著者は、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)を、これまで10年以上にわたり行ってきています。
その経験の中で、エビデンスに基づいた支援の必要性について考えることもあります。
例えば、○○の支援(アプローチ)には、ある程度の効果がある、といった科学的な理解です。
一方で、エビデンスだけでは語ることのできない難しさが療育(発達支援)にはあると感じています。
それでは、発達障害児支援におけるエビデンスは、どのような意味において必要となるのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児支援におけるエビデンスの必要性について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.」です。
発達障害児支援におけるエビデンスの必要性
以下、著書を引用しながら見ていきます。
子育てや発達障害についての領域は、エビデンスだけでは語れない要素もあるのです。それだけ、子どもの心は複雑なのです。それに加えて、やはり環境や外部からの影響もあります。
引用著書は児童精神科医の方(てんねんDr.)が書いた本ですが、発達障害に関する領域においては、エビデンスは重要であるものの、エビデンスだけでは語ることのできない難しさがあると記載されています。
その理由が、心のもつ複雑さと、外的な影響だとされています。
つまり、両者は変数が多いため、Aの要因がBの結果に繋がっているといった因果関係(科学的理解)が簡単には説明できない複雑さがあると言えます。
例えば、〝心″とは、非常に複雑な要素から構成されているため、単純に〝心″といった構成概念のAの要因がBに影響したと科学的に証明されたとしても、他の変数Cが入り込んだ結果、Bへの影響度が大きく変わることは場合によってはあります。
これは、外的な環境要因にも同様のことが言えますし、人の行動=(心×外的環境)によってアウトプットが変化するため、非常に膨大な変数が入り込む、複雑性が高いものだと言えます。
一方で、薬物療法などは当然、エビデンスが必要不可欠です。
また、様々な支援方法(感覚統合療法、ソーシャルスキルトレーニング、ペアレントトレーニングなど)においては、対象者へのアセスメントを行い、課題と支援方法を明確にしていくことで、支援の効果をより実証していく方向に近づけていくことができます。
このように、エビデンスは療育において、必要性が高いことも事実としてありながらも、著書にあるように、エビデンスだけでは語ることのできない難しさも内包していることを理解していく必要がある言えます。
著者の経験談
著者のこれまでの療育経験を通してみても、エビデンスについて理解をしていくと同時に、エビデンスが支援の現場にどのように適応できるのかといった判断が支援の質を高めていくのだと感じています。
現在の療育現場は、より個別性が重要視されるようになってきています。
つまり、〝オーダーメイドの支援″です。
〝オーダーメイドの支援″の質を高めていくためには、これまでの先行研究を踏まえ、それにプラスして、現場での経験値に基づく理解と掛け合わせていくことが大切だと言えます。
支援者の中には、職人のように、ご自身の経験知を非常に重視されている方もいるかもしれません。
一方で、療育の質が職人芸に委ねられてしまうと、技の伝承のプロセスを明らかにしていかないと、特定の人の判断によって支援の方向性が決まってしまう危険性があります。
本来、療育はチームで行うものですので、多くの人の意見がポジティブに総和していくことが大切です。
そのためにも、支援の内容を言語化していくことが大切です。
そして、言語化のプロセスにおいて、知識やエビデンスが必要になってきます。
もちろん、エビデンスに100%はありませんが、ある程度の根拠に基づく理解・判断能力を高めていくためには、必要不可欠な要素だと言えます。
心の複雑さへの理解は、実際の経験に基づく理解に加えて、エビデンスといった根拠を求める姿勢もまた療育の質を高めていく上で大切だと言えます。
以上、【発達障害児支援におけるエビデンスの必要性】療育の質を高めることを目指して!について見てきました。
子どもたちの複雑な心を理解していくためには、多くの時間がかかると言えます。
一方で、経験に基づく理解とエビデンスに基づく理解を掛け合わせていくことで、確実に状況判断能力(心や行動の理解)は高まっていくと感じています。
それに伴い、また新し疑問や課題意識が芽生えることもあります。
そして、支援のバリエーションも豊富になっていくと感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践に加えて、エビデンスへの理解も並行して行っていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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