〝知的障害(ID)″とは、知的水準が全体的な発達よりも低く、かつ、社会適応上問題がある状態のことを言います。
最近では、知的水準よりも〝適応状態″に目が向けられるようになってきています。
知的障害児への支援で大切な視点はたくさんあると思います。
それでは、長いスパンの中で支援を考えた際にどのようなこと大切にしていけば良いのでしょうか?
そこで、今回は、知的障害児への支援で大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「平岩幹男(2024)知的障害を抱えた子どもたち‐理解・支援・将来‐.図書文化.」です。
知的障害児への支援で大切なこと
著書には、知的障害を抱える子どもたちに関わる際に〝覚えておいて欲しいこと″について5つの内容が記載されています(以下、著書引用)。
・知的障害を抱えている場合でも、特に子どもの時期には介入できることが多い
・知能指数は改善しなくても日常生活でできることは増やせる
・それによって生活も楽になるし、サポートも受けやすくなる
・成人になっても「学び」を忘れないで続ける
・数十年後にすこやかで穏やかな日々を過ごすことが目標
どの内容もとても大切だと思います。
それでは、次に、以上の5つについて著者の意見も交えながら見ていきます。
・知的障害を抱えている場合でも、特に子どもの時期には介入できることが多い
〝知的障害″だからといって成長・発達がないといったことは決してありません。
どの子も、〝ゆっくり″な育ちの中で〝できること″は着実に増えていくケースが多いと思います。
そのため著書にもあるように、特に子ども時期には〝介入できる部分が多くある″と著者は感じています。
療育現場にいる〝知的障害児″は日常生活の中で様々な〝介入(サポート)″を得ることで、年単位での成長を振り返った際に実に多くのことができるようになっていると感じる場合が多くあります。
・知能指数は改善しなくても日常生活でできることは増やせる
〝知的指数″は成長過程の中で変化する場合(多少は)もありますが、大きな変化はほとんどないといったことが分かっています。
一方で、〝適応機能″を高めていくことは十分可能であると思います。
例えば、生活に必要なライフスキルなどは日々の実践経験の積み重ねによって、経験から学んでいくところが多くあると思います。
著者は学童期の6年間、同じ〝知的障害児″を複数見てきて、実に多くのことができるようになったと感じることが多くあります。
関連記事:「知能指数は変化するのか【発達障害を例に考える】」
・それによって生活も楽になるし、サポートも受けやすくなる
〝適応機能″が高まることで、生活はとても楽になります。
療育の目標の一つでもある〝自立″は、〝自分でできること″と〝人の手を借りてできること″の両方を踏まえて、社会の中で生きていくこと(その力をつけること)を意味します(〝自律″と表現することもあります)。
〝自立(自律)″を育てていくことで、自身の適応能力の向上に加えて、どのような周囲からのサポートを得ることができればいいかも分ってくるため、周囲からのサポートも受けやすくなると思います。
・成人になっても「学び」を忘れないで続ける
〝学び″を継続することは今をそして、将来を豊かにしていきます。
〝学び″とは、趣味でも良いし、仕事や様々なコミュニティとの繋がりを通しても学ぶことができます。
〝知的障害児・者″に関わらず学びを継続することはとても大切だと思います。
そのために、著者は療育現場で、〝意欲のエネルギー″を子どもたちに実感してもらうことを大切に、療育をしています。
〝知りたいことがある″〝やってみたいことがある″といった〝意欲のエネルギー″は、日々の活動の中で育まれていくところが大いにあると感じています。
・数十年後にすこやかで穏やかな日々を過ごすことが目標
〝青年期・成人期″の〝知的障害″〝発達障害″の人たちにとって〝穏やかな日々を生活する″ことはとても大切な目標であると著者も感じています。
そのためにも、決して高い目標を設定せずに、しっかりと手の届くことができる〝目標″を子どもの頃から設定していくことが大切だと感じています。
著者は成人期の〝知的障害″のある方との関わりも少なからずありますが、日々の生活を穏やかに過ごしている方は、とても情緒が安定しているといった印象を受けます。
以上、【知的障害児への支援で大切なこと】療育経験を通し考えるについて見てきました。
知的障害児への日々の取り組み・対応はとても重要です。
それと同時に、長い時間をかけて何を大切に支援していけば良いかを考えることもまたとても必要なことです。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で〝今″を大切にした関わりをしていきながら、〝将来″にも目を向けて支援内容を考えていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【知的障害児で大切な対応について】〝逆算の支援″を通して考える」
平岩幹男(2024)知的障害を抱えた子どもたち‐理解・支援・将来‐.図書文化.