〝社会性″とは、〝人とある対象を共有し、その共有体験を楽しむといった共同行為″だと考えられています。
社会性には様々な定義がありますが、その根底には、〝経験を共有し一緒に楽しむこと″だと言えます。
社会性を育てるために、挨拶の仕方、話の聞き方、気持ちの伝え方、などスキルを教えることを大切だと考えている方もいるかもしれません。
一方で、社会性の育ちはスキルだけでは伸びません。
それでは、社会性が育つためにはどのようなことが大切だと考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、社会性の育ちで大切なことについて、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、スキルだけでは社会性は育たないといったテーマについて理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「藤野博・日戸由刈(監修)(2015)発達障害の子の立ち直り力 「レジリエンス」を育てる本.講談社.」です。
社会性の育て方で大切なこと
著書には、社会性を育てるためには、対人関係の中の特定の部分におけるスキル獲得の練習をしても、うまく育つことが難しいとの記載があります。
〝社会性″といった言葉があると同時に〝ソーシャルスキルトレーニング″といった言葉もあります。
両者は似ているようですが、異なるものです。
両者の関係を見ると、〝社会性″の一部として〝ソーシャルスキルトレーニング″といった対人スキルの技術があります。
発達の順序として、対人スキルが先行しても社会性といった対人基盤が育つことは難しいと言えます。
そのため、まずは〝社会性″といった対人基盤を育てることが重要です。
そして、社会性の育ちとして大切なものは、〝自律性″だと考えられています。
社会性の育て方で大切な〝自律″とは何か?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
「自律」とは、自分の衝動などを自分でコントロールすること。
定型発達の子の場合、小学校低学年くらいで自律性が育ってきます。いっぽう、発達障害の子の自律性は、小学校高学年くらいまで、時間をかけて育ちます。
自律性は、対人関係をつくることの土台になるもの。
著書にあるように、〝自律″とは自己コントロール力のことを意味します。
つまり、他者の力もかりながら自分でできることをコントロールする力だとも言えます。
何でも自分の力で行う〝自立″とは異なる概念です。
人は自分にできることは自分で行い、自分にできないことは人に頼って生きています。
そのためにも、自分を客観視する力、〝自己理解″の力が必要です。
そして、著書に記載のある通り、〝自律性″の発達も定型発達児は小学校低学年頃、発達障害児では小学校高学年頃に育つといった違いがあります。
〝自律性″を育むためには何が必要なのか?
それでは、対人関係の土台となる〝自律性″を育んでいくためには何が必要なのでしょうか?
引き続き著書を引用しながら見ていきます。
まずは生活習慣を整えましょう。どんなスキルも、毎日起きて活動できなければ、使えません。生活が整い、自律性が育ってくれば、自ずとスキルも伸びていきます。
著書には、〝自律性‟の育ちの基礎は〝生活習慣を整える″ことといった記載があります。
生活習慣が整うことで、〝自律性″が高まり、何かに挑戦しようとする動機が生まれるということです。
つまり、社会性を育てるためには、〝自律性″の育ちが重要であり、〝自律性″が高まることで、社会の中で何かやってみよう!挑戦してみよう!人と関わってみよう!といった意欲が湧いてきます。
その結果、様々な挑戦から得た経験を通して、社会性が自然と身に付いていくことが多くあると考えられています。
著者のコメント
著者は長年、発達障害など発達に躓きを抱えている子どもたちと関わってきています。
その経験を通して、社会性の育ちには、スキルを優先してもうまく育つことは難しいと実感しています。
大切なことは、人との関わりを通して共感できた経験や一緒に楽しめた経験が社会性の基盤として必要だと言うことです。
他者との関わりの中で共感や快の感情を経験することで、〝もっと○○くん、○○ちゃんと関わってみたい!″〝楽しみを共有したい!″といった行動動機が高まります。
他者と関わる経験が増えていく中で、自己についての理解が深まり、他者の力をかりて物事に取り組む姿も出てくるのだと思います。
つまり、〝自律性″が育っていくということです。
著者の療育経験を振り返って見ると、こうした発達過程を辿っていた子どもも多くいるように思います。
逆に、社会性の育ちは、スキルだけでは成長しないこともまた実感しています。
以上、【社会性の育て方で大切なこと】スキルだけでは社会性は育たないについて見てきました。
社会性の本質的な意味や育ちの基盤を考えることで、スキルだけでは社会性は育たないことを理解していくことができるのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちの社会性の発達に少しでも貢献できるように、日々の実践を深掘りしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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