、現場に使えそうな研究知見を現場での実践に取り入れることもあります。
第5に、数量的エビデンスの蓄積にも努力する。
エビデンスは最近、様々な分野で重視されるようになってきています。
自分の実践を数量的に把握していくことは、数量的エビデンスを作るということから、一つの客観的指標(根拠)を作るものでもあります。
著者も実習や論文などを書く際に、数量的データが求められる(必要になる)ことが多くあるため、自分が直接的な実践(経験)の中で得られる根拠とはまた違った角度から根拠を作るという意味で、とても大切なものだと感じています。
以上、【臨床発達心理学に学術的根拠を求める方法について】療育経験を通して考えるについて見てきました。
実践を形にしてきながら、自分が専門とする学問領域に根拠を作るということはとても大切なことです。
専門家と言われる人たちは、自分の実践や考えの背景に働いている根拠を様々な視点から説明できることだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、少しずつ専門性を高めていけるように、日々の実践と実践に関連する学術的根拠を探求し続けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
本郷一夫・金谷京子(編)(2011)シリーズ 臨床発達心理学・理論と実践① 臨床発達心理学の基礎.ミネルヴァ書房.