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【社会性への支援①】発達障害児支援の現場を通して考える

投稿日:2023年11月15日 更新日:

社会性″とは、様々な定義や表現があるかと思いますが、一つ定義を取り上げると、〝人とある対象を共有し、その共有体験を楽しむといった共同行為″だと言えます。

著者は、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしています。

療育経験を通して、子どもたちの〝社会性″の育ちを実感する機会が多くあります。

 

それでは、発達障害児への支援を対象とした際に、どのような社会性への支援方法があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、療育現場(発達障害児支援の現場)における社会性への支援について、臨床発達心理士である著者の経験談をもとに理解を深めていきたいと思います。

 

 

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社会性への支援①:発達障害児支援の現場を通して考える

著者が〝社会性への支援″として、大切にしていることの一つが〝興味関心を通して他児との接点を作ること″です。

 

子どもたちの興味関心はそれぞれ異なります。

また、興味関心が弱く、遊びに没頭できない子どももいます。

そのため、、まずは関わる大人がこの子は何が好きなのか?あるいは、何を好きになれそうか?といった興味関心を探り、子どもと興味関心の世界を共有していく経験が必要だと思います。

そして、その中で、少しずつ興味関心が広がり深まっていく中で、他児と接点が作れそうな遊びが見えてくることがあります。

 

 


それでは、いくつか具体例についてお伝えしていきます。

 

事例1:電車やバスなど乗り物に興味のあるA君とB君

小学校高学年のA君と小学校中学年B君は、お互い電車やバスなど乗り物に興味のあるお子さんたちです。

当時のA君は、他者を警戒することが多く他児が近づいてくると追い払うことがあったため、B君とはなかなか接点を持つ機会はありませんでした。

著者を含めたスタッフたちは、B君が電車やバスなど乗り物に興味があり、そして、乗り物に詳しいA君にある種の憧れを持っていることを知っていました。

そのため、プログラムで乗り物を制作する活動を設けたり、バス見学を取り入れることで、少しずつA君とB君の接点を増やし距離を縮めていく工夫をしました。

興味のある活動を共有する場面が多くなったことで、A君の方からもB君を遊びに誘うことが増え、その結果、A君とB君はよく遊ぶようになりました。

この事例は、大人が介入したというよりも、お互いの興味関心がもともと近かったことで、少しの関わりの工夫の中で、自然と子ども同士の関わる頻度が増していったケースです。

この事例から、興味関心が共通していることは、子どもたち同士の接点が増えていく基点になることを実感させられました。

 

 

事例2:戦いごっこが好きなC君とD君

小学生の高学年のC君とD君は、もともとお互いをよく知る関係であり、低学年の頃から同じ事業所を利用している子どもたちです。

一方で、C君とD君の興味関心の方向性は違っていたため、ほとんど一緒に遊ぶことはありませんでした。

そんな中で、著者はC君と戦いごっこを通して徐々に関係性を築いていきました。

C君は毎日著者との戦いごっこを目的に事業所に来るレベルになりました。

そして、C君は一緒に戦う仲間が増えていくことを通して、仲間関係を発展させていきました。

その頃、D君は一人遊びが多く他児と過ごすことはあまりありませんでしたが、著者は、戦いごっこをする場によくD君が顔を出すことが増えてきていると感じていました。

そのため、よく知る間柄であるC君の力をかりてD君を戦いごっこに混ぜる戦略を練りました。

例えば、ピンチの時に助けてくれる仲間、時々出てくる強い味方、といって感じです。

こうした戦略が功を奏したのか、D君もC君同様に日々の戦いごっこを楽しみにしてくるようになりました。

今改めて思うと、D君なりに戦いごっこに興味があったのだと思います(どこの時点で芽生えたのかは不明ですが・・・)。

この事例は、大人が子どもの興味関心を理解し発展させていく中で、その中に、他の子どもを巻き込んでいったケースです。

この事例から、興味関心を通して形成された集団の力は、他児を巻き込んでいく力があることを実感させられました。

 

 

事例3:共通の話題で盛り上がるEちゃんとF君

小学生高学年のEちゃんとF君はもともと活動内容が違っていたため、関わることがほとんどない子どもたちでした。

Eちゃんは自分の興味関心を中心に大人とごっこ遊びをしたり、好きな話を発展させることが大好きな面がありました。

そして、その興味関心の世界は非常に限定されたものでした。

例えば、大好きなアニメのキャラクターの話を延々と大人に話し続ける様子が多く見られるなどです。

一方で、F君は体を使った遊びが大好きで、よく男子集団で活動していました。

この時点で、EちゃんとF君の接点はありませんでした。

しかし、ある時、Eちゃんが見ていた動画がF君の大好きなものであったことから、二人が接点を持つ機会が出てきました。

F君が好きな動画もまたEちゃん同様に非常にマニアックだと言えるものでした(確か、テレビのコマーシャルだったと思います)。

著者は、まさかこの二人が繋がるとは想定していませんでした。

そして、この接点を見て、著者は二人の興味関心が共通している所があるという認識を深めていきながら、二人が関わることができる空間・時間を意図的に設けるようにしていきました。

その結果、今では二人は興味関心を共有する大事な友達関係にまで近づいてきています。

この事例は、例え、タイプが外から見て違うような子どもで合っても、非常に限定した子どの興味関心を大人が理解し、意図的にお互いが関わる機会を作ることで、関わりが増えていったケースです。

この事例から、興味関心の世界が非常に狭いものであっても、お互いがその世界に興味を示していれば、接点を持ち関係性を深めていける可能性があることを実感させられました。

 

 


以上、【社会性への支援①】発達障害児支援の現場を通して考えるについて見てきました。

〝興味関心を通して他児と接点を作ること″は、社会性への支援では非常に大切なことだと実感しています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子ども同士が接点を持ち、お互いが関わりを持ちながら社会性を身につけていけるように、環境設定や関わり方を工夫していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 


参考となる書籍の紹介は以下です。

関連記事:「発達障害の〝社会性″に関するおすすめ本5選【中級編】

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