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特徴 知的障害

【知的障害の特徴について】早期発見のポイントを通して考える

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知的障害(ID)″とは、知的水準が全体的な発達よりも低く、かつ、社会適応上問題がある状態のことを言います。

最近では、知的水準よりも〝適応状態″に目が向けられるようになってきています。

知的障害児及び発達障害児への支援がうまくいくためには、〝早期発見″〝早期支援″が重要なポイントになります。

 

それでは、知的障害を早期に発見するためにはどのような発達上の特徴に着目していけばいいのでしょうか?

 

そこで、今回は、知的障害の特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら早期発見のポイントについて理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「平岩幹男(2024)知的障害を抱えた子どもたち‐理解・支援・将来‐.図書文化.」です。

 

 

知的障害の特徴:早期発見のポイント

著書には〝知的障害を疑うきっかけ″として乳児期~就学以降について、それぞれの特徴が記載されています(以下、著書を参考に見ていきます)。

 

1.乳児期(出生直後から1歳または1歳半くらいまで)

以下、著書を引用しながら見ていきます。

・音や光に対する反応(反応が遅い、反応しない)

・運動発達の遅れ(頸のすわり、はいはい、つかまり立ち)

・非言語コミュニケーションが苦手(目が合わない、音や声に反応しない)

 

乳児期″は自分の感覚・運動を通して外界の世界を認識していく段階です。

例えば、母親の声や表情に強く反応したり、自らの身体を使って探索空間を広げていきながら、運動機能を高めていきます。

この時期の知的障害の特徴(疑いの可能性がある)には、音や光といった外界の刺激への反応の乏しさや、運動発達全般の遅れ、発語前に見られる非言語コミュニケーションがうまく取れないなどの特徴があります。

知的障害の程度によっても、この時期に顕著に遅れが分かるケースとそうでないケースがあると思います。

著者も未就学児から学童・成人など様々なライフステージの〝知的障害児・者″を見てきていますが、〝知的機能″が軽度であればこの時期はまだ特定しにくいと思います。

将来の困難さなどを見据えて、引き続きフォローアップしていく必要があります。

 

 

2.乳児期~幼児期前期(生後直後から3歳まで)

以下、著書を引用しながら見ていきます。

・発達の退行(できていたことができなくなる)

・言語理解の遅れ(模倣や指示理解)

・発語の遅れ(意味のある語句が出ない)

 

乳児期~乳児期前期″は、歩行ができるようになったり、意味のある言葉を話せる(理解できる)ようになる段階です。

言葉が理解できるということは、他者の視線や発声(言葉)に注意を向け、その注意の向かう対象が意味を持っているといったことへの関心の高まり、そして、その対象が言葉といった意味を持っていることが理解できるようになるということです。

この時期の知的障害の特徴(疑いの可能性がある)には、言葉の理解や表出の遅れが目立ってくるといった特徴があります。

発達相談で相談に至るきっかけの上位を占めるものとして、〝言葉の遅れ″があります。

それだけ、〝言葉の理解・表出の遅れ″は、発達初期の遅れを見極める一つの評価軸になるということです。

著者が以前、未就学児への療育をしていた際に、〝発達の退行″が見られた子どもと関わる機会がありました。

その子の保護者からは昔は言葉を話すことができていたけれども今はできなくなったという言葉を聞いてある種の衝撃を受けたことを覚えています。

つまり、発達とは年齢の高まりによってできるようになっていくものもあれば、そうではないものもあるということです。

 

 

3.幼児期後期(3歳から6歳まで)

以下、著書を引用しながら見ていきます。

・言語理解、発達の遅れ(指示が理解できない、話せない)

・生活習慣の遅れ(着替え、食事、排せつなどがなかなかできない)

・興味のあるものの少なさ(絵本、乗り物、人形などへの興味の少なさ)

 

幼児期後期″は、基本的な生活習慣が一通り身に付いていく時期、そして、様々な遊びを通して興味関心を広げていく時期です。

基本的生活習慣には、食事・着脱・排泄・睡眠などが内容としてあります。

また、遊びも感覚遊びから徐々に見立て遊び、ごっこ遊び、ルールのある遊びへと集団遊びが顕著になってきます(もちろん、それと並行して一人遊びもあります)。

この時期の知的障害の特徴(疑いの可能性がある)には、基本的生活習慣の遅れ、そして、興味関心が広がりにくいといった特徴があります。

著者が未就学児を担当していた時期の多くは、まさにこの年齢層が多く、基本的生活習慣は必ず課題として上がってきていました。

少なくとも、基本的生活習慣において〝自立″していた子どもは少なかったと思います。

また、遊びの発達も〝ゆっくり″であり、同じ遊びを繰り返す児童が多かったこと、遊びを発展させることが難しかったことが記憶としてあります。

 

 

4.就学以降(6歳以降)

以下、著書を引用しながら見ていきます。

・言語理解、発語の遅れ

・学習の遅れ(文字や数字への興味のなさ、理解の遅れ)

・長文理解の遅れ(短文が理解できても長文になると難しい)

 

就学以降″は、学校での勉強が中心になってくる時期、そして、集団活動・集団行動がさらに必要になってくる時期です。

基本的には、先生など大人の指示や説明が理解できること、読み書き計算ができること、教科書の文章が理解できる力が必要になってきます。

この時期の知的障害の特徴(疑いの可能性がある)には、学習全般の遅れが目立ってくるといった特徴があります。

特定の教科というよりも、様々な教科での躓きが出てくると思われます。

一方で、学習での躓きが見られる〝ディスレクシア(読み書き障害)″は、全般的な遅れというよりも、読み書き・計算といった特定の領域において困難さが生じるものです。

両者の違いを理解していくこともまた大切です。

著者が小学校で教育を受けていた時期には、特別支援教育がなかった時代です。

今にして思えば、教室の中には、軽度の知的障害があった人、そして、境界知能の人が少なからずいたように思います。

 

 


以上、【知的障害の特徴について】早期発見のポイントを通して考えるについて見てきました。

発達障害への関心が高まる中で、知的障害への認知が停滞している感じがしています。

一方で、発達障害同様に知的障害への早期発見・早期支援もまた必要不可欠です。

また、両者が併存しているケースや境界知能など症状が分かりにくいケースも多く存在していると思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害並びに知的障害への理解も深めていきながら、実践の療育現場で活用できる理解と支援の方法について学びを深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【発達障害・知的障害で大切な早期発見・早期支援】療育経験を通して考える

 

平岩幹男(2024)知的障害を抱えた子どもたち‐理解・支援・将来‐.図書文化.

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