〝認知処理スタイル″とは、外界からの情報を取り入れ、その情報を整理し出力するまでの一連の過程の仕方のことを言います。
認知処理スタイルには、継次処理と同時処理といった二つの様式(仕方)があると言われています。
こうした情報処理過程を測定するには、K-ABCやDN-CASなどの認知検査が必要となります。
それでは、継次処理と同時処理は、それぞれどのような特徴があり、そして、どのような違いがあるのでしょうか?
そこで、今回は、継次処理と同時処理の特徴と両者の違いについて考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「J.R.カービィ・N.H.ウィリアムス(著)田中道治・前川久男・前田豊(編訳)(2011)学習の問題への認知的アプローチ PASS理論による学習のメカニズムの理解.北大路書房.」です。
【継次処理と同時処理とは何か?その違いは?】
以下、著書を引用しながらそれぞれの特徴と違いについて見ていきます。
継次処理について
以下、著書を引用して見ていきます。
<継次処理>においては、入力情報は<時系列>へと符号化されるので、それらの関係は、ある断片が断片へと順番に並ぶつながりだけである。だから事実上、形成される符号は一元的なものである
著書の内容から、〝継次処理″とは、入力された情報を時系列で処理するものであり、取り込まれた情報の関係は断片同士が順番に並ぶという処理様式だと言えます。
例を一つ上げて考えてみたいと思います。
例えば、友人との会話や仕事上での会話の中で相手の連絡先(電話番号)を尋ねて聞き取るということがあるかと思います。
電話番号を覚えるという処理様式は、数字という断片的な情報を時系列に順番に並べたものを記憶していくという作業になります。
こうした部分同士の情報を時系列に処理していくものが継次処理ということになります。
同時処理について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
<同時処理>における入力情報は、より「全体的」、もしくは多次元的な形へと符号化される(中略)。この場合は、それぞれの情報は、より複雑な方法でお互いにつながっており、通常の場合順番はなくなっている。同時処理を表す最も簡単な例は、いわば、入力情報の<関係>がわかるということである(「関係」が時間的なものだけの継次処理とは対照的といえる)。
著書の内容から、〝同時処理″とは、入力された様々な情報を互いに関係づけながら処理するものであり、順番・時系列による理解ではなく関係性や全体的な理解といった処理様式だと言えます。
例を上げて見ていきます。
例えば、テレビでAさんという人物紹介をしていたとしましょう。
Aさんは、男性で長身、やせ型であり、温厚な性格であり、趣味は・・・、という紹介が続いていく中が、これらの部分情報はAさんという全体像の理解、つまり、部分同士の関係の理解に繋がっていきます。
つまり、こうした処理には、順番や時系列の理解ではなく、関係がわかるという理解であるため、こうした情報処理様式が同時処理ということになります。
継次処理と同時処理の関係について
以上、継次処理と同時処理の特徴や違いについて見てきました。
これらを踏まえて、著書ではさらに以下のことを強調しています(以下、著書引用)。
同時および継次処理に関して、次の2つの点を強調しておく必要がある。それは、①それらが普通互いに協力して働いていること、②どちらのタイプの処理の使用における困難さも、<能力の欠如>または<能力の不適切な使用>のせいである可能性があるということである。
著書の内容から、通常我々は、継次処理と同時処理の両方をバランスよく使用しながら情報処理をしていますが、どちらかの使用(あるいは両方)に困難さがあると学習や生活などにマイナスな影響が生じる可能性がでるということになります。
つまり、外界の情報を取り込み統合していくためには、継次処理と同時処理の両方をバランスよく連動させながら処理していく必要があるということになります。
例えば、教科書で文章を理解していく際には、文章の内容を時系列で処理する(ストーリーなど)ことや、文章の内容に出てくる人物同士のやり取りといった関係の理解、つまり、継次処理と同時処理の双方を使用しながら読解をしているかと思います。
このように〝読解″一つを例に見ても、継次処理と同時処理は互いに独立したものではなく、両者をバランスよく使用しながら、情報を処理しているということが考えられます。
以上の観点を踏まえると、認知処理スタイルに困難さがあると、文章理解など学習において困難さが生じることは想像することができます。
そのため、学習などに躓きのある人たちに対しては、認知処理スタイルについてのアセスメントを通した支援も考慮していく必要が出てきます。
以上、【継次処理と同時処理とは何か?その違いは?】認知処理スタイルについて考えるについて見てきました。
継次処理と同時処理の困難さが目立つことは、学習場面や仕事場面で多い印象があります。
そのため、その人が得意とする認知処理スタイルを活用し、弱さを補うアプローチが必要になっていきます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も認知処理スタイルへの理解を深めていきながら、実際に現場に役立つ視点を見出していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
J.R.カービィ・N.H.ウィリアムス(著)田中道治・前川久男・前田豊(編訳)(2011)学習の問題への認知的アプローチ PASS理論による学習のメカニズムの理解.北大路書房.